日本のコンサルティング業界が大きく成長した結果、コンサルタントの「個体差」が大きくなってしまった。業界事情を知り尽くした元コンサルタントが、本物と偽物が混在する今日のコンサルティング業界の裏側を明かす。日経ビジネス人文庫『いたいコンサル すごいコンサル 究極の参謀を見抜く「10の質問」』(長谷部智也著)から抜粋・再構成してお届けする。

「大衆化」するコンサルタント

 日本でもコンサルティング業界が存在感のある規模まで大きく成長したため、コンサルタントを「名乗る人」の数が急増した。それに伴って、コンサルタントという職が「大衆化」し、本物と偽物が共存する状態になってしまった。

 大衆化とともに、コンサルティング会社、個々のコンサルタントの「個体差」が、かつてないくらいに大きくなってしまったのである。個体差が大きいということは、残念ながら、起用すべき本物とそうではない偽物とが、実際に存在しているということである。

 起用するコンサルタントを見誤ると、プロジェクトが失敗に終わるリスクが増大する。失敗というのは、プロジェクトが実効性のない「絵に描いた餅」に終わるだけなら、まだましである。筋の悪いコンサルタントに出くわすと、間違った「真逆の戦略」を提言されかねないような危険にさらされている。現在ほど、コンサルタントを起用する側にとって、「結果を出せる」コンサルタントを見抜く力が不可欠な時代はないのである。

コンサルタントには起用すべき本物とそうではない偽物とが共存している(写真:ponta1414/stock.adobe.com)
コンサルタントには起用すべき本物とそうではない偽物とが共存している(写真:ponta1414/stock.adobe.com)
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本物のコンサルタントを見抜くモノサシ

 コンサルティング業界の大衆化に伴い、本物と偽物が混在する今日において、いかにして結果を出せる本物のコンサルタントを見抜くか、そのモノサシを提供したいというのが私の狙いである。

 欧米企業ではCEO(最高経営責任者)の権限が大きく、トップダウンの意思決定で会社が大きな戦略変更の舵(かじ)を切りやすい。一方、日本企業ではそれとは異なり、中間管理職が比較的大きな権限を持って実際に会社を動かしていることが少なくない。

 この特徴をうまく捉え、戦略コンサルティング会社が日本企業の中間管理職向けに業務系のコンサルティングサービスを「小分け」にして提供している。意思決定がボトムアップでなされる日本企業のニーズに合わせた、ある意味で顧客ニーズを捉えた理にかなったコンサルティングのスタイルとも言える。

 一部の戦略系コンサルティング会社は、企業の部長職や課長職の日常業務、経営会議資料に添付する各種の調査分析資料や、場合によっては稟議(りんぎ)書自体の作成まで「各種のサービス」を、比較的小さなプロジェクトの範囲と期間で提供するようになった。コンサルティング費用も、日本の大企業の部長クラスの決裁権限内の金額にひとつのプロジェクトが収まるようテーマを小分けにしている。

 こういったサービスは、起用している一部の企業の管理職クラスには大変重宝されているが、全社最適、企業のトップマネジメントの利害、企業価値の向上とは、ともすると異なった目的関数で、社内の各所で様々なプロジェクトが、様々なベクトルで走ってしまっているケースも実際にはある。コンサルティング会社の資料が稟議書の添付資料についていた方が、社内の経営会議を通しやすいという、管理職や担当者の利害を支援しているケースもある。

 提供サービスが、経営アドバイスから日常業務支援になり、コンサルタントの目線も日常業務に埋もれ下がる一方である。日本企業の部長や課長が便利にコンサルタントを起用するのはよいが、何年か起用して振り返ってみると、まったく企業価値の向上に貢献していないことに気づき、全社的に「もうあそこは使うな」と大号令がかかる日本企業もある。

CEOカウンセラー vs 下請け業者

 コンサルティング業界全体で見れば、CEOのカウンセラーとしての機能よりも、管理職の下請け業務を行う出入業者、「労働力」的な色合いが強くなっていることは否めない。耳が痛いことを直言するCEOカウンセラーというよりは、クライアントが社内を説得するために言ってほしいことを、「外部からの助言」という建付けで「言ってあげる」という、クライアントに迎合したサービスが増えてきている。

 百歩譲って、クライアントが言っていることが正しく、正しい方向に迎合しているのであれば問題はないのかもしれない。しかしながら、コンサルタントがただプロジェクトフィーをもらうために、クライアントが言ってほしいことを言っているのであれば、全社で見て企業価値を毀損させてしまいかねないようなことをしているリスクをはらむ、危険な状態と言わざるを得ない。

コンサルタントの「個体差」が大きい

 コンサルタントはプロのサッカー選手や野球選手などとは違い、特別な能力を持つスーパーマンがなるような職業ではまったくない。一定の資質が求められることは否定しないが、弁護士や会計士などと同じように、正しい努力をすれば後学可能なことがほとんどである。したがって、コンサルティング会社にとって、社内の社員教育が果たす役割は大きい。唯一の資産が、教育され必要なスキルを兼ね備えた人材だからである。

