友達が多い性格の人は、人間関係がうまくいくだけではありません。逆境に強く、目標も達成しやすく、安定した人生を送れるといいます。反対に、友達が少ない人は不安が多い人生になるそうです。それはどうしてなのでしょうか? 新刊『FRIENDSHIP(フレンドシップ) 友情のためにすることは体にも心にもいい』(マリサ・G・フランコ著、松丸さとみ訳)から抜粋してご紹介します。

安定型の人は、思いやりが返ってくる確率が高い人生

 友達が多い性格の人は、愛着理論でいう「安定型の人」です(第2回参照)。このタイプの人は、はっきりとした証拠がない限り、他者は信用に値する存在であり、自分を好いてくれ、幸せを願ってくれている、という考えが初期設定になっています。

 これは何の根拠もない楽天家というわけではありません。データにもとづいた楽観性なのです。とはいえ、この基本的な楽観性、すべては最終的にうまくいくはずだとの信念のおかげで、安定型の人の人生はほかの人と比べて楽なのだ、と心理学者のオムリ・ギラス博士は説明します。人間関係で安定していることで、人生のあらゆる面で安定していられるようになるのです。

 安定型の人のような考え方をしていたら結局は落胆するだけだ、と決めつけたくなるものです。他人が信用できると考えて、安定型の人は傷つかないのでしょうか? 実は、最高なものが手に入って当然だと考えることで、安定型の人は実際に最高なものを手に入れられるようになります。

 金融ゲームを使ったある実験では、実験に参加した学生に対し、別の参加者である「管財人」にお金を投資するよう指示しました。実験のルールは、投資する側が「もし投資分の利益を生まなければ罰金を科す」と管財人を脅すか、罰金を科さないかを決めるというものです。実験の結果では、管財人が出す利益は、罰金が科されなかったときに最も高く、脅されたときに最も低くなりました。

 実験を行った研究者のひとりであるチューリヒ大学のエルンスト・フェール教授は、「人を信用することで、相手の信用度は高まる」と話します。この実験は、「人は自分が扱われたように相手を扱う」とする、互酬性理論と呼ばれる心理学の理論を裏付けています。思いやりを持ち、オープンで相手を信用すれば、相手も思いやりで応じてくれる可能性が高くなるのです。

 つまり安定型の人は、単に人は信用に値すると決めつけるだけではありません。安定型が信頼するおかげで、相手は実際に信用できる人となるのです。

安定型の人は、被害にあってもショックが少ない

 では、もしも信用ならない人が忍び寄ってきて、害を加えてきた場合はどうでしょうか。安定型の人は、不安定な人たち〔愛着理論でいう不安型や回避型〕より余計にショックを受けるどころか、むしろそこまで影響されません。

 研究によると、その人がどれだけ打たれ強いかやストレスに対処する能力が高いかは、その人の安定度合いからかなり予測できることが分かっています。ある実験では、仲間外れにされた場合でも、その人が安定型に近い状態になっているときは、心拍数のばらつき(心拍のリズムの乱れ)がそれほど激しく変動しませんでした。

 安定型の人は、人を信用しているため、自分が落胆しても誰かしらが手を差し伸べてくれると考えます。この打たれ強さと人に対する信用もあり、安定型の人には、友情でリスクを取る余裕があります。

 「もし絶対に失敗しないとしたら、あなたなら何をしますか?」。ある日、自然食品のスーパーマーケットに行ったら、こんな言葉が書かれたカードが目に留まったことがありました。スナック菓子を買いに来ただけだったのに、人生とは一体何かという考えに引き込まれてしまいました。

 安定型の人たちの生き方は、この問いに対する答えそのものです。安定型の人は、自分から新しい友達をつくったり、争いごとに建設的に対処したり、自分の内側を見せたりします。リスクを取るこうした行為は、よい友情をつくるために極めて重要です。

友人同士のいざこざも安定型は何ごともなく乗り越える

 安定型の医師であるニックは、ミズーリ州に引っ越した際、共通の友達を通じてローレンスと知り合いになりました。ふたりはすぐに仲よくなりました。ローレンスは数カ月後にはニューヨークに引っ越す予定でしたが、ニックは「引っ越しても会おうよ、と言いました。友達でい続ける、という強い思いを言葉にしたんです。僕はこういうこと、よくします。最悪の場合でも、ただ何も起こらないってだけですから」。

 ニックはローレンスの友達にも会い、彼らのことも気に入ったので、ローレンスにこう言いました。「友達もいいやつらだね。君は引っ越してしまうけど、僕らをつなげてくれたわけだし、みんなでグループチャットでも始めない?」

 ニックはローレンスの友達と仲よくなりましたが、彼らがニックの陰口を言っていたとローレンスから聞きました。ニックは奥さんと離婚することになり傷心していたのですが、ローレンスとの共通の友達に言わせると、まるで壊れたレコードのように、その話ばかりするというのです。

 しかしニックは怒るどころか、理解を示しました。「彼らの気持ちは分かります。友達が何かつらい経験をしているとき、"こいつ、この話ばっかりだな。イライラする”って思うときってありますよね。それを誰かにグチっても、だからといってその友達への愛情がなくなったわけではないし、今後もその友達を支え続けるでしょう。だから理解しますよ。それも友情という関係性の一部ですから」

 近しい友情にいざこざはつきものですが、そうしたことにも動揺しないほど揺るぎない自己の感覚のおかげで、安定型の人は他者への思いやりを冷静に示せます。安定型の人は友情を維持するのがうまく、争いごとになりにくいことが、研究で示されていますが、まさにそれが理由です。そしていざ争いごとが起きると、相手との関係を絶ったり、相手に過剰に従ったりといった有害な策略をあまり取りません。

 不安定な愛着スタイルの人は、人が自分のニーズを満たしてくれるか否かだけを考えますが、安定型の人は「感情の展望台」に登り、自分のニーズだけでなく人のニーズも考慮します。

 安定型の人は批判されたときでさえ、自分を守る、人を無視する、無意識のうちに友情を傷つけるといったモードに入ることはありません。自分のニーズを率直に表現しますが、それは誰かを責めたり非難したりするためではなく、自分が理解し、相手に理解してもらうためにするのです。

 人は脅威を感じていないとき、ポジティブな特徴を多く見せるものです。安定型の人は寛大で、心が広く、ウソ偽りがありません。人と親密になることや、距離を縮めるような行動(手の貸し借りや、もろさを人に見せるなど)を取ることをいとわないのです。

友達が多い性格の人は、人間関係だけでなく、人生がうまくいきやすい(写真:Hamupata/stock.adobe.com)
友達が多い性格の人は、人間関係だけでなく、人生がうまくいきやすい(写真:Hamupata/stock.adobe.com)
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人生を終えるときにお金や権力には意味がありません。ある研究によると、幸せな人と不幸せな人の最大の違いは、その人が、人とどのくらいつながれたかでした。友情のためにすることは、すべて人を成長させると著者は言います。利害関係のない人間関係を持っている人が、本当に豊かな人だともいえます。著者のマリサ・G・フランコは心理学者で、友情の研究者。本書は多様な論文と、さまざまな人々の失敗や成功例を元に書かれています。実際にどう友達をつくったらいいかも分かります。ぜひこの本で、豊かな友情を育ててみましょう。

マリサ・G・フランコ著、松丸さとみ訳、日経BP、2420円(税込み)