その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はリチャード・ボールドウィン(著)、伊藤元重(監訳)、笹田もと子(訳)の『 トランプの貿易戦争はなぜ失敗するのか それでも保護主義は常態化する 』。「日本語版序文」の抜粋をお届けします。

【日本語版序文】

戦略的自制が戦略的リーダーシップとなる

【はじめに】

 2025年7月22日、トランプ大統領は並んだカメラの前に立ち、日本との新たな二国間合意を発表した。
 こうしたシーンはいまやおなじみである。しかし、それは通常の貿易協定の署名式とは、まったく様子が違うものだった。署名国の国旗に挟まれた演台も、署名のセレモニーも、当然ながら署名すべき法的文書もない。共同声明すらなかった。並んだ星条旗を背にトランプがひとりで立ち、滔々と自画自賛しただけだった。

「史上最大の貿易取引を完了したところだ。……日本はトップの人間をここへ送り、われわれは長時間かけて懸命に取り組んだ。これはみんなにとってすばらしい取引だ。……この取引で、数十万の雇用が生まれるだろう。……これまでに類を見ない取引だ。おそらくもっとも重要なのは、日本が自動車やトラック、コメやほかの農産物、そのほかの品目で国を開放することだ。日本はアメリカに15%の相互関税を支払う。……とてつもない取引だ。歴史的だ。これでようやく日本はアメリカを公正に扱うようになった」

(トランプ大統領、2025年7月22日)


 中身は薄いが、パフォーマンスとしては鮮烈だった。この合意は交渉過程に透明性があったわけでも、公式の手続きを経て発表されたわけでもない。
 しかし、そんなことはホワイトハウスにとって重要ではないようだ。大統領は自分にとって「喜ばしい見出し」を手に入れた。国内向けのアピールとしては十分だ。これがトランプ政権の貿易政策の新しい進め方だ。しかし、なぜこんなふうに変わってしまったのか。
 2025年1月の就任以来、トランプ大統領が進めている貿易政策は、自身の1期目の政策も含め、過去のアメリカのいかなる取り組みともまったく異なるものである。
 日本の政界や経済界のリーダーたちは、この状況に不安を覚えているに違いない。今回の発表は、単にアメリカと日本の通商関係における新たな章の幕開けを示すだけでなく、その新たな関係を取り巻く世界全体の流れが、大きく転換したことを物語っている。
 この新たな合意が実際に何を意味するのかを理解するためには、ニュースの見出しを追うだけでは不十分だ。文脈を捉え、パターンを認識し、戦略的な視点で読み解く必要がある。
 それこそが本書の目的である。トランプの貿易政策がなぜこれほど異質なのかを説明することが、本書の重要な役割だ。大統領の貿易に対する姿勢は、ルールと成果よりも演出と反響を重視したものなのだ。
 この転換の核心にあるのは、「不満ドクトリン」と呼ぶべきものだ。現在の貿易政策を突き動かしているのは戦略的な計算ではなく、根強く残る国民の被害者意識と遺恨を晴らしたいという思いだ。アメリカの中間層は現在も打撃を受けて屈辱を味わいつづけており、その苦境の原因とされてきたグローバリストのエリートたちに反撃すべくドナルド・トランプを大統領に選んだ。
 つまり、アメリカの貿易政策の狙いは、実のところ貿易ではない。公正の実現である。トランプ大統領の発言のこの部分に着目してほしい。「これでようやく日本はアメリカを公正に扱うようになった」
 不満は世界の見方を変えるレンズとなり、政策を動かす梃子(てこ)にもなった。政策上の決定は経済的利益の追求だけでなく、損害を取りかえすことを象徴するという目的でも方向づけられ、貿易は過去の遺恨を晴らして国家の誇りを取りもどすための舞台へと作り変えられていった。
 この変化とその背景にある激情を理解することは、きわめて重要である。実際、大統領は2025年4月2日の関税措置の発表時に、日本を含む貿易相手国について、まるで戦争犯罪を犯したかのような表現を用いた。

