仕事が忙しくて新しいことに挑戦できない、子育てに追われて自分の時間がない……「時間」に悩む人への特効薬がある。経営者、コンサルタント、著述家、講演家と一人何役も軽々とこなし、難関の国家資格も取得。そんな時間管理の達人が教える「時間リッチ」になるヒント。今回は「時間がないからやりたいことができない」人へ。日経ビジネス人文庫『やりたいことを全部やる!時間術』(臼井由妃著)から抜粋・再構成してお届けする。

時間に関する大きな誤解

 「仕事が忙しいから、資格を取るための勉強なんてできない」
 「家事と育児で手いっぱいだから、趣味に時間を割くなんてあり得ない」
 「今でさえ時間がなくて大変なのに、これ以上することを増やしてどうするんだ」

 この記事をお読みの読者の方も、一度はこんなセリフを口にしたことがあるのではないですか?
 そして「何かをやりたい」けれど「時間がないからあきらめる」、あるいは「何かをやる」ために「今やっている何かをやめる」という決断をされているのではないでしょうか。

 これは一見、理にかなっているように見えます。そして「何かをやらない」「何かをやめる」ときの、格好の言い訳として重宝されます。

 ここが大きな誤解です。こういう考えをしている間は、いつまでたっても時間はあなたの自由にはなりません

「あれも、これも」でうまくいく

 結論からいいましょう。

 いつも「時間がない」と嘆く時間貧乏の多くの方が、誤解していること。それは「やることがたくさんあるから、時間が足りない」、あるいは「やることを減らせば、時間は増える」と考えていることです。

 「時間がないから○○ができない」「△△をやめれば□□をする時間ができる」という「引き算の発想」は、タイムマネジメントにおいてはキッパリと捨ててください。

 そして「あれをやるなら、これをやらない」という「あれか、これか」の考え方ではなく、「あれも、これも」という「足し算の発想」に切り替えるようにしてください。

 これが、時間貧乏から時間リッチに変わるための大原則です。

「仕事ができる人」の時間の使い方

 嘘だ! 「あれも、これも」なんて考え方をすれば、全部中途半端になる!
 そういう反論も聞こえてきそうですね。

 でも一度冷静になって、周りを見渡してください。そして、あなたが「あの人は仕事ができる」という人を探してみてください。

 その人たちは、時間がないからといって、新しい仕事を断っていますか?
 毎日残業が続くから自分の好きなこともできない、とグチをこぼしていますか?

 きっとそうではないでしょう。新しいこと、自分のやりたいことに、積極的にチャレンジしているはずです。そう「あれも、これも」と時間を足し算の発想で考える人です。

 そして「時間がない」「好きなこともできない」とグチをこぼしているのは、むしろ「あれか、これか」と、引き算の発想で時間を考えている人ではないでしょうか。

 ここを理解していただければ、それだけであなたは、大きく時間リッチに近づくことになるでしょう。

「時間の密度」が3倍上がる

 人には平等に24時間という限られた時間しかありません。これはどうやっても動かせない事実です。でも、1時間の時間密度を2~3倍にすることができれば、同じ24時間の中で人より2~3倍のことができるようになります。

 「あれも、これも」という足し算の発想が、時間リッチにつながる第一の理由は「あれも、これもやることによって、時間密度が高まる」からです。

 私は自分が見聞きしたことや経験したことを多くの人に伝えたいので、講演や執筆活動には積極的に取り組んでいます。できるだけ多くの人に生の声をお伝えしたいから、地方にもよく出張して講演させていただきます。

 でも、だからといって他の仕事を疎(おろそ)かにすることはありません。講演や執筆と社長業をキチンと両立させるために、その方法を必死で考え、実践してきたからです。

 「社内の業務をいかに円滑に進めるか」
 「講演の内容をいつ考えるか」
 「原稿をいかに短時間で執筆するか」

 同じ時間の中でこれまで以上の仕事量を、同じクオリティーでやるために、必死で知恵を絞り、試行錯誤を重ねました。

 そう、「どうすれば時間密度が高くなるのか」を真剣に追求し続けたのです。だからこそ今、いろんなことが一度にできるのです。

時間に追われている人はまず発想を転換しよう(写真:Hiroyuki/stock.adobe.com)
時間に追われている人はまず発想を転換しよう(写真:Hiroyuki/stock.adobe.com)
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「忙しい人に仕事を頼め」の理由

 また、時間を効率よく使うことを必死で考えて実践すると、自分の中に時間活用のノウハウが蓄積されます。
 そして、少し大げさにいえば「やることが増えたからこそ、他の業務の取り組みがより効率化される」ことになります。これが「仕事密度が高まる」「時間密度が高まる」ということです。

 昔から「忙しい人に仕事を頼め」といわれますが、理屈はこれと同じ。多忙だからこそ、時間を効率よく使う知恵も生まれてくるのです。
 できるだけ仕事を減らす引き算の発想だと、こういう知恵は生まれません。

 だから私は「仕事は絶対に断りません」と、事あるごとに宣言しています。
 仕事の量をこなすことが、仕事の質を高めることになり、さらにレベルの高い仕事をこなせるようになる。さらに時間を効率的に使えるようになる=「時間密度が高まる」と確信しているからです。

 「そうはいっても、仕事は量より質が大切。まずは1つの仕事を、時間をかけて丁寧にやるべきだ」と考える人もいるでしょう。

 確かに、仕事には一定のクオリティーが求められます。でも、時間をタップリとかければ仕事の質が高まるというのは幻想。
 かけた時間と仕事の質は、必ずしも比例するわけではありません。

 まずは多くの量を決められた期限内に確実にこなす訓練をし、生産性を高めることで、初めて仕事の質も高まるのではないでしょうか?

