内容紹介

◆複雑な開発設計をデザインレビュー改革でシンプル化しメリハリを利かせる
◆設計-製造、メカ-エレキ、国内-海外を超えて3Dを活用する13の実例
◆“ものづくりIT”で擦り合わせを支援しグローバルに売れる製品を生み出す

製造拠点の海外進出が続く一方で、単に人件費の安いところに拠点を移すのではなく、米国、欧州、アジアなど各地に存在する顧客に向けて、消費地に近く部品調達コストの安いところで生産する“適地適産”方式が主流になりつつあります。一方で、メーカーが開発設計、生産する製品やシステムはますます複雑化しています。製品は多数のメカ(機械)部品とエレキ(電気)部品、そして制御ソフトウエアから構成されるようになり、その製造工程も複雑で、しかもグローバルに実行するものになってきました。

このような状況で日本の産業競争力を強化するには、日本の組織の持つ高度な調整能力を生かして複雑な人工物の設計力を高めるとともに、グローバルな視点でのプロセス改革が必然といえます。そこで生死を決するのは、日本の擦り合せ能力を支えて強化するITとマネジメントです。

本書第1部では、開発設計の現状と開発設計マネジメント改革の全体像について述べた後、在るべき開発設計の基盤となる「開発設計プラットフォーム」の改革について解説します。中でもデザインレビュー(DR)のプロセス改革が重要であり、多くの企業でともすれば形骸化しがちなDRを有効に機能させるための具体的方法を解説しています。併せて、複雑な製品を比較的シンプルなプロセスで開発可能にする手法SSM(Smart Structure Management)と、設計開発プロジェクトをスムーズに立案、運用する方法も解説します。

第2部では、先進企業において複雑な製品の開発設計業務をいかに進めているかを、3D設計とIT利用の観点から多角的に見ていきます。今日ではITの進化によって、複雑な製品も3Dのデジタルモデルで表現可能です。これを中核とした“ものづくりIT”により、複雑化するメカ、エレキ、ソフトを統合してデジタル3Dモデルで早期に品質を作り込むことが重要になっています。新潟原動機、トヨタ自動車、ニコン、ブラザー工業、アキュセラ、ウシオ電機、東芝での事例を通して解説します。

単に、理想像だけを描いているわけではありません。本書の随所に、設計開発プロセス改革の行き詰まりを防ぐヒントが書かれています。

【推薦】藤本隆宏(東京大学大学院経済学研究科教授 / 東京大学ものづくり経営研究センターセンター長)
著者は、ものづくりITの最先端にいる。先端の人は現場を深く理解し、歴史観を持ち、世界の趨勢を見極める。21世紀の今、経営のグローバル化は当然だが、中国など新興国の賃金高騰が始まった以上、日本の高生産性拠点からの知識移転なしでは世界で勝てない。国内を含む世界中の現場で地道な能力構築を続け、「良い設計の良い流れ」を世界に広げるのが、長期全体最適の経営であり、先端ものづくりITの使命はそれを支援することにある。ところが、世界の流れや現場の実態を見ず、現状を過剰に悲観し、右往左往し、逃げるように新しいITに飛びつく風潮がある。これが良い結果を生まぬことは過去に見たとおりだ。本当に先端にいる人は、もっと堅実に適材適所のITを積み重ねる。そのことを本書で確認していただきたい。