その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は日経BP(編)の『 日経テクノロジー展望2026 未来をつくる100の技術 』です。
【はじめに】未来は技術とともに
現在、AI(人工知能)は私たちの社会の「相棒」へと着実に歩みを進めています。日々の業務で文書作成や情報整理を助ける生成AIだけではありません。自ら判断し、必要な行動を実行するAIエージェントは今や、企業で一大導入ブームとなっています。商談記録を解析し次の一手を提案する営業支援AI、複数の業務システムにわたる複雑な手続きを全自動で完了させるエージェンティックオートメーション、機器設計を熟練者以上の精度でこなす設計AI――これらのAIは単なる「道具」ではなく、共に成果を生み出すパートナーとして、企業や個人の働き方を変えつつあります。
進化はAI単体の力だけでなく、他分野との融合によって加速しています。光回路と電気回路を統合し、膨大な計算処理の電力消費を抑える光電融合、量子ビットに光を使うことで常温で動作する光量子コンピューターなどは、その代表例です。これらの開発・実用化は今後のAIの高度化を支える計算基盤の革新となるはずです。パソコンやスマートフォンなどの端末内で大規模言語モデルを動かすローカルLLMや、AI処理専用のNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)といった軽量化・分散化の技術も実用段階に入り、AIはより身近な場面にまで浸透しつつあります。AIはまさに、多くの新技術を育む「技術のゆりかご」なのです。
革新の波は、AIに限らず幅広い分野に広がっています。本書では、AI分野をはじめ、エレクトロニクス・モビリティー、環境・エネルギー、IT・通信、建築・土木、メディカル・バイオ・食農、ライフスタイル・ワークスタイルに至るまで、日経BPの各専門誌編集長や総合研究所の専門家が選び抜いた「未来をつくる100の技術」を収録しました。例えば、電気自動車の航続距離を大きく伸ばす全固体電池や、建物の壁や窓にも設置しやすいペロブスカイト太陽電池など、社会実装が進めば大きなインパクトをもたらす技術も含まれています。
また、100の技術の中から特に注目度の高いものを、480人のビジネスパーソンへの調査に基づく「2030年のテクノロジー期待度ランキング」として紹介しています。上位には、核融合による発電、AGI(汎用人工知能)、空飛ぶクルマなど、人類が長年夢見てきた未来技術が並びます。それらはもはや絵空事ではなく、現実へと近づきつつあるのです。
今年度版からは新たに、注目技術がどれくらい投資家から資金を調達しているかを指数化した「テクノロジー未来投資指数」も掲載しました。岩石を粉砕して農地などに散布し、大気中の二酸化炭素を吸収・固定化する岩石風化促進など、意外な分野が多額の資金を集めています。このリストを見れば、スタートアップを中心とする最前線の取り組みを俯瞰できます。
本書は、未来を形づくる技術の全体像を知り、次の一手を打つための羅針盤となるよう編集しました。経営戦略の立案、研究開発の指針、事業創造のヒントとして、多くの方々にご活用いただけるはずです。未来は待つものではなく、つくるもの。本書が、読者の皆さま一人ひとりのビジョンを育む力となることを願っています。
日経BP 常務執行役員 技術メディア担当 小向将弘
【目次】
【関連記事】




