「自分に管理職が務まるのだろうか」「部下とうまく話がかみ合わない」「仕事を任せても期待通りに進まない」。管理職になった途端、それまで感じたことのない壁にぶつかる人は少なくありません。なぜ部下とのすれ違いは起きるのか。どうすればチームとして成果を出せるのか。ビジネスリーダー育成を支援してきた著者が、その悩みを解きほぐすヒントをまとめた新刊『 はじめて部下を3人持ったら読む本 』(野元義久著、日経BP)の読みどころを、インキュベータ代表取締役の石川明さんが紹介します。
本書の大きな特徴は、新米管理職が抱えがちな悩みをうまく言語化しているところです。
管理職として働く多くの人が、日々難しさや苦しさを感じていると思います。ただ、その悩みはとても複雑なため「何がどう大変なのか」を、自分自身で整理できているとは限りません。プレーヤー時代との違いは何か。なぜ思うようにいかないのか。本書では、そうした漠然とした悩みが一つひとつ分解され、正体が明らかになっていきます。
数多くのリーダーからの相談に、真剣に向き合ってきた野元さんだからこそ、「つまり、こういうことなのではないか」と悩みの本質を言葉にできるのでしょう。悩みの輪郭がはっきりすれば、解決への道筋も見えやすくなります。本書は、管理職が自分自身の状況を整理し、冷静に見つめ直すための助けとなる一冊だと感じました。
また、本書をきっかけに、あらためてプレーヤーから管理職へ転換するということについて考えさせられました。
管理職への昇進は、大きな変化として語られがちです。しかし、よく考えてみると、多くの人はプレーヤー時代から、自分以外の誰かの立場を想像しながら仕事をしてきたのではないでしょうか。営業であればお客様の視点に立って考えてきたことでしょうし、上司から依頼を受けた際に、その背景や向けられている期待を想像して仕事を進めてきた人も多いでしょう。
そう考えると、管理職とはまったく新しい能力が求められる仕事というより、これまでお客様や周囲の人に向けていた想像力を、今度は部下にも向ける仕事なのかもしれません。
自分がプレーヤー時代に何を見て、何を考えながら仕事をしてきたのか。本書を読んで振り返ってみることで、管理職という役割への見方も変わるように感じました。
また、本書から受け取ったもう一つのメッセージは、管理職という立場をプレッシャーに思わなくてもよいということです。
人は肩書が付くと、つい「自分が責任を負わなくては」と考えてしまいます。しかし実際には、それも組織の中でたまたま任された役割の一つです。ある種のロールプレーと捉え、「○○係」くらいの心持ちでいてもいいのかもしれません。
チームで働く醍醐味は、自分にはできないことを誰かが補ってくれる点にもあります。自分一人ではできなかったことが、チームなら実現できる。その経験を通じて、自分の新しい一面や、これまで気づかなかった得意なこと、苦手なことが見えてくることもあるでしょう。
仕事のスタイルに正解はありません。いろいろ試してみればいいですし、たくさんの事例を見てきた人が整理した先例に触れることで、新しい気づきも得られるでしょう。人はどうしても「自分だけがこんなに悩んでいるのだ」と思いがちです。本書を読みながら少し俯瞰(ふかん)して状況を見てみると、気持ちが楽になると思います。
そして、個人的に興味をひかれたのが、タイトルにある「3人」という数字。なぜ2人でも4人でもなく、3人なのか。部下が3人以上になると何が起こるのか。その数字に込められた意味には、野元さんが長年の経験からたどり着いたマネジメント観が凝縮されているように感じました。ぜひ本書を手に取って、その意味を確かめてみてください。
