「子育てに大切なことは、タッチケアにつまっている」。そう語るのは2900組以上の親子にタッチケアを伝えてきた小堺友美さんです。毎日が忙しすぎて、子どもとの関係に漠然とした不安を感じているなら、まずは「ふれあい」から見直してみませんか? 本書『タッチケアの魔法』は、山口創さん(臨床発達心理士)を監修に迎え、その科学的な効果を解説。今回はタッチ効果とストレスの関係について、本書から一部抜粋し、ご紹介します。
科学的に証明されているタッチケアの効果
「ふれること」に関して、世界中で様々な研究や調査が行われています。
マイアミ大学内に設立されたタッチリサーチ研究所の創設者であり、タッチ研究の第一人者であるティファニー・フィールド博士は、多くの臨床研究でタッチの効果を明らかにしてきました。
彼女の研究で、乳幼児や子ども、さらには大人においても、タッチが情緒の安定、ストレスの軽減、免疫力向上など多方面によい影響を与えることが示されています。
本書の監修をしてくださっている山口創先生も、長年にわたりスキンシップやタッチケアが心と体に与える影響を研究し、心理学と生理学の両面からその効果をわかりやすく解説されています。
タッチケアの効果の要となるオキシトシン(愛情ホルモン)の研究では、スウェーデンの生理学者であるシャスティン・ウヴネース・モベリ博士が世界的権威のひとりであり、オキシトシンが、親子の絆づくりやストレス軽減、心身の健康維持に重要な役割を果たすことを示してきました。
この他、数多くの研究から、タッチケアには、嬉しい効果があることがわかっています。
タッチで情緒が安定し、攻撃性が減り、自己肯定感も高まる
子育てをしていると、お子さんの情緒が不安定で悩むことはありませんか?
実は、研究や調査から、スキンシップ不足が子どもの情緒や社会性の発達にネガティブな影響を与え、結果として攻撃的な行動や衝動性の高まりにつながりやすいことがわかっています。
ジェームズ・プレスコット博士、山口先生といった専門家の研究が、このことを示しています。
160名の高校生と保護者に対して行った、山口先生の「キレる」とスキンシップとの関係性をみる調査では、乳児期にスキンシップの足りなかった子どもは、高校生になってからカッとなって衝動的に他者を攻撃する傾向が高い、つまり「キレやすい」傾向になることがわかっています。
しかし、ふれあいを増やすと、子どもの攻撃・衝動性が減り、自尊感情が高まるという調査結果もあります。
幼稚園の子どもたちとその母親に対して行った山口先生の調査では、1日15分程度のオイルマッサージを週3回1カ月続けてもらったところ、子どもの攻撃・衝動性が大きく減り、母親のわが子へのポジティブな感情が増え、子ども自身の自尊心が高まっていることがわかっています。
また、山口先生が0~5歳の子どもをもつ母親120名を対象に実施した調査では、母親がスキンシップをとっている子ほど、衝動性が低かったという結果が明らかになりました。
シャスティン・ウヴネース・モベリ博士の、スウェーデンの保育園や学校での研究でも、タッチの効果が実証されています。マッサージを日課にとり入れると、子どもたちは落ち着くようになり攻撃的なふるまいが減り、周りのお友だちと仲良くなるなどの変化がみられることがわかっています。
人間は、古くから、タッチを通してコミュニケーションをとってきました。ここに紹介した近年の研究は、それは単なる習慣ではなく、心身や人間関係に様々な効果をもたらす行為だということを裏づけています。
タッチでストレスを減らす好循環が生まれる
コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、ストレスを感じたときに副腎から分泌されるホルモンです。
適度な分泌は体を守るために必要ですが、過剰に分泌され続けると、免疫力の低下、睡眠障害、情緒不安定、学習能力の低下など心身へ悪い影響が出てしまいます。
やさしいタッチは、心と体をリラックスさせる「副交感神経」を活性化します。
そのおかげで、体を活動モードに切り替える「交感神経」の働きが和らぎ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌も自然と減っていくとされています。
さらに、タッチケアによって分泌される「オキシトシン(愛情ホルモン)」には、コルチゾールを抑える働きがあることも、多くの研究で示されています。
そして、この反応は親子双方に起こるので、親も子もどちらも安心しやすくなり、気持ちがおだやかになるというわけなのです。
つまり、タッチをすると、次のような流れが、体の中で起こるのです。
多くの研究で、定期的な肌のふれあいや親子のタッチケアが、子どものコルチゾールを抑えることが示されています。
ウィスコンシン大学のレスリー・セルツァー博士らの研究によると、7・12歳の女の子61名を対象にしたストレス緩和に関する研究で、ストレスを感じたときにスキンシップややさしい声かけが効果的であることが示されました。具体的には、オキシトシンを増加させ、コルチゾールを抑制する効果が証明されています。
このように、科学的にもタッチケアが、情緒の安定やストレスの軽減につながることが明らかとなっています。
そのため、子育てでは、入園・入学、新学期、転校、受験、発表会、妹さんや弟さんが生まれるなど、環境が変化したり子どもにストレスがかかりやすいときにこそ、タッチをとり入れることがおすすめです。
小堺友美(著)、山口創(監修)/日経BP/1760円(税込み)





