「優れたリーダーには共通点があり、それは一部の人の生まれ持った資質やカリスマ性ではなく、身につけられる技術である」と語るのは、『「リーダーシップのベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)の著者として、100冊以上のリーダーシップ・マネジメントの名著を精読した藤吉豊さんと小川真理子さんです。優れたリーダーが持っている「人望」の条件を、100冊の名著のエッセンスから紹介します。

人が動くリーダーの条件とは?

 リーダーの人望に関して名著100冊に3番目に多く紹介されていたのは、「リーダーの影響力は『人間性』で決まる」です。

 人間性とは、「謙虚さ」「誠実さ」「素直さ」といった、リーダーの内面の姿勢です。
 「ごまかさない」「誠実に仕事をする」「間違いを素直に認める」「人の話に謙虚に耳を傾ける」「プライドに固執しない」など、100冊中39冊に、人格や人間性を育むことの大切さが記されていました。

 使われている言葉や切り口はそれぞれ異なりますが、
 「リーダーとして人を動かすには、まず自分のあり方(=人間性)を正すべきだ」
 という共通のメッセージ
が読み取れます。

 では、なぜ多くの本が「人間性」を強調しているのでしょうか。それは、どれだけ戦略や制度が整っていても、実際にそれを実行し、チームを動かすのはリーダー自身だからです。
 リーダーの人間性こそが、
 「この人が言うなら信じよう」
 「この人がやっているなら、自分も動こう」
 と思わせる力になります。

 プレゼンテーションのスキルが高くても、「このリーダーの言葉には心がない」と思われれば、誰も本気では聞いてくれません。
 どれだけ戦略が優れていても、「自分の手柄ばかり追いかけている」と思われたら、部下はついてきません。人間性がともなっていなければ、リーダーとしての信頼や影響力には限界があります。

「重要なことは、スキル系だけいくら高めても、いずれ限界がやってくる、ということです。高めるべきは人間性であり、人間の徳とでもいうべきもの。人間性そのものをしっかり鍛えておくことが大切になるのです」(岩田松雄『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』/サンマーク出版)

「人間は仕事でもって人生を生き抜いていき、仕事のなかで人間形成がなされる。裏を返せば人格が仕事の成否を左右するのである。人間形成、人格形成。そういうことは仕事をやっていくうえでいちばんの基本になる」(野村克也『野村ノート』/小学館)

「外側」に原因を求めない

 たとえば、成果が出ない、人が育たない、組織がまとまらないといったビジネスの課題に直面したとき、人はつい「外側」に原因を求めます。
 「景気が悪い」「部下が未熟だ」「社内制度が整っていない」「時間が足りない」「人が足りない」「情報がない」……。

 もちろん、外部要因がゼロとは限りません。ですが優れたリーダーは、
 「原因は自分の中にあるかもしれない」
 「問題は環境ではなく、自分のあり方にあるのかもしれない」
 と考え、自らの内面を問い直すことから始めます。

 以下に、リーダー本に記されていた「リーダーが人間性を磨くメリット」を整理します。

◆リーダーが人間性を磨くメリット
● 自分の感情を冷静にコントロールできるため、状況に左右されず、常に実力を発揮できる。
●「何を大切にすべきか」「何をしてはいけないか」という判断の軸が明確になり、リーダー自身が迷わず行動できる。
● 目先の成果や損得に左右されず、ブレずに努力を続けられる。
● 知識や能力が多少劣っていても、周囲に安心感や信頼を与え、大きな影響力を持つことができる。
● 部下が「この人のために頑張りたい」と自然に思うようになって、結束力が高まる。

「部下は、人格に難があると感じるリーダーを信頼せず、やがてついていくことをやめてしまう。(略)たとえ大成功を収めても、そのことがもたらすストレスに耐えられる人格的基礎を持たない人間は、やがて悲惨な結末を迎えるという」(ジョン・C・マクスウェル『「人の上に立つ」ために本当に大切なこと』/ダイヤモンド社)

 リーダーの人間性についての記述は多岐にわたりますが、100冊を読み込んでいく中で、とくに頻出していたキーワードが2つあります。
 「謙虚さ」と「誠実さ」です。

 多くの著者がこの2つを「人間性を支える要素」として重視しており、人を動かす力の源(みなもと)として位置づけていました。
 リーダーにとって謙虚さと誠実さが欠かせない理由について、以下に詳述します。

リーダーに不可欠な「謙虚さ」とは?

 謙虚さとは、ただ控えめでいることではありません。「自分の力を過信せず、他者から学び続ける姿勢」のことです。
 以下に、謙虚なリーダーに共通する5つの特徴を挙げます。

◆謙虚なリーダーの5つの特徴
①自分の限界を知っている
 自分の正しさに固執せず、「自分は完璧ではない」「わからないこともある」と認めることができる。
②部下の意見に耳を傾ける
 経験年数や役職にかかわらず、相手の言葉に価値を見いだそうとする。
③成果を部下に譲り、責任は自分が引き受ける
 自分が目立つのではなく、チームを引き立てる。部下を前に出し、自分は後ろから支える。
④学び続ける姿勢を忘れない
 過去の成功体験にあぐらをかかない。書籍を読んだり、セミナーに参加したり、若手から学ぶことを惜しまない。
⑤他人の成果を素直に称賛できる
 嫉妬(しっと)や競争心を交えず、他人の成果を素直に認められる。

