内容紹介

ロシアの侵攻が成功すれば、他の強権的指導者も戦争に走るかもしれない。
アメリカが支援したにもかかわらずウクライナが敗れることになれば、中国による台湾攻撃の舞台を整えてしまう可能性さえある。

――本書より
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いま冷戦後世界秩序が揺らいでいる。その元凶は、プーチン、習近平といった強権的なリーダーである。一方でリベラルな政治・経済思想はこの10年ほど弱まり続け、世界の「自由度」は15年連続で低下している。なぜ欧米のオピニオン・リーダーたちはこの事実を直視せず、リベラルな政治・経済思想が世界を席巻するのだといまだに信じているのか?

プーチンが政権を掌握してから1世代が経ち、プーチン的手法のフォロワーが世界に増えていることを認識すべきときがやってきた。中国、インド、トルコ、ブラジル、サウジアラビアといった21世紀の強国が、個人崇拝を奨励し、国民監視に21世紀のツールを活用する強権的指導者によって牛耳られている。

世界を揺るがす「強権的指導者」はなぜ誕生し、なぜ世界の潮流となったのか。なぜリベラリズムは衰退し、民主主義国家の数は伸び悩んでいるのか。1930年代の独裁者の手法と、現代の強権的指導者の手法はどこが違うのか。21世紀における権威主義の流れは、弱められるのか。21世紀の地政学的変化を起こす強権的指導者の正体を解き明かす。

FTのチーフ・フォーリン・アフェアーズ・コメンテーターであるギデオン・ラックマンが執筆した話題作。

目次

はじめに
第1章 プーチン――強権的指導者の原型(2000年)
第2章 エルドアン――リベラルな改革者から権威主義的な強権的指導者へ(2003年)
第3章 習近平――個人崇拝の復活(2012年)
第4章 モディ――世界最大の民主主義国家における強権政治(2014年)
第5章 オルバン、カチンスキ――非リベラルな欧州の台頭(2015年)
第6章 ジョンソン――ブレグジット後のイギリス(2016年)
第7章 トランプ――アメリカの強権的指導者(2016年)
第8章 ドゥテルテ――東南アジアの民主主義の侵食(2016年)
第9章 ムハンマド皇太子の台頭とネタニヤフ現象(2017年)
第10章 ボルソナロ、ロペスオブラドール――中南米におけるカウディーリョの復活(2018年)
第11章 アビー・アハメド――アフリカの民主主義への幻滅(2019年)
第12章 メルケル、マクロン――欧州における強権的指導者との戦い(2020年)
第13章 ソロスとバノン――思想的な戦い
エピローグ 強権的指導者とバイデン
日本語版へのあとがき
謝辞
原註