お金と時間はケチらない

 マネー雑誌を読んでいて、こんな記事を見かけたことはありませんか?

 ≪主婦の○○さんは節約の名人。テレビを見ないときはコンセントから抜き、買い物はチラシを徹底的に比較してから、開店前に並んで特売品をゲット≫

 ライフスタイルは人それぞれですし、節約することは、それ自体は大変けっこうなことだと思います。でも、もしこの○○さんの目的が「たくさんお金が欲しい」であれば、私は「節約でお金をケチるより、働いたり資産運用をしたりしてお金を殖(ふ)やしなさい」というでしょう。

 さて、ここでなぜお金の節約の話をしたのか。
 それは、時間管理の本を読んだ方の多くが、これと同じような落とし穴にはまっているケースが多いからです。

 「スマホで語学講座を聴きながらネットをチェックして食事をする」
 時間管理の本には、必ずといっていいほどこの手の「○○をしながら○○をして○○をやり遂げました」といった話が登場します。

 一見、時間を賢く使っているように思えます。やっている本人は「時間密度が高い」と錯覚するかもしれません。

 でも本当にそうでしょうか。
 スマホをチェックしながら食事をとり、語学講座を聴くといったことでは、少なくとも語学はほとんど身につかないはずです。

 何かをしながら別のことをするといった「ながら族的時間活用術」は、いまだにまかり通っています。これを否定するわけではありませんが、用法を誤ると、大した成果は期待できないでしょう。

 それどころか、見せかけだけの時間の節約は、時間の使い方が下手な人間をつくり、無駄ばかりの「時間貧乏」を生みます。

 少々きつい言い方をすれば「ケチな時間の使い方」。お金を貯(た)めることばかりに気をとられ、お金を稼ぐこと、殖やすことを忘れてしまうのと同じです。

 「ケチな時間の使い方をする人に成功者はいない」と私は思います。
 だから私は、時間の無駄をなくすことばかりに気をとられません。ある時間の中に、2つも3つもの行為を詰め込むことが「時間密度を高める」ということにはならないのです。

1つの行為に複数の意味

 では、私ならどうやって時間密度を高めるのか。

 「ある行為に、2つも3つもの意味を持たせる」
 「1つの行為を、いくつかの目的のために利用する」

 このように、時間を節約する方法より、時間をより生かす「1粒で何度もおいしい」方法を考えるのです。

 具体的には、こういうことです。
 私は宅地建物取引士(宅建)の資格を持っています。この資格は「自社ビルを持ちたい」という目的を達成するために取得しました。

 でも試験勉強をする際には、「せっかく宅建の勉強をするのなら、いずれは不動産賃貸業や不動産関係の講演・執筆もできるようになりたい」と考えていました。

 こう考えると、同じ勉強をするにしても、得られる成果は2倍になります。となると、勉強のやる気もいっそう湧いてきます。

 事実私は、わずか1カ月ほどの勉強で宅建の資格を無事取得し、資格を生かして好条件でビルを購入、不動産賃貸業や不動産関係の本の執筆まで仕事の幅を広げることができました。
 これが、時間密度を高くする、ということです。

 また、私は地方の講演にも積極的に足を運ぶのですが、ただ行って帰るということはしません。

 経営コンサルタントも生業としているので、できるだけ現場・現地の生の声を知っておく必要があります。ですから、訪問した地方では、必ず地元のデパートや店舗をのぞき、タクシーの運転手さんに話を聞くようにしています。

 これだけで、その地方の景気や住んでいる人の特性が、どんな記事や書籍を読むよりもよくわかります。

 もちろん、そこで得た情報が役に立つ講演が毎回すぐにあるわけではないのですが、ご当地で勢いのあるお店や人気のショップ・飲食店の話は、ブログやメルマガのネタとして翌日にも使えます。

「時間を有効に使う」のが達人

 ここで、整理してみます。

(1)地方の講演に、何の計画も準備もなく、ただ行って帰ってくる
  → 時間のロスが大きい(時間を無駄遣いしている)

(2)地方の講演に行き、往復の新幹線での移動時間を、原稿執筆などの時間にあてる
  → 時間を無駄なく使っている(時間を節約している)

(3)地方の講演に行き、その際に地元の情報を仕入れて将来のコンサルティングに役立て、同時に東京では拾えないメルマガやブログのネタを集めて帰ってくる
  → 時間を有効に使っている(時間密度を高めている)

 あなたは今、(1)~(3)のどこにいますか? (1)の人はもちろん、(2)の人も「時間を無駄なく使っている」と安心するのではなく、「時間を有効に使っているよ」といえる(3)のレベルまで、考え方を高めるようにしてください。

 1粒で2度とはいわず、3度も4度もおいしい状況をつくり出すことがポイントです。

日経ビジネス人文庫『 やりたいことを全部やる!時間術
時間管理の達人が教えるONとOFFのコツ

10万部突破のベストセラー。経営者、コンサルタント、著述家、講演家と一人何役も軽々とこなし複数の国家資格も取得。そんな時間管理の達人が教える「時間リッチ」のヒント集。会議は「1発言1分」が基本、イヤなことは朝イチに……時間と心とお金に余裕ができる!

臼井由妃著/日本経済新聞出版/880円(税込み)