「何十年ものあいだ、わが国は近隣の国々からも、遠方の国々からも、友からも敵からも同様に、略奪され、蹂躙され、破壊され、根こそぎ富を奪われてきた。アメリカの製鉄所の労働者、自動車工場の労働者、農家や熟練の職人たちは……外国のリーダーたちがわれわれの仕事を奪い、外国の不届き者がわれわれの工場を荒らし、外国のハゲタカどもがかつては美しかったアメリカンドリームを引き裂いていくのを、耐えがたい思いで見ているしかなかった」
「2016年、わたしはあなたたちの声になると宣言した。今日ここで付け加えよう。わたしはあなたたちの戦士になる。わたしはあなたたちの正義になる。そして、不当に扱われ裏切られてきた人々にとって、わたしはあなたたちのために報復をおこなう者になる」

(トランプ大統領、2025年4月2日)


 経験豊富なアナリストはわたしを含め、こうした言葉遣いを敬遠しがちだ。大統領の奥底の感情や本当の動機を示すものと考えるのではなく、支持者向けの宣伝文句だとみなす傾向がある。しかし、わたしたちはそうした心理的障壁を乗り越えなければならない。これこそが、アメリカの現在の貿易政策を動かしているものであるからだ。
 この新たなドクトリンでは、事実よりも感情が重視される。大多数の人にとって事実は世界におけるたしかな基準点だが、現在のアメリカ大統領にとってはそうではない。事実は紙吹雪のようなものだ。注意を引くために宙に撒き散らされるが、地面に落ちるころには忘れ去られている。こうした状況によって同盟国は気づけば混乱のさなかにあり、ライバル国は勢いづき、企業はつぎに吹く政策の風向きをただ推し量るしかない。
 この不満ドクトリンの視点からアメリカの貿易政策を見れば、混沌とした状況に筋が通り、一見するとばらばらに見えるものが、ひとつの生態系として理解できるようになるだろう。

本書の意義

 本書は、いままさにわれわれが目の当たりにしているような状況を正確に理解するためのものだ。2025年7月のアメリカと日本の貿易取引は、異例の出来事ではない。これはアメリカが日本に対してだけでなく、世界との関わり方を転換させたことを示す顕著な例だ。日本の政府関係者や産業界のリーダー、戦略の専門家にとって、この方向転換は具体的かつ切実な意味を持つ。場当たり的で一貫性がないように見えていたものが、いまやある種の内的論理に従っているのだ。しかし、それは経済戦略の論理ではない。感情に基づく政治、芝居がかった攪乱、不満を原動力とする政策形成の論理である。
 本書は、この新たな現実を読み解くための解読器の役割を果たし、世界が今後どう動いていくかを先読みするための指針となるべきものだ。また、トランプ大統領の貿易政策が達成すると謳っている経済上の目標、つまり、貿易赤字の是正、アメリカの再工業化、中間層の救済といったことがなぜ実現できないかについても、経済学の観点から解説する。
 アメリカのこの変化は日本にとってきわめて重大だ。これまで日本は、時にはアメリカから圧力をかけられる対象となり、時には野心的な自由化の取り組みのパートナーとなり、またある時は、アメリカが主導する世界的な取り組みをただ見守るだけの傍観者だった。
 そうした時代は終わった。日本はもはや事態を傍観する立場ではいられない。いまやトランプ大統領の不満ドクトリンの標的なのだ。それがはっきりと示されたのが、この7月の関税合意だった。日本がアメリカの変化を招いたわけではないが、これからはこの状況でうまく立ち回らなければならない。
 同様に重要なのが、この新しい取引が未来について明らかにしたことだ。アメリカが多国間主義、そして伝統的に受け継がれてきた予見可能なリーダーシップから後退したことは、一時的な混乱ではすまない。これは構造的な変化であり、その根底にあるのはアメリカの広範な層の有権者が抱いているグローバル化への根深い敵意だ。
 大統領がトランプからMAGA(Make America Great Again〈アメリカを再び偉大に〉)路線の後継者、たとえばバンス副大統領に代わったとしても、あるいは従来のような民主党の大統領が後任に就いたとしても、アメリカが貿易を主導する時代にもどる可能性は低いだろう。世界の貿易体制は、わたしがポスト・アメリカ期と呼ぶ時代に入ろうとしている。
 だからこそわたしは本書を経済学者や貿易の専門家だけでなく、これからルールの通用しない世界で活動しなければならないビジネスや外交に携わる人々や政府関係者に向けて執筆した。それはもはや、ルールの策定者が主導権を握ることのない世界なのだ。
 つまり、この序文の冒頭の場面が舞台上のパフォーマンスだとすれば、本書は舞台裏への招待状である。以下では、アメリカと日本の今回の関税交渉の合意について詳しく検証し、その後、本書の原著が刊行された5月以降の盤上の変化を、地政学的な観点から分析する。