「日本人が失ってしまった美徳の一つに『謙虚さ』があるでしょう。つねに控えめに頭を低くし、手柄は人に譲って、得意のときこそおのれを抑制して淡然と振る舞う。そちらこそお先にどうぞと互いに譲りあう、つつましい心。(略)謙虚さに代表される『美しい心』を忘れつつあるのは、この国の社会にとって大きな損失です」(稲盛和夫『生き方』/サンマーク出版)

「どんなリーダーにも、傲慢さとプライドの病(やまい)に侵され、自意識が肥大し、自分を破滅に追いやる危険がある。では、それを避けるには、どうしたらいいのだろう? リーダーシップの葛藤と矛盾を解決する唯一の道は、謙虚でいることだ」(ジェームズ・M・クーゼス、バリー・Z・ポズナー『リーダーシップ・チャレンジ【原書第五版】』/海と月社)

 Apple、Google、Amazonなど、シリコンバレーを代表する企業の経営陣から、「1兆ドルコーチ」と呼ばれたビジネスリーダーがいます。ビル・キャンベルさんです。
 『1兆ドルコーチ』(エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル/ダイヤモンド社)を読むと、ビル・キャンベルさんが「リーダーには謙虚さが欠かせない」と考えていたことがわかります。

「人は自分の欠点について話したがらないからこそ、正直さと謙虚さが必要になる。(略)謙虚さが重要な理由は、リーダーシップとは会社やチームという、自分より大きなものに献身することだと、ビルが考えていたからでもある」

 権限を持つ立場になると、人を評価し、命令し、動かすことができます。しかしそれは同時に、「力で人を動かせてしまう危うさ」もはらんでいます。
 謙虚さを失えば、自分の意見が正しいと錯覚し、ただ命令で動かすだけのリーダーになってしまう。だからこそ、上に立つ人ほど、謙虚さが試されているのです。

「誠実さ」を貫くことで、信頼が築かれる

 誠実さとは、「自分の言葉と行動に責任を持ち、裏表なく、相手に対してまっすぐであろうとする姿勢」です。
 「この人は信じていい」
 「この人は裏切らない」
 そう思わせるのは、日々の誠実なふるまいの積み重ねにほかなりません。

 リーダーシップ論の権威、スティーブン・R・コヴィー博士は、『完訳 7つの習慣【30周年記念版】』(FCEパブリッシングキングベアー出版)で、「誠実な人は信頼される。誠実さは、さまざまな預け入れの基礎になる」と述べ、次のように続けています。

「誠実さとは、自分の言葉に現実を合わせることである。約束を守ること、相手の期待に応えることが、誠実な態度である。誠実であるためには、裏表のない統一された人格がなくてはならない」

 以下に、誠実なリーダーに共通する5つの特徴を挙げます。

◆誠実なリーダーの特徴
①嘘をつかない、ごまかさない
 小さなことでも事実を曲げない。「うまく取り繕う」より、「ありのままを伝える」ことを大切にする。
②約束を守る
 一度口にしたことは、どんな小さなことでも守る。守る自信がないことは安易に口にしない。
③間違いを認め、責任を取る
 自分の判断ミスを部下や環境のせいにしない。言い訳よりも「自分の責任」として引き受ける。
④裏表がなく、言動に一貫性がある
 相手が誰であっても態度が変わらない。言っていることと、やっていることが一致している。
⑤他人を利用せず、尊重する
 部下を自分の目的達成の道具としてではなく、価値ある存在として尊重する。

「『たまにうそをつくくらいは許されるだろう。普段の私は誠実だ』と思っている人もいるかもしれません。(略)人はうそを多くつくほど、罪悪感や恐怖、不安などの感情を覚えにくくなっていきます。つまり私たちは、不誠実で欺瞞的な行動をとるほど、同じことを繰り返しやすくなるのです」(ナイジェル・カンバーランド『ありのままの自分で人がついてくる リーダーの習慣』/ダイヤモンド社)

 「嘘をつかない」「約束を守る」「言い訳をしない」といった誠実で小さな行動を続けることで、「部下が力を貸したくなるリーダー」になれるのです。

先人からの学びとリーダーの人間性

 人格や人間性を高める方法にはさまざまなものがあります。一概に「これ」とは言い切れませんが、多くの経営者が口を揃えて勧めている方法があります。それは「先人に学ぶこと」、つまり、「古典を読むこと」です。

 古典とは、時代を超えて読み継がれてきた人間の知恵の集積です。リーダーとしてのあり方に悩んだとき、判断に迷ったとき、古典はたしかな指針を与えてくれます。
 『論語』『孟子』『貞観政要』『自省録』『ソクラテスの弁明』『言志四録』(幕末の儒学者・佐藤一斎が説いた人物修養の語録)などの名著に触れると、「人間としての正しさ」を考えるヒントが得られます。

 リーダーとしてのあり方は、地位やスキルではなく、日々、自分の内面とどう向き合っているかによって決まるのです。

(写真:taka/stock.adobe.com)
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藤吉豊、小川真理子(著)、日経BP、1870円(税込み)