内容紹介
国土交通省河川局などで防災や河川行政の第一線を担ってきた著者が、激甚化する水害や土砂災害のメカニズムと社会に与える影響を解説し、
今後の防災の在り方を提言
地球温暖化や気候変動の影響で、近年、台風やゲリラ豪雨による大規模な水害・土砂災害が頻発しています。
本書は豊富な写真や資料を交えて、最近発生した大規模災害の実例を紹介するとともに、そのメカニズムを明らかにし、社会や経済に与える影響について解説。また、さらなる災害の激甚化に備え、今後の防災の在り方の指針を示します。
■目 次
地球温暖化の脅威に挑む
1章 水害・土砂災害の頻発・激甚化
1-1 近年頻発する大規模な水害・土砂災害
線状降水帯 - 表層崩壊 - 大量の土砂と流木が大きな被害を招いた
重要交通網が寸断され長期間に及ぶ影響
避難遅れで多くの高齢者が犠牲
堤防の決壊により大規模な氾濫が発生
一瞬にして奪われる尊い命
繰り返し街を襲う水害 - 10年間に3度の浸水
深層崩壊と河道閉塞
1-2 海外でも頻発する大災害
大都市ニューヨークの都市機能が麻痺
サプライチェーンの途絶が世界経済に影響
巨大ハリケーンで6000人を超える死者
2章 脆弱な日本の国土
2-1 狭くて急峻、脆弱な地質
2-2 外国に比べて急勾配の河川 洪水時平常時の流量差大
2-3 河川の水位より低い所にある日本の都市
3章 異常気象の発生と地球温暖化予測
3-1 豪雨災害と異常気象
地球温暖化と豪雨災害
地球温暖化が水分野に及ぼす脅威
3-2 国連IPCC第5次報告書
概要
主な予測結果
3-3 パリ協定
米国のパリ協定からの離脱
3-4 日本の取り組み
適応策の充実・強化に向けた提言
4章 水害と闘う 治水の歴史と今
4-1 治水は国の根幹 先人たちの知恵と努力
戦国武将が築いた治水技術
大河の治水は国家安定の礎
近代日本の国力増進 カギは治水事業
4-2 水害は変容する
戦後の荒廃期 大型台風で列島壊滅
高度経済成長期 都市部で水害多発
都市を襲う水害が深刻に
局地ゲリラ豪雨で身近なわが街の川が…
4-3 水害への挑戦 水害対策の今
あらゆる手段を講じて水害を防ぐ
我が国の治水の目標は? 安全性は?
伸び悩む治水予算
4-4 身近な情報で自助・共助
わが家は安全か? 地名や水害痕跡から危険を読む
リスク意識を持つことが自助・共助への備え
リアルタイムの情報収集で被害を最小に
5章 新たなリスク
5-1 顕在化する大規模水害の新たなリスク
多くの犠牲者が発生
膨大な数の住民が長時間孤立
地下鉄等が水没
病院などの入院患者が危険な状況に
サプライチェーンの寸断などで国内外の経済活動に大きな影響
ライフラインの機能停止により都市機能が麻痺
排水ポンプ場の水没による機能停止で浸水が長期化
庁舎の水没により災害時の行政機能が麻痺
6章 これからの災害への備え
6-1 全体最適の視点で「適応策」を
今こそ、国土管理と国土経営に基軸を
ハード対策とソフト対策の融合化・重層化を
全体最適(total-optimization)を目指して
6-2 幅を持った社会システムの構築を
冗長性・代替性(redundancy)
堅牢性(robustness)
復元性(tenacity)
順応性(elasticity、flexibility)
安全・安心システム(securing safety)
6-3 命と暮らしを守るハード対策
気候変動に適応した治水計画の見直し
洪水流量の増大や海面水位の上昇に柔軟に適応できる施設設計
既存施設の機能向上と徹底活用
避難を助ける粘り強い構造の堤防の整備
氾濫水を速やかに排除するための排水対策
河川と下水道の一体的な運用
6-4 命を守るソフト施策
水害・土砂災害リスク情報の提供と活用 ~地域の安全・危険を知る(学ぶ)~
リアルタイム情報の提供と活用 ~今の状況の安全・危険を知る~
避難行動の円滑化 ~命と体の安全・危険を知る~
応急対策活動の円滑化 ~住民の安全・危険を知る~
防災・減災リテラシーの醸成と向上 ~社会・地域の安全・危険を学ぶ~
6-5 ハードとソフトが融合した流域対策とまちづくり
総合的な治水対策
先人の知恵を活かす
災害リスクを考慮した土地利用
災害リスクを考慮したまちづくり
6-6 技術研究開発の推進
これから求められる技術とは
6-7 地域を守るあらゆる力を強化
TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の活動
水防団の活動
建設産業の活動
7章 「水防災意識社会の再構築」に向けて あとがきにかえて