2025年7月23日の日米関税合意

 では、このいわゆる「史上最大の貿易取引」の具体的な中身とは、どのようなものなのか。7月上旬の時点で、アメリカは日本に対して鉄鋼とアルミニウム(輸出全体の約2%に相当)に50%、自動車と自動車部品(輸出の約28%)に25%、残る70%の輸出品目に10%の関税を課していた。
 今回の合意では、自動車関連分野の関税が25%から15%に引き下げられた。これは日本の交渉担当者にとって大きな勝利だ。アメリカは日本の自動車産業において、最大かつもっとも利益率の高い輸出市場である。関税が10%引き下げられたことで、日本の自動車産業は大きな混乱を回避できた可能性が高い。しかし、輸出品目の残りの70%については、税率が5%引き上げられて15%となった。鉄鋼とアルミニウムに対する関税は変わっていない。したがって、日本は一部の例外を除き、一律15%の関税を課されることになったと言える。
 しかし、依然として不透明なのは、この合意の投資の側面である。報道によれば、日本は大規模な対米投資枠組みに大筋で合意したとされている。ところが、その条件は明確になっていない。ここで役に立つのが過去の経験だ。トランプ政権1期目では、鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)などの企業が、アメリカ国内に巨大な工場を建設すると約束したことが話題になったものの、結局は規模が縮小されたり、完全に中止されたりした。政権は国民の受け止め方に満足し、その後のフォローアップをほとんどおこなわなかったのだ。同じ構図が今回も繰り返される可能性は十分にある。経済的パートナーシップの発表はテレビ映えする。実際に実行することはまったく別の問題である。
 また別の意味では、この合意は日本の立場の脆弱性を明らかにしたとも言える。今回の取り決めは交渉に基づくものというより、予見可能性ではなく賞賛を評価基準とする大統領が、主に国内世論を意識して一方的に推し進めた調整だった。たとえば、トランプ大統領が自動車への関税を引き下げたのは、25%の関税が維持された場合に車の価格が大幅に上昇し、自身の支持層が反発することを懸念したためだということは十分に考えられる。
 もうひとつの問題はこの合意の永続性、いや、むしろその欠如である。トランプ大統領は自分が署名する貿易取引は、将来にわたって効力が法的に保証されるわけではないと繰り返し表明している。すべてがいつでも再交渉の対象になると見ているのだ。これには同盟国との二国間協定や多国間の枠組み、さらには法で定められた責務まで含まれる。つまり、今回の日本との合意は安定的な取引関係の保証にはならない。関税の段階的引き上げの一時停止にすぎない。日本政府はこの合意で決着したとみなすのではなく、これを停戦と考えておかなければならないのだ。
 さらに、これらのことからは戦略面で重要な示唆が得られる。この合意はルールに基づく貿易への回帰ではない。わたしが「紙吹雪地政学」(派手で動きが早く、実質的に予見不可能な性質を持つ)と呼ぶものの産物だ。今回、日本は直撃をうまく避けられたかもしれない。しかし、本当の試練はこれからだ。アメリカと日本の二国間関係にとどまらず、多極化と対立が進む世界経済全体の重心が変わりつつあるなかで、日本はどのようにうまく立ち回ることができるのか。

