英語力を測る物差しは「何点取れるか」から「何ができるか」に大きく変わる――。そんな時代を先取りし、“今、英語を学ぶ意味”と“AIを使ってAIを超える英語学習法”を解説した『 自分が言いたいことを、英語でもちょっといい感じに伝えられる人がやっていること AIに自分に合った英語の学び方を作らせる技術 』(斎藤広達、石塚浩之著/日経BP)から内容の一部を抜粋してお届けする。第1回は、日本語を英語に変換しようとする人の間違いについて。
「まず日本語で」が妨げに
英語を話そうとするとき、頭の中で何が起きているか、考えたことはありますか。多くの英語学習者は無意識に「まず日本語で考え、それを英語に変換しようとする」というプロセスを踏んでいます。しかし、これが妨げになることがあります。
例えば、向こうに立っている塔と手前にある木を比べ、同じくらいの高さだということを英語で表現する場合、あなたならどう言いますか。
「あの塔の高さはこの木と同じです」
まず頭にこの日本語を浮かべて、これを出発点とする場合、次のような英語を作りがちです。
The height of that tower is the same as this tree.
十分に通じる英語です。けれども、厳密に言えば、比較しているのは「高さ」と「木」ではなく、「塔の高さ」と「木の高さ」ですので、次のように言うと、より正確です。
The height of that tower is the same as that of this tree.
もしかすると、英作文の添削などで、このように指導された覚えのある人もいるかもしれません。しかし、こうなるとやや複雑な構文になるので、人によってはすんなり出てこないのではないでしょうか。
言葉と概念の違いを意識し、切り離す
問題は、この英文を組み立てる際、日本語の「あの塔の高さ」を英語に置き換えようとして、heightを主語にしている点です。次のように言えば、もっと簡単に英語が出てくると思いませんか。
That tower looks as tall as this tree.
日本語を出発点とせず、伝えようとする概念を出発点とすれば、英語として自然な表現になるはずです。
大切なのは、言葉と概念が異なるレベルにあることを意識してみることです。ふだん日本語だけで話していると、言葉と概念の違いを意識することはほとんどありません。何かを考えているときには、常に言葉が浮かんできて、言葉を使うことと物を考えることは同じことのように思えます。しかし、言葉と概念の違いを意識し、あえて両者を切り離すようにすると、もっと自由に外国語を使える場合があることに気づきます。
言語と概念の分離は、ごく初期の通訳研究から見られた発想で、もともとはベテランの通訳者の直観を起源とし、通訳教育における指針として語られてきた考え方です。通訳・翻訳の認知処理について考えるとき、言語と概念の関係をどうとらえ、どう扱うかは、通訳研究者としての立場にも関わります。日本の通訳研究の礎を築いた船山仲他は、同時通訳者としての経験と通訳コーパスの分析から、言語と概念を区別することの重要性を強調しています。
斎藤広達、石塚浩之(著)/日経BP/1760円(税込み)


