その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は谷口正晴さんの『 マンガで分かる 最高のコンクリートのつくり方 』。その「あとがき」です。
【あとがき】
コンクリートはインフラの重要な材料として、防災や減災、安全・安心に快適な社会づくりに貢献しています。良質なコンクリート構造物をつくり、長寿命化させることを考えないと、早期劣化による剥離や崩落で安全が脅かされるだけでなく、維持管理に膨大な税金を投じることになり、市民生活に多大な影響を及ぼしかねません。
コンクリートの寿命は一般的に50~100年といわれています。コンクリートの品質は、材料や施工方法(施工の仕方)、現場の時期(夏季・冬季)、供用している場所の環境などによって変わってきます。私はその中で、施工方法(施工の仕方)が品質を底上げする鍵を握ると考えています。
そう強く思ったのは、九建日報2017年9月20日付掲載の記事がきっかけでした。「コンクリ初期欠陥抑制へ確認シート・目視評価を試行国交省が依頼通知」です。この書籍でも紹介していますが、準備から養生までの各段階で、1枚のチェックシートを用いて適切な手順を踏んで施工しているかどうかを確認するというものです。これまでチェックシートの存在を知らなかった私にとって、目からうろこの内容でした。
さらに同年9月に土木学会が全国大会で開催した「コンクリート構造物の品質・耐久性確保マネジメントシステムの社会実装―長持ちするインフラづくりと人財育成―」の座談会の報告書を読んで、丁寧な施工によるコンクリートの品質確保についての哲学を学び、「これはコンクリートを扱う全国の建設会社やセメントメーカー、自治体の職員に、もっと普及すべき内容だ」と感じました。
しかし、国交省でのチェックシートの活用通知を機に、色々なところでチェックシートが使われ出したという噂は聞こえてきましたが、数年たっても思ったほどの盛り上がりは見えてきませんでした。チェックシートの中身を説明した書籍や資料は世に出ていたものの、多くは文章ベース。現場の技術者はそこにハードルを感じていたのかもしれません。そこで、ふと思いついたのが、このマンガをベースとした書籍でした。
私が代表取締役を務める協和建設株式会社は、福岡県直方市に本社を構える建設会社です。建設会社がなぜマンガなのかという疑問を抱かれる方も多いかもしれませんが、実は私がマンガと深い関わりがあったためです。昔から全国でも少し変わった取り組みを実施しており、その代表例がKY(危険予知)に使える「マンガ安全建設看板」でした。
マンガ看板はひと目で分かるので、工事期間中に作業員が入れ替わっていたとしても、内容を理解しやすいと好評です。また一般の方に対して、建設工事の内容を分かりやすく伝えるという点でもメリットがあるということで、工事中の看板に付けることも増えてきました。今ではNETIS(新技術活用情報システム)にも登録されています。
現場でこういった取り組みを続けてマンガの効用を実感していたため、施工状況把握チェックシートの普及方法と結びつくまでそう時間はかかりませんでした。
マンガ書籍では特に以下のような読者層を想定しています。「土木学会のコンクリート標準示方書[施工編]をより理解したい方」「発注者、受注者(技術者、技能労働者、外国人労働者)の方」「建設業に入職を希望する(大学生・高校生・その他)方」──。これらは主に業界内の読者層ですが、それ以外に、子どもや生徒たちを対象とした建設業のイメージアップなどにも貢献できると考えています。例えば、現場見学会で、コンクリート打設の仕方をマンガで理解してもらうといった使い道もあります。
今回、執筆の機会をくださり、サポートしてくださいました数多くの皆様に御礼申し上げます。マンガの制作を担当した株式会社マサトー(福岡県直方市)の皆様、作画を担当した黒沢ま~さ氏、関係者間の調整などに協力してくれた株式会社シンフィールド(東京・千代田)の皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。
そして、ご多忙の中、専門分野の視点から御監修いただいた細田暁教授(横浜国立大学コンクリート研究室)、書籍の制作に欠かせない貴重な資料をご提供いただいた山口県技術管理課、同課技術指導班で窓口となって書籍のアドバイスをくれた吉村崇主任、編集で協力いただいた日経BP日経コンストラクションの真鍋政彦編集長のご尽力に、御礼申し上げます。
最後に、コンクリート打設の方法はマンガで概要が理解できるようにしていますが、より深く理解するには用語解説書をお読みになることをお勧めします。
2023年7月吉日
協和建設株式会社 代表取締役 谷口正晴
【目次】



