親が子どもだった頃の自分の親との関係を見つめ直す必要性を説き、世界200万部のベストセラーとなった『子どもとの関係が変わる自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー著/高山真由美訳/日本経済新聞出版)は、現代の新しい育児書として、多くの共感を呼んでいます。著者のペリー氏は、子どもだけでなく、親自身の感情をきちんと受け止めることが何より大切だと説きます。その理由を、同書の抜粋・再構成から考えます。

子どもの幸せを期待しすぎてはいけない

 子どものために何を望むかと聞かれたら、あなたはおそらく「幸せになってほしい」と答えるでしょう。幸せになるための能力を子どもに望むのは、悪いことではありません。しかし私たちは、この「幸せ」という言葉に様々なものを盛り込みすぎていないでしょうか。

 幸せは、他のすべての感情と同じく、訪れては去っていきます。もし常に幸せだったら、比較できる精神状態を経験したことがないせいで、自分が幸せかどうか分からないはずです。子どもが幸せでいるためには、親が子どものすべての気分を受け止め、子どもが経験している世界のすべての側面を受け入れる必要があります。楽しいことばかりではありません。

 叱りつけたり、気をそらしたりして、無理やり幸せにすることはできません。子どもがどんな経験をしようと、それをどう感じようと、あなたが子どもを愛して受け入れれば、子どもは幸せになる能力を身に付けます。これは子どもだけでなく、あなた自身についても同じです。親も自分で自分を、自分のすべての気分を、受け入れる必要があるのです。

 私は12歳のとき、親の友人に、幸せな子ども時代を過ごしているかと尋ねられたことがあります。私は「ううん、そうでもない。特に幸せとは思ってない」と答えました。父がこれを小耳にはさみ、怒って私をとがめました。「ばかなことを言うな。おまえは素晴らしく幸せな子ども時代を過ごしているだろうに」。怖くはあっても愛する父親にこう言われたので、私は自分が間違っているのだろうかと思い、混乱して、自分の気持ちに確信が持てなくなりました。

 親は、自分を幸せにする物事は当然子どもも幸せにすると考えますが、必ずしもそうではありません。また、子どもが不幸せに見えれば、何かを失敗したように感じるかもしれません。そんな居心地の悪い思いをするよりは、私の父のように子どもを叱って、幸せであると感じるように無理強いしたくなるかもしれません。

 当時の私に今の知識があったなら、父に否定されたとき、自分がどう感じているか筋の通った説明ができたはずですが、そのときは頭がぼんやりしてよどんだ空気に包まれただけでした。何かを感じているのに、おまえはそういう感情は持っていないはずだと決めつけられたせいで、混乱したのです。そのよどんだ空気のなかには恥ずかしさもありました。なんとなく、自分が間違えてしまったような気がしたからです。

子どもが幸せでいるためには、親が子どものすべての気分を受け止める必要があります(mdesign/stock.adobe.com)
子どもが幸せでいるためには、親が子どものすべての気分を受け止める必要があります(mdesign/stock.adobe.com)
画像のクリックで拡大表示

 父は私とつながりを築くチャンスを逃しました。口を挟んだあの瞬間ではなく、客人が帰った後に。私がどう感じているか、父は私に尋ねることもできたはずです。そしてその答えがどんなものであろうと、自分への攻撃と受け取るべきではありませんでした。私が感情を正確に言葉で表すのを手伝い、私の見方で世界を眺めてみればよかったのです。

 父が世界の見方を変えるべきだったと言っているわけではありません。ただ、私のものの見方、私が自分自身を見るときのやり方を認めて受け入れる努力はできたはずです。

どんな感情も、まず受け止める

 子どもの悲しみ、怒り、不安を、矯正すべきネガティブな感情として扱うのではなく、子どもについてよく知るチャンス、つながりを築くチャンスと捉えてみれば、親子の結び付きを深めることができるでしょう。そうなれば、子どもが幸せになる能力をより大きく伸ばせます。

 例えば職場から帰宅したあなたが、パートナーに「今日はひどい1日だった」と言ったとします。そのときの反応が「言うほど悪くないんじゃない?」だったら、自分がきちんと受け入れてもらえているとは感じないはずです。追い払われたようにさえ思うかもしれません。こういう反応が日常茶飯事であれば、何も言いたくなくなるでしょう。

 そうではなく、パートナーが「もっとその話をして」と言ってくれたら、上司がひどい態度だったことや、上司の不注意のせいですべての仕事をやり直さなければならなかったことを話せたはずで、さらに相手が「ひどい1日だったと思うのも無理はないね」と言ってくれていたら、あなたは少し気分が良くなったかもしれません。

 反対に、もしパートナーが「つまりあなたがやるべきことは……」などとアドバイスを始めたら、たぶんあなたはもっと気分を害したでしょう。あるいはパートナーが話をそらそうとしたら、話すのをやめてしまうかもしれません。これ以上言ってなんになる? と思うからです。相手の注意をそらそうとする言動は、一時的に不満を忘れる助けにはなるかもしれませんが、きちんと受け止めなかった感情は後になって戻ってきます。

 覚えておいてください。乳児でも、子どもでも、成人した子どもでも、あるいはパートナーでも、苦しい気持ちを打ち明けてきたら受け止めることです。かえって苦痛を悪化させてしまうのではないかと思うかもしれませんが、実際には相手が自分の感情と向き合うことを助け、相手の気持ちを楽にできるのです。

子どもの悲しみ、怒り、不安を、子どもについてよく知るチャンス、つながりを築くチャンスと捉えましょう(Elena Karetnikova/stock.adobe.com)
子どもの悲しみ、怒り、不安を、子どもについてよく知るチャンス、つながりを築くチャンスと捉えましょう(Elena Karetnikova/stock.adobe.com)
画像のクリックで拡大表示

 学校でひどい1日を過ごした子どもに同情するのは容易かもしれません。しかし、子どもが言っていることがどうしても承服しがたいことだったらどうでしょうか? 例えば、「赤ちゃんが嫌い。病院に返してきて」とか。

 実はこういうときこそ耳を傾けて理解に努め、子どもの感情をありのままに受け入れることがいっそう重要なのです。例えばこうです。「そういえば最近、あなたと2人だけで過ごす時間があまりないものね。赤ちゃんにいなくなってほしいと思うのも無理もないよ」「みんな赤ちゃんにばかり話しかけて、あなたにあまり関心がないように見えるのは面白くないよね」

 「お兄ちゃんになって、どんな気持ち?」と尋ねてもいいでしょう。そしてどんな答えでも受け入れましょう。きょうだいを好きになってあげてね、などと言ってはいけません。子どもが自分の気持ちを自覚しているとき、必要なのはその感情の安全な受け皿です。

世界46カ国200万部のベストセラー

「心を揺さぶられた」「涙なしで読めない」「子育て全般が変わった」……。世界中から共感の声、続々! 自分の親との関係を見つめ直し、感情を受け止めれば見えてくる子どもが幸せになるための心がけ。

フィリッパ・ペリー著/高山真由美訳/日本経済新聞出版/2420円(税込み)