昨今のデータで示された、子どもの「読書離れ」と「本好き」の減少。しかし、「子どもたちは本を読まなくなっている」と断じるのは早計だと、『科学的根拠が教える 子どもの「すごい読書」』の著者で、読書研究の専門家である猪原敬介さんは指摘します。それはどういうことなのでしょうか。そして昨今の傾向は子どもたちにどのような変化をもたらすのでしょうか。連載3回目は「読書格差と能力格差」です。読書離れと本好きの減少が子どもたちに引き起こしている変化を見ていきます。

「子どもたちは本を読まなくなっている」が正しくない理由

  前回記事 では、「過去30年ほどのスケールで見れば、子どもはむしろ本を読むようになってきているが、直近10年で見れば、再び子どもの読書離れが起きている」ということを説明してきました。

 しかし実は、これでもまだ子どもの読書活動全体を正しく捉えているとはいえません。
 なぜなら、まったく本を読まない「不読者」が激増する一方で、1日に平均的に30分以上読書をする「読書家」はあまり減っていなかったり、場合によっては微増さえしているからです。
 要するに、読書活動の二極化が起こっていて、「二極化を伴う読書離れが進行している」がより妥当な見方のように思われます。

 今回は、子どもたちに起こっている読書活動の二極化の実態と、それが子どもたちにもたらす影響について見ていきます。

微減にとどまる「読書家の子ども」 読書格差の実態

 東京大学とベネッセの「子どもの生活と学びに関する親子調査」(ベネッセ教育総合研究所, 2025)のうち、余暇の読書時間が「0分(しない)」「30分」「1時間」の変化を筆者が分析しました。「0分(しない)」の割合は、不読率にあたります。

 ここでは、小学校4~6年生のデータのみ、図1に折れ線グラフで示します。中学校、高校生のデータでも、折れ線グラフの形はおおむね同じです(2021~2022年にかけて調査法の変更があり、「0分(しない)」の増加と「30分」「1時間」の減少傾向が極端に出ていますが、全体的な傾向は変わりません)。

【図1】小学校4~6年生の読書傾向
出所:「子どもの生活と学びに関する親子調査」(ベネッセ教育総合研究所, 2025)から筆者作成
出所:「子どもの生活と学びに関する親子調査」(ベネッセ教育総合研究所, 2025)から筆者作成
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 続けて、2015年から2024年への変化も示しておきましょう。
 小学生(4~6年生)では、

  • 「0分」(不読率):25.7% → 47.7%となり、22.0ポイントの増加。割合でいえば、85.6%の増加
  • 「30分」:20.6% → 16.3%となり、4.3ポイントの減少。割合でいえば、20.9%の減少
  • 「1時間」:9.1% → 6.3%となり、2.8ポイントの減少。割合でいえば、30.8%の減少

 となっています。

 このように、不読率の増加に比べて、「30分」や「1時間」の減少幅が小さいことがわかります。

 中学生でもこの傾向は同じであり、

  • 「0分」(不読率):37.9% → 59.8%となり、21.9ポイントの増加。割合でいえば、57.8%の増加
  • 「30分」:18.7% → 12.9%となり、5.8ポイントの減少。割合でいえば、31.0%の減少
  • 「1時間」:8.9% → 6.4%となり、2.5ポイントの減少。割合でいえば、28.1%の減少

 となっています。

 ちなみに高校生ではこの傾向は見られず、

  • 「0分」(不読率):54.3% → 69.8%となり、15.5ポイントの増加。割合でいえば、28.5%の増加
  • 「30分」:14.8% → 9.4%となり、5.4ポイントの減少。割合でいえば、36.5%の減少
  • 「1時間」:6.9% → 4.6%となり、2.3ポイントの減少。割合でいえば、33.3%の減少

 となっています。不読率の増加幅と「30分」や「1時間」の減少幅にはあまり差が見られません。

 高校生で小学生や中学生と同じ傾向が見られない原因は、大学受験の影響かもしれませんし、不読率がこれ以上高まりづらいほど高水準(2024年:69.8%)になってしまっているせいかもしれません。
 本連載の 1回目 で紹介した学校読書調査の結果でも、高校生は2016~2023年の間は不読率が下がる傾向が見られましたし(ただし、2024・2025年と連続で増加)、最近の高校生の読書行動は、小学生や中学生とはやや異なってきているのかもしれません。

今どきの大学生はどのくらい本を読んでいるのか

 逆に「読書家」が増えている、というデータもご紹介します。大学生のデータなのですが、とても印象的なデータです。

 全国大学生活協同組合連合会は、2024年10~11月に「第60回 学生の消費生活に関する実態調査」を実施しました。全国30大学生協が協力し、11590人の大学生の回答が得られました。

 その中に「1日の読書時間」を尋ねる項目があるので、グラフにしてみましょう。

【図2】大学生の1日の読書時間
出所:全国大学生活協同組合連合会「第58・60回学生生活実態調査」を参考にして筆者が作成
出所:全国大学生活協同組合連合会「第58・60回学生生活実態調査」を参考にして筆者が作成
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 本稿執筆時点で最新の2024年調査によれば、不読である「0分」の割合は45.6%。2011~2012年ごろは35%前後だった不読率が、2016年以降は45~50%程度に上がっていることがわかります。
 しかし大学生の不読率の上昇はここでは主題ではありません。グラフの下のほうにある、不読率以外の折れ線を見てみましょう。

