親が子どもだった頃の自分の親との関係を見つめ直す必要性を説き、世界200万部のベストセラーとなった『子どもとの関係が変わる自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー著/高山真由美訳/日本経済新聞出版)は、現代の新しい育児書として、世界中の親たちの共感を呼んでいます。今回は、親子の「対話」が難しいときの原因とその対処法について、同書の抜粋・再構成を基に考えます。
「対話恐怖症」をどう克服するか
あなたは子どもからの影響を自然に受け入れられるでしょうか。子どもの話を聞き入れ、それに反応することが、特に意識しなくても簡単にできますか?
すべての親にそれができるわけではありません。自分のなかに眠るその能力を意識的に働かせる必要がある人もいます。自分の子どもから影響を受けることに抵抗がある人もいるでしょう。これは「対話恐怖症(ダイアフォビア)」と呼ばれる症状で、人から影響を受けること、「される側」になることが苦手なのです。
私たちには、自分が幼いときにされたことを人に対してする傾向があります。このため相手に反応するという、持って生まれた自然の能力が鈍くなっていることもあります。乳幼児の頃に、衣食住などの実際的な面ではきちんとケアされながら、相互関係の成立するやりとりは経験してこなかった人もいます。
自分の感情を真剣に受け止めてもらえず、「もの」に近い存在と見なされてきたなら、1人の人間ではなくただの「赤ちゃん」や「子ども」、「多くの子どもたちの1人」として扱われてきたなら、そして大人に影響を与えることを許されてこなかったなら、その人にはやや対話恐怖症の傾向が見られるかもしれません。
乳幼児にとって、相手から反応してもらいたいと思うのは「欲求」ではなく、「必要」なことなのです。子どもの泣き声や、視線や、順番にやりとりをするゲームに親が反応しなかったら──子どもが求めるギブ・アンド・テイクの関係で、親が自分の役割を果たさなかったら──子どものなかに不安定な、あるいは回避型のアタッチメント(愛着)や、そこから生じる特性を育ててしまう危険があります。そうなると、健全な人間関係を築くことが難しくなります。
もし自分に対話恐怖症の傾向があると感じても、自分を責めたり、恥ずかしいと思ったりしないでください。ギブ・アンド・テイクの邪魔になっている行動を変えて、子どもに調子を合わせてみましょう。問題に気づき、正面から取り組んだことを誇りに思ってください。
他の人の対話恐怖症のほうが目につきやすいこともあります。相手が乳幼児でも、ティーンエージャーでも、大人でも、ギブ・アンド・テイクの関係を築くことになんらかの抵抗を感じるなら注意が必要です。あなたが一方的に話をしているようなら気をつけてください。自分の思い込みにあらがって、子どもが必要とする双方向のやりとりを心がけてください。
ここまで読んでこられた読者のなかには、後悔に満ちた悲痛な気持ちになっている人もいるかもしれません。しかし、「もう遅すぎる。私は対話恐怖症で、そのまま子どもと接してしまった」などと思わないでください。
あなたと子どもの間には独自の結び付きがあり、それをより良いものにするための取り組みはいつだって始められるのです。子どもの話をよく聞くようにするとか、子どもの見方で世界を見てみるとか、子どもが自分とは別の人間であることを受け入れるとか、子どもからの影響を受け止めるといったことはいつでもできます。
もう大人になっていたとしても、親から対等な存在と見なされたり、親に理解してもらえたりすることには大きな意味があります。もちろん、子どもが大人になる前に断絶を修復したっていいのです。
今まで子どもを払いのけるようなまねをしてきたと思うなら、それをやめればいいのです。完全にあなたのものの見方を変えるべきだとか、子どもの言うことだけを聞き入れるべきだなどと言っているわけではありません。しかし、子どものものの見方も、あなたのものの見方と等しく価値があることを忘れないでください。
ここで、42歳のジョンのケースを見てみましょう。
小さな行動の積み重ねがもたらす大きな変化
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ついこの間、「あなたって人から何か言われることに耐えられないのね」とパートナーに言われました。ひどくショックでしたが、よくよく考えてみれば、何か知らないことがあると自分は心底恥ずかしくなるのだと気がつきました。「あなたのキャッチフレーズは『知ってるよ』で決まりね」とも言われました。確かに、私はその言葉を頻繁に使っていました。本当に知っているときも、実は知らないときも。
その後、父を訪ねました。たくさんの飲み薬がごちゃごちゃになっていたので、いつどの薬を飲めばいいか分かるように、父のために表を書きました。すると父は皮肉な口調でこう言うのです。「86年も生きてきたのに、おれが薬瓶のラベルの読み方を知らないとでも思っているのか、ええ?」
父も自分が知らないことを人から言われるのが大嫌いなのだと、そのとき気がつきました。率直に言って、父のこういう態度が昔からずっと私を傷つけてきたのです。適切な返答はこうでしょう。「表にしてくれてありがとう、ごちゃ混ぜになりそうだったんだよ」。
しかし父は人から、とりわけ息子から何かを指摘されることに我慢がならないのです。私はとうに40を過ぎましたが、父にとっては今でも小さな男の子なのです。
それから、私自身、自分の息子の話をちゃんと聞いてこなかったことに気がつきました。私が知らないことについて息子が語れるとは考えたこともなかったし、息子にも私の「知ってるよ」という口癖がうつりかけていました。
パートナーの助けを借りて、もっとオープンに人の話をよく聞くように、知らないことがあっても恥ずかしいと思わないようにしようと努めました。今では息子にもいろいろなことを教えてもらい、見下すような態度を取らないように気をつけています。親子関係が本当に変わってきましたよ。これまでは息子のためのスペースがなかったのです。
コミュニケーションは私から息子へ、教師から生徒へ、一方通行でいいと思っていたのですが、今では息子が自分を見せるためのスペースを残しておくことを覚えました。息子がどんな人間か、父親として知っていると思い込むのではなく、積極的に知ろうとするようになりました。
これまでの私はよくいる古くさい男で、人の指示に従うのが嫌いでした。自分が知らないことを他人から言われると耐えられなかったのです。それが今では、いつも誰かの指示をあおいでいます。自分の無知を指摘されれば相変わらず恥ずかしく思いますが、恥のせいで好奇心を押し殺したり、息子の話を聞かなかったりするのはもうやめました。
だからといって身を滅ぼすわけではありません。むしろその反対です。それに気づいてから、息子との距離がずいぶん縮まったように感じています。
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ときどき、変化を起こすことを強く恐れる人がいます。変化というのは、例えば対話恐怖症にあらがう決心をすることで、ジョンがしたのもこれでした。実際には、小さな行動の変化が大きな利益をもたらすのです。
「心を揺さぶられた」「涙なしで読めない」「子育て全般が変わった」……。世界中から共感の声、続々! 自分の親との関係を見つめ直し、感情を受け止めれば見えてくる子どもが幸せになるための心がけ。
フィリッパ・ペリー著/高山真由美訳/日本経済新聞出版/2420円(税込み)


