ランサムウエア攻撃が世界中で大きな被害をもたらしています。国内でもアサヒグループホールディングスやアスクルが相次いで被害に遭い、業務に大きな支障を来しています。大手に限らず、全ての企業が攻撃対象になります。このためどのような企業であっても、攻撃を受けることを前提に備える必要があります。対策の1つが、書籍などで正しい知識を得ることです。どの本を読めばよいのか、セキュリティー専門記者でありランサムウエア攻撃に関する著作もある勝村幸博さんが、お薦めの「日経の本」3冊を紹介します。

攻撃の現状や手口、事例、対応方法などを網羅

 「ランサムウエア攻撃が怖いことは聞いているが、それ以外は全く知らない」――。手前みそで恐縮ですが、そういった方には拙著の『 ランサムウエア攻撃との戦い方 セキュリティー担当者になったら読む本 』をお薦めします。

 これまで縁がなかったのに、急にセキュリティー担当者に任命された人を主な対象読者と想定して執筆しました。そのために心掛けたのが「分かりやすさ」です。セキュリティーの専門知識がない方でも抵抗なく読み進められるように、できるだけ平易な表現にしました。ですのでセキュリティー担当者に限らず、経営陣の方や一般社員の方などにも読んでいただける内容になっています。

 攻撃の現状や手口、事例、対応方法、対策、歴史を網羅していることも特徴です。事例については、実際に被害に遭った国内3組織が公開する報告書を基に、ランサムウエア攻撃の認知から収束に至るまでの過程をまとめています。これを読めば、ランサムウエア攻撃の被害を疑似体験できます。類書にはない独自の内容だと考えています。

対応に当たるセキュリティー会社の視点から解説

 「ランサムウエア攻撃を受けた場合、どのような技術対応をするべきか」――。技術的な視点から会社の守り方を知りたい方は、『 ランサムウエアから会社を守る 身代金支払いの是非から事前の防御計画まで 』を読んでみてはいかがでしょうか。

 執筆陣は、セキュリティー会社のラックにおいて実際にサイバー攻撃対応に当たっている方々です。同書の出版時点で4000件以上の対応実績があり、その知見を余すことなく公開したといいます。ランサムウエア攻撃被害に遭った場合の技術的な対応を、ツールの具体的な使い方とともに解説しているのが同書の特徴の1つです。

「ランサムウエア攻撃に遭ったらどのような判断をすべきか」として、被害に遭った場合の判断のフローもまとめられています。「仮想ドキュメンタリー」として、架空の会社を舞台にしたランサムウエア攻撃対応の読み物を用意しているのも同書の特徴です。対策のチェックリストを用意しているのも、セキュリティー会社ならではといえるでしょう。20ページを超えるチェックリストには、事前準備や被害拡大防止、根絶などフェーズごとの確認事項が簡潔にまとめられています。

ランサムウエアや攻撃者の実態を専門家が解析

 「ランサムウエア攻撃について技術的に深く知りたい」――。そのような方には『 マルウエアの教科書 増補改訂版 』がお薦めです。著者は、ランサムウエアをはじめとするマルウエア(悪質なプログラム)解析の第一人者である吉川孝志さん(三井物産セキュアディレクション)です。吉川さんはテレビなどにもよく出演されているので、ご存じの方は少なくないでしょう。

 同書ではマルウエアの基礎から、暴露型ランサムウエアの手口などを詳しくまとめています。ランサムウエア攻撃者グループから漏洩した情報を基に、その実態も明らかにしています。攻撃者グループは通常の組織と同様に階層構造になっていて、ランサムウエア攻撃がビジネスとして回っていることが分かります。一方で、マルウエアの解析手法も取り上げています。「マルウエア解析の始め方」として、60ページ以上にわたって具体的な解析方法を紹介しています。

 『教科書』の名にふさわしく、幅広い領域をカバーしている同書。544ページの分厚さに圧倒されるかもしれませんが、文章は平易で読みやすいです。図表も豊富で、技術的に難度が高い内容も理解しやすくしています。

(写真:Sikov/stock.adobe.com)
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