 一方、コンサルティング主要各社の中で、知名度が同程度であっても、社員教育の完成度の高さには実は雲泥の差があり、教育制度がいまひとつのコンサルティング会社では、個々のコンサルタントの「個体差」は大きいのが実態である。

 これは、コンサルタントとしてかなりの経験年数を積んだ後でもそうなのである。特に、規模が急拡大しているコンサルティング会社には注意が必要である。採用した人材の教育をしている暇がないからだ。

 コンサルタントは、士業の先生方とは違い、何の国家資格も必要ない。投資銀行の各業界のセクター担当アナリストのような個人ランキングもない。そのため、起用する側が悩ましいのは、コンサルティング会社の知名度くらいでしか選びようがないことである。コンサルタントを雇う段階になっても、担当してもらうコンサルタントの資質やスキルを測る基準を持つことは非常に難しい。過去に複数のコンサルティング会社を起用した大企業ならば、ある程度の比較はできるかもしれないが、テーマが異なると比べるのがなかなか難しかったりもする。

個々のコンサルタントの「個体差」は大きい(写真:Natee Meepian/stock.adobe.com)
個々のコンサルタントの「個体差」は大きい(写真:Natee Meepian/stock.adobe.com)
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 また、過去にそのコンサルティング会社を起用したことのある、別の企業の知人の話を聞くという方法もあるかもしれないが、担当コンサルタントが違ってしまうと、コンサルタントの個体差ゆえ、雲泥のレベル差となるリスクがある。

 さらに言えば、終了したプロジェクトの効果検証というのも実際には難しい。コスト削減のプロジェクトであれば、比較的効果があったかなかったかが分かりやすい。しかしながら、戦略構築のプロジェクトの場合、財務的成果が十分に出なかったとき、提言された戦略が違っていたりずれていたりしたのか、外部環境が想定以上に変わってしまったのか、社内事情で提言された施策が十分に実行できなかったのか、結果が出るまで何年もかかる間に、こういった要素のすべてが複雑にからみ合って切り分けができなくなる。

起用する側に「見抜く力」が必要な時代

 コンサルティング業界が大衆化路線を突き進むなか、起用する企業側から見て最近の一部のコンサルティング会社は、もはや問題解決のプロでもCEOのプライマリーカウンセラーでもなく、日本企業の部長や課長から課された宿題を言われた通りに、便利使い的に調査分析を行う「高級人材派遣」だとか、さらには、頼まれた通りにきれいな社内資料だけを作る「高級筆記用具」などと揶揄(やゆ)されている例も、残念ながらある。

 コンサルティング会社だけではなく起用する側にも問題はあるのだが、いずれにしても、個々のコンサルタントの個体差が史上かつてないくらいに大きくなってしまった現在、起用する側が結果を出せる、本物のコンサルタントをしっかりと選んで、正しく起用しないといけない。

 では、どのようにすれば彼らの実力を見抜くことができるのだろうか。それを可能にするのが、以下の「10の質問」である。

●「業界構造」に精通しているのか?
質問1 「わが社の属する業界の歴史と構造変化をどう見ていますか?」
●最終提言を「第0日に30秒」で語れるか?
質問2 「今回お願いするプロジェクトの最終提言の仮説は何ですか?」
●どんな数字も「自由自在に」つくれるか?
質問3 「わが社の中期経営計画で鍵となる施策とその利益効果の根拠は何ですか?」
●能書きではなく「アクション」至上主義か?
質問4 「わが社が競合に勝つために取るべき最も重要なアクションは何ですか?」
●すらすらと「定石」が出てくるか?
質問5 「わが社の周辺事業への展開についてどうお考えですか?」
●「直言」できるか?
質問6 「現在のわが社の戦略で誤っている点、見逃している点は何ですか?」
●組織の「空気感」が分かるか?
質問7 「わが社の『意思決定プロセスの特徴』をどう見ていますか?」
●「成功報酬」を歓迎するか?
質問8 「今回のプロジェクトは成功報酬でお支払いしてもよろしいですか?」
●「長いプロジェクト」経験が多いか?
質問9 「過去のプロジェクトで最長のもの、最大の効果を出したものは何ですか?」
●「パートナー」がしっかりと時間を使うか?
質問10「今回のプロジェクトにあなた(パートナー)自身は、どれだけの時間を使ってもらえますか?」

 コンサルタントを起用する方々が、「いたい」コンサルタントにだまされず、確かな腕を持ったコンサルタントを正しく起用できることを願うと同時に、起用する側が賢くなることで、コンサルティング業界及び個々のコンサルタントがプロフェッショナルを名乗る上で必要な覚悟を再確認し、自己研鑽(けんさん)の必要性に駆り立てられ、結果としてコンサルタントの質的向上につながることを、心の底から願っている。

良い仕立てのスーツを身にまとい、話がやたらとうまく、年上に見られるようにヒゲを生やし、「人間的な奥深さ」を演出するために教養豊かであったりするコンサルタントには要注意! 業界事情を知り尽くした元コンサルタントが、コンサルタント選びの必勝ノウハウを公開。

長谷部智也著/日本経済新聞出版/990円(税込み)