 不読率が高まる一方で、2011年には割合の大きさにおいて第4位だった「60~120分未満」(図2では濃い紫の折れ線)が、2014年に「30分未満(0除く)」を追い抜き第3位になり、さらに2018年には「30~60分未満」をも追い抜き、それ以降はずっと第2位を維持。最新2024年には16.2%となっています。

 2011年から2024年への変化で見ると、

  • 0分(不読):36.7% → 45.6%(8.9ポイントの増加)
  • 30分未満(0除く):15.1% → 7.8%(7.3ポイントの減少)
  • 30~60分未満:19.6% → 10.3%(9.3ポイントの減少)
  • 60~120分未満:14.9% → 16.2%(1.3ポイントの増加
  • 120分以上:5.6% → 7.4%(1.8ポイントの増加

 となっており、「読まない(0分(不読))」と、「とてもよく読む(60~120分未満、120分以上)」の2つのグループが増加する一方、「少し読む(30分未満(0除く)、30~60分)」グループは減少するという、まさに二極化が進行したことがわかります。

世界で、あらゆる世代で広がる「読書格差」 二極化の実態

 大学生ほど明確なデータではありませんが、16~65歳の成人を対象に、31か国・地域が参加する国際成人力調査(PIAAC)というものがあり、そこでも二極化が見られます。

 この調査の質問の1つに「小説やノンフィクションの本を読むこと」について「あなたは日常生活(仕事外)で、どの程度頻繁に行いますか」というものがあります。

 この調査の第1回(2011年実施)と第2回(2022年実施)の日本人データ(それぞれ約5000人が参加)を分析してみました(図3)。

【図3】日本人(大人)はどのくらい本を読んでいるのか
出所:国際成人力調査(PIAAC)の日本人データを基に筆者が作成
出所:国際成人力調査(PIAAC)の日本人データを基に筆者が作成
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 「しない」と回答している人が10年で34.4%から36.9%へと増加しているのに対して、「毎日」は9.8%から9.7%とほぼ横ばいです。まったく読まなくなる人が増える一方、読む人はずっと読み続けている、という構図がここでも見られます。

 さらに、興味深いことにアメリカでも、「2003~2023年の20年間で不読率が12ポイント高まっていたが、読書をしていた人の平均読書時間はむしろ長くなっていた」という報告があります(Bone et al., 2025)。
 この調査では、毎年8000~2万人に「今日1日何をしていましたか?」と質問しており、その中で「趣味での読書」と回答した人の割合が2003年に28%(不読率は72%)であったものが、2023年には16%(不読率は84%)になっていたのです。
 しかし、1分でも読書をしていた人の平均読書時間を見てみると、2003年に1時間23分だったものが、2023年には1時間37分に増加していたのです。

 少なくとも日本とアメリカにおいて、まったく読まなくなる人が増える一方、読む人はずっと読み続けているという「二極化を伴う読書離れ」が起こっているようです。

長期の読書格差が引き起こしうる能力格差

 日本では、すでに小学1年生の段階で15.5%が不読の状態にあり、高校3年生になるころには59.8%が不読になります(猪原, 2022)。一方で、少しでも読書をすると回答した児童・生徒の読書時間は、小学校1年生の時点では「10分」が最多ですが、小学校2年生以降は高校3年生まで変わらず「30分」が最多です。

 例えば、「小学校から高校の12年間を不読で過ごした児童・生徒」と、「その間、毎日約30分の読書を続けた児童・生徒」では、どのような差が生まれるでしょうか?

 読書は短期的には目に見える効果を生み出さないかもしれませんが、長期的には違いが顕在化してくると私は考えています。
 『科学的根拠(エビデンス)が教える 子どもの「すごい読書」』では、ことば・知能・他者への共感といった基礎となる力を読書が形成し、学力・仕事・将来的な心身の健康にまで影響することを説明しています。加えて、「とはいえ、どうすれば子どもが読書をしてくれるか、わからない」という保護者の方のためにも、家庭での実践に役立つ内容を盛り込んだものになっています。ご興味のある方は、ぜひ手に取ってみていただきたいと思います。

 次回は、なぜ二極化を伴う読書離れが起こるのか、そのメカニズムについて考えてみたいと思います。

(写真:iamadhithia/stock.adobe.com)
(写真:iamadhithia/stock.adobe.com)
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■引用文献
ベネッセ教育総合研究所. (2025). 小学生から高校生の10年にわたる追跡調査データから「読書」を読み解く:「読書をしない」子どもは10年前と比べて1.5倍に増加―スマホ時間と読書時間は逆相関関係があり、読書0分の子は語彙力・読解力が低い傾向 [プレスリリース] , 株式会社ベネッセコーポレーション, 10月20日,
・Bone, J. K., Bu, F., Sonke, J. K., & Fancourt, D. (2025). The decline in reading for pleasure over 20 years of the American Time Use Survey. iScience. , 28, 113288.
・猪原敬介. (2022). 小・中・高校生の学校外の読書時間についての横断的・縦断的分析─ 4 時点 3 年間の大規模追跡調査に基づく検討─. SSJ Data Archive Research Paper Series, 80, 140-152.
全国大学生活協同組合連合会. (2025). CAMPUS LIFE DATA 2024.

(図版制作=髙井愛)

本を味方にすると、子どもの人生は豊かになる!!

本が好きな子にも、ちょっと苦手な子にも。本を読めば、将来、直面する「壁」や「迷い」を乗り越えやすくなる。本の効果は、「頭がよくなる」だけではありません。探究心・知的好奇心・思いやり・友達や周囲の大人とのコミュニケーション力…読書の効果を無理なくいいとこ取りするための、科学的根拠が教える読書法!!

猪原敬介著/日経BP/1980円(税込み)