内容紹介
安全で燃えない電池を作る! 元住友銀行副頭取から69歳で起業。エリーパワー社長、吉田博一のリチウムイオン電池開発物語。おすすめポイント
燃えない電池に余生を賭ける!遅咲きの起業家・吉田博一とリチウムイオン電池の物語
■リチウムイオン電池に思いを託し、69歳で起業した元バンカー
スマートフォンから電気自動車、再生可能エネルギーまで様々な蓄電に使えるリチウムイオン電池。大量のエネルギーを蓄えるため、発火のリスクが高い。そのリチウムイオン電池に安全性を兼ね備え、さらに大型化した製品を開発する大学発ベンチャー「エリーパワー」を興したのは、元住友銀行副頭取で当時69歳の吉田博一だった。吉田は元バンカーならではの人脈を駆使し、大企業からの出資を募った。住銀を退いた後、慶応大学のEV開発プロジェクトに資金集めで協力し、開発成功につなげた。
■安全性を最優先させたリチウムイオン電池
吉田にはCO2の排出抑制には再生可能エネルギーや電気自動車の普及が欠かせず、高性能の大型蓄電池が必要になるという確信があった。蓄電の性能向上や軽量化だけでリチウムイオン電池の優劣を決する時代は終わろうとしている。EVはこれから本格的な普及期を迎え、安全性最優先は時代の要請だ。これを先取りし、破損しても燃えたり、COを噴き出したりしないリチウムイオン電池の事業化に余生を賭けた。
■エリーパワーの技術開発の苦闘
2008年、富士フイルムホールディングスによる買収が決まった富山化学工業出身の真田秀夫氏に声をかけ、医薬品製造の思想で電池生産ラインを構築。他に類例のない方式での製造は、全工程が企業秘密で行われた。生産ラインにいるのは電機や科学系の生産技術者だけ。電池のエンジニアはいない。ところが吉田の素人の発想が独自構造を生み出す突破口となり、燃えずに電気を供給し続ける大型蓄電池を生み出すことに成功。早速米軍関係者や自動車メーカーが接触してきた。