しつこい肩こり、繰り返される腰痛……。そんな全身の不調の原因が、実は「首」にあるかもしれません。長時間のデスクワークやスマートフォンの使いすぎで首に負担がかかり、それが肩こりや頭痛、腰痛、疲労感などの症状を引き起こしているのです。フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが、「首の骨=頸椎(けいつい)」をケアすることで不調を一掃するメソッドを解説した『 すごい頸椎 首・肩・腰を一気によくする 』から一部を抜粋・再編集してお届けします。今回は、頭を前に突き出す姿勢をやめようと思っても、骨盤が後ろに傾きすぎているとうまくいかないという話です。
頭が前に出るとその重さは6倍にも
前回(参照:長時間のデスクワークで頭が痛いとき、肩もみよりほかにやるべきこと)は、スマートフォン(スマホ)やパソコンの画面を凝視することで頸椎(首の骨)に負担がかかり、それが原因で頭痛が起きてしまったときの対処法についてお話ししました。
それでは、スマホをのぞき込むように使うと、首にはどれぐらいの負担がかかるのでしょうか。首を前に倒す角度が大きくなればなるほど、その負担は大きくなります。図式化してみました。
頭の重さは体重の10%程度なので、体重が50㎏なら約5㎏です。まっすぐ立った姿勢(ニュートラルポジション)であれば、ほぼそのままの重さが首にかかります。ところが、首を15度前に傾けるだけで、頸椎にかかる重さは12㎏ 程度に跳ね上がります。30度では18㎏、60度ではなんと27㎏です。

本来の姿勢ならばスイカ1個分の重さを支えればいいだけなのに、15度傾けるとスイカ2個分、30度ではスイカ3個分、そして60度だと子ども1人分くらいの重さの負担がかかるのです。このように頭を前に突き出した姿勢をとり続けると、体によくないのは明らかでしょう。
頭を本来の位置に戻すにはどうしたらいいでしょうか。コツは、頭をそのまま後ろに引くことです。すると、頸椎の自然なカーブも取り戻せます。一方、あごをギュッと引いて少しうつむくような状態になると、頸椎のカーブは失われたままで、頸椎の深層にある筋肉が緊張した状態になるので注意が必要です。

そして、スマートフォンを持つ位置も上げましょう。位置が低いと、結局、下を向いた姿勢になってしまいます。
骨盤のポジションが鍵を握る
首への負担を考えるためには、頭の位置だけでなく、全身の姿勢も重要です。例えば、ソファや椅子の背もたれに寄りかかり、お尻を前にずらした座り方をする、いわゆる「カウチ姿勢」でスマートフォンを見ようとすると、どんなに頑張っても頭を突き出して頸椎がまっすぐになってしまいます。このような座り方をしている人は多いですよね。

首に負担のかからない姿勢をとるためには、背骨のアラインメントが重要です。アラインメントとは、骨や関節の並び方や位置関係のこと。背骨が正しいアラインメントになっていれば、頸椎も自然なカーブを描くはずです。
先ほどのカウチ姿勢のイラストを見ると、背骨のアラインメントはまったく自然な状態にはなっていないですよね。背骨のアラインメントを本来の自然な状態にするために鍵を握るのは、実は「骨盤」です。カウチ姿勢では、骨盤が不自然に後ろに倒れてしまっています(これを「後傾」といいます)。骨盤が後傾すると、連動して胸椎が丸くなり、そのままではゴロンと後ろに倒れてしまうので、頭を前方に突き出してバランスを取ろうとしているのです。
姿勢正しく座るコツは、骨盤を倒すのではなく、きちんと立てて座ることでしょう。これだけで、首も自然な状態になります。
骨盤の傾きを意識すれば、背骨のアラインメントは自動的に正しくなり、頸椎も自然なカーブを描くようになります。頸椎と骨盤は脊柱でつながっているので、土台である骨盤がよいポジションになれば、自然と頸椎もよい状態になるのです。
「骨盤の正しいポジションがわからない」という人は、その場でまっすぐに立ってみてください。すると、自然に骨盤はわずかに前傾します。腰椎、胸椎、そして頸椎も連動し、自然なカーブを描きます。
これでもよくわからないという人は、壁を背にして立ってみましょう。かかと、お尻、肩甲骨、後頭部を壁につけ、腰のカーブと壁の間が手のひら程度のすき間になるよう、お腹にグッと力を入れて壁に近づけてみてください。こうすると、ニュートラルポジションになります。

立っていても座っていても、骨盤が正しいポジションにあれば頸椎は自然な状態になるということを覚えておきましょう。
[日経ビジネス電子版 2026年9月25日付の記事を転載]
中野ジェームズ修一(著)/日経BP/1870円(税込み)
