「優れたリーダーには共通点があり、それは一部の人の生まれ持った資質やカリスマ性ではなく、身につけられる技術である」と語るのは、『「リーダーシップのベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)の著者として、100冊以上のリーダーシップ・マネジメントの名著を精読した藤吉豊さんと小川真理子さんです。リーダーが学び、成長し続ける方法を、リーダー本の名著100冊から紹介します。
「学び」を止めた瞬間、成長も止まる
リーダーシップの本をひもとくと、多くの名著が異口同音に「学ぶことの大切さ」を説いていました。自らの可能性を引き出すとともに、部下を成長させ、チームをさらなる高みへと導くためには、リーダー自身が研鑽(けんさん)を続けなければなりません。
「九〇人のリーダーに、組織を動かすために必要だった資質は何かとたずねたところ、(略)彼らが語ったのは、粘り強さと自己認識、リスクを取る勇気と失敗を受け入れる覚悟、コミットメント、一貫性、そして挑戦だ。なかでももっとも多くのリーダーが口にしたのは、学ぶことの大切さである」(ウォレン・ベニス、バート・ナナス『本物のリーダーとは何か』/海と月社)
リーダーの学びとして、5つの目的が紹介されていました。
(1)時代の変化に対応するため(同じやり方では通用しない)
昨日までの成功法則が明日も通用するとは限りません。新しい知識を取り入れなければ、時代に置き去りにされてしまいます。
「勉強をしなければ、現状の視野と器の中で決断し、組織を動かし、実行するしかない。つまり、今までと同じやり方の延長線上で、新たな時代に立ち向かうことになる。(略)すべてがスピーディーに移りゆく時代に、アップデートしていないままの自分で臨んでいたら、どれほど優秀な人でも、やがてついていけなくなる」(ラリー・ボシディ、ラム・チャラン、チャールズ・バーク『ザ・リーダーシップ・マネジメント』/実業之日本社)
(2)部下の学習意欲を高めるため
「リーダーがあれほど学んでいるのだから、自分も学ばなければ」と、部下が自主的に学ぶ意欲につながります。
「部下は、課長の背中を見て育ちます。ここで、課長に期待されるのは、ラーニング・リーダーシップです。どの部下よりも多く学び、積極的に多様な経験を得ようとする態度を見せることが、部下の育成にとって最も有効です」(酒井穣『はじめての課長の教科書【第3版】』/ディスカヴァー・トゥエンティワン)
(3)「自分の頭で考える力」を養うため
さまざまな知識を自分の中に蓄積することで、深い思考や的確な判断が可能になります。
(4)具体的事例で部下を動かすため
理論や抽象的な話だけではなく、「こういう事例がある」とケーススタディを示すことで、部下は納得して行動できます。
(5)慢心を防ぎ、謙虚さを保つため
学び続ける姿勢は、「自分にも知らないことがある」「まだ改善できる余地がある」という謙虚さのあらわれです。
読書は「習慣」にする
学びには、セミナーや資格取得、現場経験、メンターからの助言など、さまざまな手法があります。その中でも、100冊のリーダー本でもっとも頻繁に語られていた学習法が「読書」です。
リーダーが直面する課題の多くは、過去の偉大なリーダーたちがすでに経験し、解決の糸口を見つけています。
読書とは、「先人の頭脳や体験に直接アクセスする」行為です。1冊の本には、著者が何十年もかけて培った経験や知見が凝縮されています。それをわずかな時間とコストで学べるという点で、費用対効果の高い学びの手段といえます。
とはいえ、ただ読むだけでは、学びにはつながりません。読書の効果を最大化するためには、「何を読むか」「どう読むか」が重要な視点です。読書の効果を最大化するための7つのポイントを紹介します。
(1)多読よりも、良書を選択的に読む
良書とは、「多くの人に好影響を与えた評価の高い本」「長い歴史の中にも埋もれなかった本(古典など)」です。流行や話題性に飛びつくよりも、自分の課題や関心に合った本を見極めて選ぶことが大切です。
学びの質は、読んだ本の冊数で決まるわけではありません。たった1冊でも、思考や行動を変える力を持つ本に出合えれば、それは大きな学びになります。
● 信頼できる書評家のおすすめ本を読む。
● 立ち読みをして中身を確認する。
● 作家とテーマで選ぶ(先端情報を学ぶなら◯◯◯◯さん、歴史観を学ぶには◯◯◯◯さん、など)。
「ぜひ書店に足を運び、本をペラペラとめくってみてください。その上で、良さそうなものを迷わずに購入し、そこから『ヒント』を1つでも2つでもいいので、ピックアップしてみてください。きっと、解決の扉に早くたどり着くことができるでしょう」(伊庭正康『できるリーダーは、「これ」しかやらない』/PHP研究所)
(2)著者の主張を否定しない
最初から「自分ならこうする」「自分の経験だと違う」と著者の意見を否定せずに、まずは、「著者の考えの把握」に集中します。何を伝えたいのか、なぜそれを主張するのか、どのような経験や根拠からその考えが生まれたのかの理解に努めましょう。
(3)自分の頭で考える
相手(著者)の考えを理解した上で、自分の経験や知識と照らし合わせていきます。自分なりの問いや仮説を持って読むことで、深い学びが得られます。
「本を読むというのは、ただやみくもに頭の中に知識のバベルの塔を構築することではなく、思想・知識・洞察・確信を融合し、ひとつにまとまった良識や正しい判断や行動に結びつけていくためのものです。まず自説を立てて、それを強化し補強するために読書をして、自分の頭で考えるということが肝要」(堀内勉『読書大全』/日経BP)
(4)部下と共有する
読書で得た気づきをチーム内で共有することで、学びの連鎖が生まれます。「この本のこの部分が心に残った」と伝えるだけでも、部下にとっては新たな視点につながります。
(5)やる前に読むだけでなく「やったあと」にも読む
行動後に本を読み返すと、自分の行動が間違っていなかったか(間違っていたか)の再確認ができます。
(6)原典や原書にあたる
哲学書や古典は、訳によって意味合いが変わることもあるため注意が必要です。翻訳書や要約版だけでなく、原典や原書に触れることで、著者の意図がより鮮明に理解できます。
(7)座右の書を何度も繰り返して読む
座右の書とは、繰り返し読む価値のある、人生や仕事の指針となる本のことです。1度読んだだけでは理解できなかったことも、立場や経験が変わることで新たな気づきが得られます。
知識は行動に結びつけて初めて血肉化する
知識はただの情報にすぎません。行動に移すことで、知識は現場で使えるノウハウになります。
行動を通じて知識を試し、結果をたしかめながら自分の中に定着させていく。このプロセスによって、知識は血肉化されます。
「どうかこれまで学んだことを実行に移し、ご自分の役に立ててください。古い仏教の格言をご紹介しましょう。『学んだ知識を使わないとしたら“知っている”とはいえない!』」(ケン・ブランチャード、パトリシア・ジガーミ、ドリア・ジガーミ『新1分間リーダーシップ』/ダイヤモンド社)
「リーダーシップは実践するものであって、知識を増やすだけでは意味がない」(野田智義、金井壽宏『リーダーシップの旅』/光文社)
たとえば、会議運営に関する本を読んだのなら、次の会議でひとつだけでも実践してみる。1on1の本を読んだなら、まず1人の部下との対話から始めてみる。本を読んで終わりにせず、「この知識を、明日どう使うか」「自分の業務にどのように活かすか」を考え、実際に試してみることが重要です。

藤吉豊、小川真理子(著)、日経BP、1870円(税込み)
