しつこい肩こり、繰り返される腰痛……。そんな全身の不調の原因が、実は「首」にあるかもしれません。長時間のデスクワークやスマートフォンの使いすぎで首に負担がかかり、それが肩こりや頭痛、腰痛、疲労感などの症状を引き起こしているのです。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが、「首の骨=頸椎(けいつい)」をケアすることで不調を一掃するメソッドを解説した『 すごい頸椎 首・肩・腰を一気によくする 』から一部を抜粋・再編集してお届けします。今回は、デスクワークを長時間にわたって行って頭が痛くなってきたときの対処法についてです。

頸椎は上下で異なる「顔」を持つ

 前回(参照:スマホの画面ばかり見ていると、やせているのに二重あごになることも)お話ししたように、頸椎(首の骨)は7個の椎骨(ついこつ)が積み上がってできています。

 頸椎が何よりユニークなのは、7個の骨で構成されているにもかかわらず、上のほうと下のほうで「異なる2つの顔」があるということです。

 頭蓋骨のすぐ下に位置する第1頸椎と第2頸椎の役割は、ファインコントロール(微細制御)だといえます。体の平衡感覚をつかさどる脳の前庭や目と協調し、頭の位置を細かく調整するのが仕事です。わずかに傾けたり少しだけ回旋したりする、といった動きを精密に制御することができるのです。

 そして下のほうにある頸椎の役割は、ロードベアリング(荷重支持)です。こちらは、首から肩にかけての広い筋肉である僧帽筋の上部や、首の後ろ側にある板状筋、首の横側から肩甲骨の上部へとつながる肩甲挙筋といった筋肉と協調し、ボウリングの球ほどの重さがある頭部を安定させ、姿勢を保持するのが仕事です。

 頸椎には2つの顏があることを理解しておくと、不調に対処するときにも役立ちます。例えば、デスクワークが続くと頭が痛くなることがありますよね。そんなとき私は作業の手を止めて、ほんの小さく「うなずき」や「イヤイヤ」の動きを繰り返します。これだけで症状が軽くなることがあります。

デスクワークが続いて頭が痛くなってきたら、「うなずき」と「イヤイヤ」の動きを繰り返そう(『すごい頸椎』より。イラスト=内山弘隆)
デスクワークが続いて頭が痛くなってきたら、「うなずき」と「イヤイヤ」の動きを繰り返そう(『すごい頸椎』より。イラスト=内山弘隆)

 デスクワークで長時間、同じ姿勢でいると、上のほうの頸椎をほとんど動かさない状態が続くので、目の動きや脳の働きにも影響が出ます。頭の位置などの正しい情報が受け取れなくなった脳がパニックを起こし、頭痛や眼精疲労、めまいといった症状が現れます。

 こんなとき、「疲れたなぁ」と思いながら、首を回したり、肩をもんだり、ストレッチをしたりする人もいるかもしれません。しかし、頸椎のしくみから考えれば、やるべきことは別にあるのです。

 「うん、うん」と小さく頭を上下させる「うなずき」の動きは、頭蓋骨と第1頸椎が連結している関節が担っています。また、「イヤイヤ」と横に小さく首を振る回旋の動きは、その半分程度が第1頸椎と第2頸椎が連結している関節が担っています。

 「うなずき」や「イヤイヤ」の動きを繰り返すと、上位頸椎に関係する筋肉の緊張がほぐれ、脳にも頭の位置の情報が正しく伝わるようになります。コツは大きく動かさずに細かく動かすこと。視線を1点に固定したまま、1分程度続けます。これを2~3セット行うといいでしょう。

デスクワークで頭が痛くなったら

 頸椎は解剖学的にも、非常に興味深い特徴があります。

 例えば、第1頸椎は、その下にある第2頸椎以降と比べると、かなりかたちが違います。というのも、頭蓋骨という重いものをのせるために、「受け皿」のような形状になっているのです。人体は骨1つとっても、それぞれ役割や形状が決まっており、とてもよくできていますね。

 また、頸椎は背骨である脊椎(せきつい)の一部であり、その下には胸椎(きょうつい)と腰椎(ようつい)があります。頸椎は7個の椎骨が積み上がってできていますが、胸椎は12個、腰椎は5個です。

 脊椎は、場所によって得意な動きと苦手な動きが決まっています。腰の骨である腰椎は、屈曲(前に曲げる)、伸展(後ろに反る)、側屈(上体を左右に倒す)の動作は得意ですが、回旋(ひねる)は大の苦手です。

 そして、さまざまな方向に可動範囲が広いのが頸椎です。頸椎は屈曲(頭を前に倒す)、伸展(頭を後ろに倒す)、側屈(頭を左右に倒す)も得意ですし、回旋(顔を左右に向ける)動作の可動域は90度もあります。

 一般的に、女性は胸椎が硬くなる傾向があります。例えば、後ろを振り向くとき、通常は胸椎をひねってから頸椎をひねりますが、胸椎が硬いといきなり首をひねって振り向こうとしてしまいます。

 つまり、胸椎の動きが悪い分、頸椎ばかりを動かそうとしてしまうのです。そのため、首に負担がかかりやすくなり、これが不調につながる場合があるので注意が必要です。

(写真=buritora/stock.adobe.com)
(写真=buritora/stock.adobe.com)

[日経ビジネス電子版 2026年9月24日付の記事を転載]

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中野ジェームズ修一(著)/日経BP/1870円(税込み)