内容紹介

大鵬薬品工業が販売していた抗がん剤UFT(テガフール・ウラシル配合)は、日本でトップの売上げ。注射薬と違い、飲み薬で利用しやすく、一般的に広く使われていた。当時は、告知する習慣もなく、「胃潰瘍です」といわれて飲んでいた患者も多かった。一方、「本当に効くのか?」と、専門医も厚生省も疑念に思っていた。
 ちょうどそんな時に、抗がん剤の開発と審査を同一の人物が行っているなど、非科学的な審査が問題(国立がんセンター汚職事件)となり、また飲んでいる薬がUFTであることを知らされていなかった患者が、ヘルペスの薬を飲んだ結果、副作用の相乗効果で死亡する事件(ソリブジン事件)が発生、抗がん剤のあり方に世間の厳しい視線が注がれることになった。
 そこで、UFTが本当に有効かどうかを確かめるための臨床試験を行うことで、国立がんセンターの医師、厚生省(現:厚生労働省)の意見が一致。初年度1億円の予算で、術後化学療法の有効性、安全性を確かめる試験N・SAS試験が乳がん、胃がん、大腸がんを対象に始まった。

※N・SAS試験は、以下の点で日本の抗がん剤研究の金字塔となった。
 1 統計学的のきちんと設計された日本初の臨床試験
 2 「効いた、効かなかった」の判定に病理医など第3者が参加した日本初の臨床試験
 3「この先生に頼めば効いたことにしてくれる」レベルの医師を排除した

読んでいただきたい方は、患者・家族、若手医師・薬剤師、製薬企業の関係者など。