日本ではすでに始まっている人口減少。世界全体で見ればまだまだ増えているから心配ないと思い込んでいませんか? 実は今後早くて約30年で、世界の人口はピークを迎え、その後は急激に減少していくと、テキサス大学オースティン校の准教授で経済学者のディーン・スピアーズとマイケル・ジェルーソは指摘します。彼らの新刊『 人口崩壊 データで見る人類の過去と未来 』(土方奈美訳、日経BP)の魅力を、慶應義塾大学総合政策学部教授で経済学者の中室牧子さんが読み解きます。
人口減少というと、「人が減れば食糧不足も環境問題も改善するのではないか」と考える人は少なくないだろう。本書は、そうした一見もっともらしい直感を、人口学、経済学、医学などの豊富なエビデンスによって一つひとつ問い直していく。とりわけ興味深いのは、人口の多さを単なる「負担」として捉えるのではなく、人と人とのつながり、分業、イノベーション、知識の蓄積こそが、私たちが享受してきた繁栄と進歩を生み出してきたと論じる点だ。
しかし、本書は決して「もっと子どもを産むべきだ」と主張する本ではない。子どもを持つかどうかは個人の自由な選択であり、その自由を守ったうえで、なぜ多くの人にとって子どもを持ち育てることが難しい選択になっているのかを社会の側に問い返す。これまでの少子化対策に決定打がなかったという事実にも正面から向き合い、安易な処方箋を示さない姿勢も誠実だ。
少子化を国内問題として語りがちな日本の読者に、時間軸と視野を大きく広げ、「人口」という問題を改めて考えるための座標軸を与えてくれる一冊である。
