理不尽に怒っていたり、感情的になっていたりして攻撃的な言葉を使う人の話はなるべく聞きたくないものです。しかし、仕事や人間関係の都合で、どうしても避けられないときもあるでしょう。そんなとき、どうすれば精神的なダメージを防ぐことができるのでしょうか。累計29万部の「ベストセラー100冊」シリーズの新刊『 「聞く力のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 』(日経BP、藤吉豊・小川真理子著)から、抜粋して解説します。2回目は、相手の話をきちんと聞きながらも、自分を上手に守るコツです。
本当は受け流したい、でも受け流せない相手の怒りの受け止め方
前回、感情的な人や怒りをぶつけてくる人の心理状態と、相手の怒りに巻き込まれない方法を紹介しました。
しかし、聞く力の名著100冊は、いつでも相手の話を、ただ受け流せばよいと指摘していたわけではありません。仕事や人間関係の都合などで、ときには、感情的な人・怒っている人の話を受け止めなければいけないときもあります。
相手の言葉を別の角度から捉え直す
怒りの言葉をそのまま受け入れると、「自分が否定された」と感じやすくなります。すると、必要以上に落ち込んだり、自分を責めたりすることもあります。
大切なのは、相手の言葉を別の角度から捉え直すことです。解釈を変えると、相手の怒りに巻き込まれにくくなります。怒りの解釈の変え方には、大きく4つの方法があります。
(1)相手の感情を整理する時間だと考える
怒鳴られたり説教されたりすると、私たちはどうしても「一方的に攻撃されている被害者」という意識に陥ります。この状態はストレスが大きく、心も消耗します。
しかし、視点を変えれば、目の前の相手は、「自分の中にたまった感情をうまく処理できずにいる人」だともいえます。
相手の言葉をすべて自分への攻撃として受け取るのではなく、「今は、相手が感情を整理している時間なのだ」と捉えてみる。「この人は、感情の置き場に困っているのかもしれない」と考えることで、相手の怒りと少し距離を取れるようになります。
「説教というものが、説教する人の精神衛生上、大いに役立つものであるからであろう。(略)部下の方もこのあたりのことがよくわかってくると、説教をいやいや聞くのではなく、説教している人の精神衛生のために御協力しているのだと思って、もう少し暖かい気持で聞けるのではなかろうか」(河合隼雄『こころの処方箋』/新潮社)
(2)自分のための指摘だと考える
言いにくいことを言ってくれた(叱ってくれた)のは、「自分への期待があるからだ」と捉え直します。「自分への期待の裏返しだ」と解釈すると、耳が痛い言葉も「自分をよくするための貴重なフィードバック」として前向きに受け止めることができます。
「叱られる原因は、必ずしも納得できるものとは限りません。場合によっては、理不尽とも言える叱責を受けないとも限りません。
そんなとき、心の状態をどのように持っていくか。対処法は一つしかありません。前向きに捉えるのです。
叱られたことは、すべて糧になる。自分が強くなるために必要なことだ。もっと大きな失敗をしなくて良かった。考え方はいろいろです」(岩瀬大輔『入社1年目の教科書』/ダイヤモンド社)
(3)相手の余裕のなさのあらわれだ、と考える
攻撃してくる人を前にすると、相手が必要以上に大きく見えることがあります。強い言葉を使う人、威圧的な態度をとる人を「怖い人」「力のある人」と見てしまうと、聞き手は萎縮します。
しかし、攻撃的な態度は、心の余裕のなさから出ている場合もあります。不満がある。認められたい。自分の正しさを証明したい。満たされない思いが、強い言葉として表に出ているのです。
相手を「怖くて強い存在」ではなく、「心の余裕を失っている人」と捉え直すと、相手の怒りに飲み込まれず、冷静さを保つことができます。
(4)「 自分」ではなく「仕事」に向けられた言葉だと考える
仕事で注意を受けたときは、「自分という人間が否定された」と受け取らないことも大切です。指摘されたのは、仕事の進め方、資料の内容、対応の仕方です。
人と仕事を分けて考えると、必要以上に傷つかずにすみます。「自分がダメなのだ」ではなく、「仕事のやり方に直す点があった」と捉え直すことで、改善点を見つけやすくなります。
「仕事のやり方と自分自身を切り離すことである。仕事のやり方が間違っていると指摘された場合、『仕事のやり方』は否定されても、『自分という人間』が否定されたわけではない」(榎本博明『「指示通り」ができない人たち』/日本経済新聞出版)
叱責か文句・悪意かを見極め、後者なら受け流す
怒っている相手の話を聞くときは、「指摘・叱責」なのか「悪口・文句(不満の吐露)」なのかを見極めることが大切です。
指摘・叱責には、相手の成長や改善を願って、必要なことを指摘する面があります。
一方、悪口・文句は、自分の感情を相手にぶつける行為です。そこには、改善を促す意図よりも、相手をおとしめたり自分の不満を解消したりする目的が混ざっていることがあります。
聞き手が受け入れるべきなのは、指摘・叱責の中に含まれている改善点、自分に非がある部分、確認すべき事実です。
たとえば、「資料の数字が間違っている」「報告が遅かった」「確認不足があった」といった指摘には、耳を傾ける必要があります。
「なぜ怒られたのか、どうすれば次は迷惑をかけないのか、失敗から得られる学びを自分の中でしっかりと言語化しておけるか。そこが一番大切なポイントです」(荒木俊哉『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』/ SBクリエイティブ)
正当な指摘ほど、耳に痛いものです。自分の落ち度を指摘されると、つい事情を説明したくなるものです。
しかし、そこで言い訳を重ねると、逆効果です。相手には「反省していない」「責任逃れをしている」と映りやすくなります。
「言い訳は自己弁護や自己満足にはなっても、相手の抗議する気持ちの解消にはまったく役立ちません。おまけに、相手の感情をますますいらだたせてしまいます」(東山紘久『プロカウンセラーの聞く技術』/創元社)
相手に不備を指摘されたら、まずは言い訳をせずに耳を傾けます。説明が必要な場合も、相手が落ち着いてから伝えるほうが、こちらの話は通じやすくなります。
一方で、受け流してよいものもあります。八つ当たり・人格否定・感情の爆発・悪意といった、一方的な怒りです。
相手が改善のために言っているのか。
ただ感情をぶつけているだけなのか。
この違いを分けて聞くことができれば、強く注意されても「自分という人間まで否定された」と落ち込むことはなくなります。
藤吉豊、小川真理子(著)/日経BP/1760円(税込み)

