テクノロジーがどのように世界を変えていくのか。新刊『 日経テクノロジー展望2027 世界を変える100の技術 』(日経BP)では、注目される100の技術を集め、その革新性やインパクト、将来性などを解説している。本コラムでは本書から抜粋、「2031年のテクノロジー」期待度トップ5を紹介していく。今回はその前段階として、本書独自の「期待度」調査の概要と「ランキングトップ10」を紹介する。

 書籍「100の技術」シリーズは2016年に最初の1冊を発行して以降、版を重ね、毎年、その年の注目技術を紹介し続けてきた。『日経テクノロジー展望2027 世界を変える100の技術』は11冊目となる。現在は、日経BPの編集長や所長約50人が推薦した技術を、日経BP総合研究所が実施した調査も反映して、ビジネスパーソンの期待度とともに紹介している。

 今回の調査結果を分析すると、現在とこの先の5年間でビジネスパーソンがどんな技術に期待しているかが浮かび上がってくる。

 昨今話題の人工知能(AI)関連技術や「量子コンピューター」が上位を占めているのは現在も5年後も変わらない。ただよく見ると、実用化のレベルに応じて期待度に差が見られる技術もある。

 例えば、現在、26年の足元では、スマートフォンや実生活に直結するデバイスや、個別プロセスの自動化といった「手元で効果が実感できる技術」に対する期待度が高い。既に社会に浸透しつつあり、実際に身近に触れている人もいるであろう「顔認証決済・乗車」や「ライブ翻訳」といった技術がより上位にランクインしている。

 そして5年後、31年になると、文字通り世界が変わるような夢の技術に対する期待度が高まる。「無人運転」「ヒューマノイド」「宇宙データセンター」などが順位を上げており、産業や社会インフラが、安全に自律化・高速化していく未来を見通しているのだろう。

期待度の高い技術

 具体的に見ていこう。まず足元の26年のランキングから。

2026年のテクノロジー期待度ランキングトップ10(有効回答271人)
2026年のテクノロジー期待度ランキングトップ10(有効回答271人)
(出所:日経BP 総合研究所『5年後の未来に関する調査【世界を変革する有望技術(2026年)】』)※調査概要は記事末に
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 ランキング1位の「フィジカルAI」(期待度60.5%)と2位の「量子コンピューター」(同55.4%)が突出した支持を集めている。フィジカルAIは、ロボットや機械などの物理的な装置をAIが自律的に制御する仕組み、量子コンピューターは現在主流のノイマン型コンピューターとはけた違いの計算速度を実現する技術だ。これらは、工場や建設現場などの深刻な人手不足、そして激増するデータ処理需要への期待を反映している。

 これに続くのが、3位の「全固体電池」(同51.7%)、4位の「ライブ翻訳」(同50.9%)、5位の「顔認証決済・乗車」(同44.3%)だ。これらの傾向から見えるのは、実際に使える形で社会に登場しつつある技術に対する期待だ。

 実用化レベルを3段階で評価した「技術成熟度」を見ても、26年の上位には既に製品化されているものや、検証が最終段階に入っている「高」および「中」の技術が並んでいる。今まさにビジネスや生活の場で導入が始まり、日々の生活をアップデートし始めている実用的な技術が、26年の主役と言える。

 一方、5年先の31年の期待度を見ると、少し様相が変わる。

2031年のテクノロジー期待度ランキングトップ10(有効回答271人)
2031年のテクノロジー期待度ランキングトップ10(有効回答271人)
(出所:日経BP 総合研究所『5年後の未来に関する調査【世界を変革する有望技術(2026年)】』)※調査概要は記事末に
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 期待度1位の「量子コンピューター」(期待度55.0%)は、26年のランキング2位から逆転して1位を獲得した。2位の「フィジカルAI」(同53.5%)が今まさに社会実装が進みつつある技術であるのに対し、量子コンピューターは将来的な実用化を見据えた期待を集めたといえる。フィジカルAIと3位の「無人運転」(同43.5%)はいずれも、これまで人間が動かしていた機械や自動車が、システムによる自律的な動作に移行していくことを意味している。

 31年に期待される技術は、どれも私たち人類の限界を突破する可能性に満ちていて、今の世界を一変するかもしれないという夢を感じさせる。

 書籍『日経テクノロジー展望2027 世界を変える100の技術』では、「AI」「エレクトロニクス・モビリティー」「環境・エネルギー」「IT・通信」「建築・土木・素材」「メディカル」「ライフスタイル・ワークスタイル」という分野別に整理してテクノロジーを紹介している。次回以降、調査による「2031年期待度」ベスト5の技術をピックアップして解説する。

『5年後の未来に関する調査【世界を変革する有望技術(2026年)】』調査概要
調査実施機関:日経BP 総合研究所
調査期間:2026年7月3日〜7月22日
調査対象:日経BPのネットメディア(日経ビジネス電子版、日経クロステックなど)の読者を中心に、幅広い業界で活躍するビジネスパーソンに対してインターネット調査を実施
有効回答数:271
対象技術と回答方法:本書で取り上げた100件の技術を7分野に分類。各分野の技術について、ビジネスの拡大や新規ビジネス創出の視点で「2031年において重要性が高い」「今(2026年)、重要性が高い」と思う技術をそれぞれ3件まで選んでもらい、選んだ回答者数の割合を期待度とした。

(書籍『日経テクノロジー展望2027 世界を変える100の技術』を基に再構成)

5年後の2031年に向けてビジネスパーソンが知っておくべきテクノロジーとは? 日経の専門誌編集長とラボ所長が「AI」「エレクトロニクス・モビリティー」「環境・エネルギー」「IT・通信」「建築・土木・素材」「ライフスタイル・ワークスタイル」「メディカル」の7分野から「世界を変える技術」100件を厳選、専門記者や研究員が分かりやすく解説します。

日経BP編、日経BP、2970円(税込み)