歴代のプレイステーションの開発責任者をしていた茶谷公之さんは、いいものをつくるためには、仲間の存在や雑談がとても大切だと言います。仕事ができる人にはどんな仲間がいるのでしょうか。新刊『 創造する人の時代 』から抜粋し、紹介します。
(前回「 チャンスをつかめる人とそうでない人の2つの違いとは 」から読む)
チームの意思疎通はみんなが思っている何倍も大事
ものをつくる場合、誰かとチームをつくることが多いでしょう。一緒に働く場合、特にプロダクトやサービスを共に「つくる」ときに気をつけなければいけないのは、「前提を共有できているか」です。
自分がしっかり伝えたと思っていても、相手が違う解釈をしているケースもよくあります。こちらの意図がしっかり伝わっているのか常に確認しておかないと、プロダクトやサービスがある程度できあがってからズレに気づくという事態を招きかねません。早い段階で意識のギャップを埋めないと取り返しのつかない事態になってしまいます。
特に日本人同士では「そこまで言わなくてもわかっているよね」ということを積み重ねてしまい、後の祭りになることがあります。どのようなプロジェクトも時間との闘いです。時間がないときこそ意思疎通を徹底しましょう。
ズレに気づくヒントは間違いなくあります。何気ない会話や議論で「あれ? なにかかみあわないな」と思うときがあるはずです。その違和感を決して見過ごさないことです。相手の発言に違和感があれば、「なぜ相手がそう答えたか」を考えてみてください。その答えの背景が見えてきます。なぜそう理解しているかを推測しながら、改めて話してみると認識の違いの原因にたどり着くでしょう。
ここで言ってはダメなのは「わかっている?」「理解しているかな?」のような問いです。というのも、「わかっている?」と聞かれて「わかりません」と答える人は非常に少数です。私の経験上、多くの人は「理解したと思います」「大筋はわかりました」と答えます。でも、こう答える人の大半はわかっていません。
「理解したと思います」はあくまでも聞き手の主観の返答です。こちらが意図した通りに理解してくれているかはわかりません。ですから、「ちゃんと理解してもらえたかな?」と自分の中で意識しておくのが重要な姿勢になります。
雑談は、アイデアをブラッシュアップするための重要な要因
社会人になって最初によく言われるのが「報連相」の重要性です。報告、連絡、相談です。ただ、私が誰かに言われて強烈に残っているのが、「報連相よりも、雑相をしろ」です。雑談、相談です。
というのも、報告と連絡は簡単にできても、「相談しろといわれたところで、気軽に相談できないよな……」というのが多くの人の本音ではないでしょうか。雑談できる関係がないと相談しにくいのが現実です。
雑談できる関係を構築しておくことは仕事を円滑に進める上で欠かせません。特に何かを「つくろう」とする人にはとりわけ重要になるはずです。イノベーションの種は誰かひとりのアイデアというよりは、いろいろなものの組み合わせだったりします。
例えば、電球を発明した人はエジソンといわれていますが、あれは正確ではありません。フィラメントのある電球の原理すら発明していません。彼は「フィラメントの材料を改良し、実用的な電球を発売した人」というのが正しい理解です。発明は時空を超えた多くの人のコラボーレーションの歴史です。
「つくる」現場にはこうした事例が多くあります。本人は重要だと思っていないけれども、他の要素と掛け合わせると大化けする可能性に満ちた技術が転がっています。ここで、雑談が重要になります。自分が面白くないと思っていても、相手にとっては大変面白く、雑談の中でアイデアがブラッシュアップされていくことがあります。
ですから、部署どころか会社にもかかわりなく、多くの人と雑談してください。私は今でも退社したソニーや楽天グループの人と食事に行きます。別に旧交を温めているわけではありません。大半は同じ部署になったこともありません。ただ、同じ会社にいたから状況はよくわかっていますし共通の知人もいます。気軽に雑談できるわけです。
今の時代は雑談がしやすい環境です。今ではSNSがあります。特に、Facebookは「おじさんSNS」といわれますが、ある程度顔が見え、情報量もまとまっており、近況を知るには適しています。Facebookでつながっている人が面白そうなことをシェアしたり、情報を探したりしていたら、Facebookで気軽に雑談したり、話が盛り上がれば会ってみるなどするといいでしょう。
仕事をするときに「本音で」話せる相手がいると強い
ここまで、チームでの意思疎通の大切さを取り上げてきました。チームは、それぞれジャンルの違う専門家でできているはずです。そうすると、「このままではまずい」という状況が訪れたとしても、自分ひとりでは意思決定できないときもあるはずです。
こういうときのために、自分では判断が難しい場合に助言をもらえる集団、ブレインプールを持っておくことをおすすめします。これはもちろん、オフィシャルな集団ではありません。むしろ、堅苦しくなく気軽に聞ける人を何人かそろえるイメージで考えてください。
人間はフォーマルな場でフォーマルに相手に聞かれるとフォーマルな返事をしがちです。「あるべき姿」を過剰に意識して回答してしまう傾向にあります。例えば人間ドックの際の事前のアンケートなどを思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれません。実態よりも過少申告してしまった経験がある人はいるはずです。
ですから、会社で何かを聞きたくても、急に聞いたら相手も緊張します。もしあなたが目上の立場でしたら、なおさらです。ありきたりな答えしか期待できません。重要なのは本音で答えてもらえる関係を持っておくことです。
これは社内の人間に限ってのことではありません。「みんなはこう言っていますけど、僕はこう思います」と言ってくれる人をひとりでも多く持つ。それにつきます。もしかしたら「どうすればそうした仲間をつくれるのか」と思われる人もいるかもしれません。これは簡単です。
あなたが、常日ごろから本音を語れる人であればよいのです。誰かに「どう思うか」と聞かれた際に、本音を共有するように心がけましょう。そうすると、おのずとあなたに対しても本音で語ってくれる人が増えるはずです。
まず、自分が判断できることと、できないことを見定める。そして、判断に迷ったら、気軽に聞ける仲間を持つ。すべてを自分でカバーするのは難しい時代に、仲間を「つくる」ことは欠かせないインフラになります。
茶谷公之(著)、日経BP、1760円(税込み)