<中略>

日本は何に備えるべきか

 2025年7月の合意の教訓は、そこで得られた当面の合意をはるかに超える重要なものだ。日本は許容できる結果を引き出せたが、この経験によって、基本的なルールが消えたときにいかに日本が無防備かが浮き彫りになった。今後を見据え、日本はこの不安定さが一過性のものではないと認識しておく必要がある。わたしが本書で論じているように、われわれはいまアメリカが主導する貿易が終わった時代、リーダーのいない時代に生きている。これが新しい貿易体制の動作環境なのだ。
 第1にして喫緊の課題は、政策の予見不可能性に備えることだ。トランプ政権下のアメリカは、一貫性のある戦略を推し進めているわけではない。ニュースの見出し、不満、世論調査の数字に反応して動いている。こうした状況では、安定的なはずの取引もはじめから安定を意図しないものになっている。関税は大統領の気分次第で上がったり下がったりする。大統領の一方的な発表で、何カ月もの交渉が覆される可能性がある。したがって日本は、継続性がもはや当然ではない世界で、経済や外交の戦略を立てなければならない。
 トランプ支持層の生活費負担が大きくなれば、それが圧力となり、トランプ大統領は関税措置を軽減させるか、あるいは、少なくとも日本のような主要な供給国の物品には関税を上げない方向に動くのではないか、とわたしは期待している。また、下院では与党・共和党が多数派でなくなる可能性が高く、そうなればトランプ大統領の専制的な動きを抑えることになるだろう。
 日本にとってアメリカとの同盟維持は依然として不可欠だが、過度な依存は避けるべきだろう。ワシントンは現在も安全保障上の重要なパートナーであるものの、経済面ではますます一貫性を欠いた存在となっている。貿易、技術、投資に関する政策は突如として変わる可能性がある。この不確実性ゆえに、多角化することが経済上の必然であると同時に戦略上の備えにもなる。経済上のパートナー、サプライチェーンの拠点、外交上の連携を多様化するのだ。一極に依存することは、許容できないほどの危険を招く。ましてその一極が理念ではなく、不満に突き動かされているような場合には、なおのこと危険性は高まる。
 また日本はアメリカへの協力を両国共通の戦略的利益として、安全保障の枠組みのなかに引きつづき置くべきだ。関税はトランプ大統領の腹立ちに基づく個人的なこだわりにすぎないが、側近のなかには日本を主要な同盟国でありパートナーとみなす対中強硬派が多い。この位置付けは、ワシントンで共感を呼ぶものだ。アメリカの政策決定者に対して、日本は単なる貿易相手でなく、地域の均衡の拠(よ)り所だと繰り返し思い起こさせることが重要だ。この「中国カード」を慎重かつ一貫して切っていくことが、日本がアメリカの意思決定に影響を与えうる、もっとも効果的な手段のひとつだ。
 最後に、日本政府は長期戦を前提とした姿勢へ切り替えなければならない。貿易世界大戦はいまはじまったばかりだ。本書では、アメリカと中国というふたつの体制の衝突をどう管理しうるかという方法論についても解説しているが、現実的に見て、この対立は現状の地政学的リスクの大部分を生み出しつつ当分はつづくことが見込まれる。

