内容紹介
2025年2月、ホンダと日産自動車の経営統合が破談になりました。電動化や知能化分野での協業は引き続き検討を進めますが、先行きは不透明です。そもそも協業の背景には、米Tesla(テスラ)や中国・比亜迪(BYD)といった新興勢力に対する強烈な危機感がありました。今後どのように巻き返しを図るのか、報道されているように外資系メーカーと連携する動きに発展するのか、注目されます。一方、Teslaも電気自動車(EV)の販売台数が頭打ち傾向にあり、苦戦が目立ちます。象徴的だったのが、同社が2024年10月に発表した方針転換です。廉価版EV「モデル2」の計画を引っ込め、人工知能(AI)を使った自動運転ロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」を大々的に発表しました。
「EVメーカーからAI企業へ」――。Teslaの戦略をこう表現すると聞こえはいいのですが、実態は苦しさの裏返しでしょう。EV市場は各国政府の優遇策の見直しで需要の伸びが鈍化し、BYDをはじめとする中国メーカーの値下げ攻勢も相まって収益性が悪化。EVシフトを掲げていたメーカーの多くが、現在はハイブリッド車(HEV)などの内燃機関(ICE)搭載車に回帰しています。
Teslaは車両の販売後もOTA(Over The Air)でソフトを更新し、継続的に収益を上げる事業モデルが強みでした。ただ、クルマというハードウエアの価値をソフトで賄うことは極めて難しいのが実情のようです。ある自動車アナリストは「ソフトウエア定義車両(SDV)で本当に稼げるようになるのは、2030年まではまずない」と言い切ります。
そんな中、Teslaが打ち出した「AI自動運転」は、EV市況が悪化する中での苦し紛れの戦術かもしれませんが、その一方で、仮に実現すればソフトによってクルマの価値を根底から変えることにつながります。SDVの将来を占うという点でも、AI自動運転の成否は注目のテーマといえそうです。
本書は、自動車業界の総合誌「日経Automotive」の記事の中から、今押さえておくべきトピックスや技術トレンドを厳選し、1冊にまとめました。自動車業界の1年を振り返りつつ、今後の方向性を占う上で貴重な保存版の書籍となっています。企画や研究開発、設計、製造部門の参考資料として、若手・中堅エンジニアの研修用テキストとして、ご活用いただければ幸いです。
(日経Automotive編集長 木村雅秀)
<目次>
●序章 躍進するテスラ・中国勢
ホンダ・日産の統合破談
テスラがロボタクシー公開
トヨタとNTTが協業
BYD「シール」日本投入
EVでホンダが反撃へ
テスラ対抗のシャオミカー
シャープがEV参入へ
トヨタ・スバル・マツダ、新エンジンを一挙公開
スズキ流の脱炭素戦略
テスラEVトラック出荷
テスラ・BYDが描く未来
10年後のクルマ、電動化・ソフトの行方
ホンダ・日産連合、勝機はあるか
●第1章 EV・電池 中国のコスト競争力に迫る
中国Zeekr徹底解剖
Zeekr「007」分解
中国車メーカーの半導体内製
全固体“前夜”の車載電池
鴻海系EV開発トップ、テスラ・BYDに「勝つポイントがある」
「8カ月でできるか?」、マレリCTOが語る中国車“爆速”開発
広州モーターショー2024
テスラ超え狙う「シャオミカー」
EV炎上事故で韓国世論過熱
ホンダが中国EV新ブランド
EVでホンダが反撃ののろし
●第2章 SDV・自動運転 AIが生み出す新たな価値
ソニー・ホンダが描くSDV
デンソーの統合ECU戦略
トヨタ中国合弁が市街地で自動運転
VWが中国XpengとE/Eアーキ開発
車載チップレット革命前夜
48V電源システム、再浮上の兆し
自動車産業、激変の兆し
●第3章 内燃機関・HEV 現実解が次世代車を支える
エンジンが生き残る道
マツダが新エンジンを27年投入へ
マツダの次世代燃料戦略
トヨタがHEVでも全方位戦略
ホンダのHEV戦略「トヨタの逆を行く」
市販へと走るトヨタの水素エンジン車
スズキのバイオガス車
「EV優先」設計でエンジンに逃げ道
日産最後のピュアエンジン
●第4章 安全・ADAS 新興国で磨くクルマ造り
安全なクルマ、新たな競争の舞台
自動車ボディーの新潮流
マツダ「CX-80」の安全性能
ホンダ「フリード」の安全性能
「ちょうどよい」スズキの技術戦略
“月夜”の超悪条件に遠赤外線カメラ