展望 日本の地道なリーダーシップが重要になる

 この序文、そして実を言えば本書全体でもっとも重要なメッセージは、おそらくアメリカが世界の貿易体制の管理者の役割から退いたということだろう。もちろん、表向きはそうではない。アメリカはいまも世界貿易機関(WTO)の一員である。しかし、ビジョン、信頼性、範を示すことによるリーダーシップという観点から見ると、アメリカは後退した。かつてアメリカが構築し擁護してきたルールに基づく貿易体制は、共和党政権下でも民主党政権下でも、政策の基本理念ではなく便利な道具になってしまった。トランプ大統領はアメリカがこれまでに二国間、多国間で結んできたあらゆる貿易に関わる約束を、相手国がどこであれすべて破った。今後選ばれる大統領が、それを覆すことが政治的に可能だと判断するとはわたしには思えない。これは一時的な中断ではない。構造的な変化である。超党派による後退である。
 わたしの見解では、この新たな世界において貿易のリーダーシップが消えるわけではない。形を変えて、集団で現れる。本書でわたしが「集団的リーダーシップ」と呼ぶ形で発揮されるのだ。それは志を同じくする国々が立ち上がって築きあげる、明確な組織を持たない緩やかな協力体制であり、単一の覇権国が不在のなかで、世界のルールを維持し、状況に応じて作り替え、拡張する役割を担う。日本はすでにこの形のリーダーシップが実際に機能することを示している。アメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱した際、日本は残りの国々を導いて無事に協定締結へと漕ぎつけた。そうして生まれたCPTPP(包括的・先進的環太平洋経済連携協定)までの過程は、救済行為というだけではなかった。力のある中堅国が連携して行動すれば、何ができるかを出しゃばらずに示すものだった。
 EUと並んで日本はいま、この非公式のガバナンス構造のもっとも強力な柱のひとつとなっている。両者が協力すれば、予想を安定させ、法的規範を守り、予見不能なアメリカか強硬な中国かという二者択一の状況に、信頼できる第3の選択肢を提供できるはずだ。このリーダーシップは声高に主張するものでも一方的なものでもない。協調し、最後までやり通し、そして何より一貫性を保つことを通じて築かれるものである。
 そしてこのようなリーダーシップこそが、何よりも価値ある戦略資産と言えるかもしれない。誇張と報復に翻弄される貿易体制において、信頼こそが新たな力だ。日本が持つ安定性やルール遵守、規律に基づく現実主義に対する評価は、日本の交渉力を高める力となる。これから先の10年、日本の地に足の着いたリーダーシップは、ワシントンと北京のやかましい主張をともに超えて、世界の貿易秩序を形づくるうえで大きな役割を果たす可能性がある。

結論 嵐を乗り越えるために

 2025年7月のアメリカと日本の関税合意は、想定しうる最悪の結果ではなかった。しかし、長期的な信頼を築く礎とはならないだろう。これは派手なパフォーマンスが整合性より優先され、不満が政策を動かす一瞬を捉えたスナップ写真だった。それでも、この一件では重要なことが証明された。日本はこの新たな分断化する貿易体制のもとでうまくやっていくことができるということだ。地道な外交、戦略的な忍耐、そして長期的視野に立った姿勢は、依然として日本の最大の資産である。
 この序文では、本書が今ほど必要とされるときはない理由を概説した。アメリカはルールづくりからニュースの見出しを追い求める方向に転じた。中国はサプライチェーンを武器へと変えた。わたしたちが目撃しているのは、単なる政策転換ではない。わたしたちは貿易という世界の基本ソフト(OS)の転換を耐え抜こうとしているのだ。
 この新しい世界でもっとも賢明な道は、自制である。トランプ大統領にはカメラの前で勝利を宣言させておけばいい。しかし、その裏では同盟を維持し、国益を守り、貿易体制が再び信頼、透明性、協調に支えられる未来に向けて世界を導きつづけなければならない。
 日ごとに貿易の嵐が激しさを増す世界において、日本の地道で確かな手腕と、志を同じくする国々と日本との協力が、貿易体制の転覆を防ぐ舵であることがいずれ証明されるだろう。

 2025年7月

リチャード・ボールドウィン

【目次】

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