内容紹介
紙書籍のすべての内容をデータで収録。検索に便利なCD-ROMが付いてさらに使いやすくなりました。今、リチウムイオン電池に代表される蓄電池で世界が大きく変わりつつあります。現状では電気自動車(EV)に搭載する蓄電池の性能が足りず、それでいて高価ですが、世界の電池メーカーが次世代電池の開発にしのぎを削っており、近い将来に大幅な高性能化と低コスト化が実現しそうです。特に、急速充電性能に優れ、体積当たりのエネルギー密度が高い車載向け全固体電池は、トヨタ自動車など大手メーカーの多くが2027年の実用化をターゲットにしています。開発が早い電池メーカーは2026年から量産を始める見通しで、これまでのEVメーカーの勢力図を大きく変えていく可能性を秘めています。逆にこの変化に乗り遅れたメーカーは、EV事業での生き残りが難しくなるかもしれません。この1~2年が非常に重要な時期になっています。
対して、既存のEV向け蓄電池は、世界的な過剰生産が指摘されており、その一部が「蓄電所」とも呼ばれる定置用蓄電システムに流用されるようになって、システムの価格が急速に低下中です。結果として、蓄電所ビジネスの事業性が急速に高まり、補助金がなくても成り立つようになってきたことで、世界中で蓄電所の導入がこれまでの再生可能エネルギーを大きく上回る勢いで進んでいます。そして、蓄電所が電力系統の中で「電力の銀行」として機能し、他の主力電源と肩を並べるほどの大きな役割を果たし始めています。世界における蓄電所に対する2040年ごろまでの総投資額は数十兆円になると見込まれています。
その動きは日本でも同じです。経済産業省が2025年2月に発表した第7次エネルギー基本計画では、ペロブスカイト太陽電池などといった次世代太陽光発電システムの導入を大きく加速させる計画ですが、それは蓄電システムの大量導入も同時に進めなければ成り立ちません。それを見越してか、日本における蓄電システムは、電力系統への接続申し込みが殺到し、申し込み分だけで容量の合計が約300GWhを超えているもようです。大手企業の分だけでも、投資額の合計は1兆円を超えています。導入が順調に進めば、これまでの「電力は貯められない」という電力業界の常識が一変することになります。
一方、蓄電機能と燃料としての機能を兼ね備えたものに「水素/燃料電池」があり、蓄電池とは役割を分担しながら導入が進むと考えられています。もっとも、再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)の事業は、現状では天然ガスや既存の天然ガス由来の水素(グレー水素)に対する価格競争力が弱いことから、ここ1年ほど、生産プロジェクトの立ち消えが目立っていました。ただし、最近は復活の兆しが見えてきました。また、中国では燃料電池車(FCV)の需要が業務用の車両を軸に順調に拡大しており、それにトヨタ自動車などもついていこうとしています。
最新の蓄電池技術や太陽光発電の最新動向、そして水素事業に対する取り組みを知っておくことは、今後のEVなどのモビリティーやエネルギー分野で事業する上で必須の条件。もちろん、新規参入を考えている事業者にとっても必携の一冊です。
<目次>
Chapter 1:EVと蓄電池
2025年前半のEV向け蓄電池市場、中国以外で前年比23.8%増 CATL一人勝ち
車載電池の2025年展望、淘汰・再編で「CATLが競合潰し」
普及期迎える中国EV市場、航続距離への不満も減少
スズキのインド産EV、BYD製LFP電池を中国調達 供給網道半ば
万博で関電らがEVバスの走行中給電 外周道路にコイル埋め込み
NEXCO東日本、EV走行中給電を館山道で実証 高速道路で日本初
大成建設、時速60kmの走行車両に無線給電 伝送効率66%
日産新型リーフの電池ケース、鉄からアルミに テスラは鉄増加へ
日産新型リーフ、追い風なき米国投入 電池はCATLからAESCへ
GMとLGエナジー、大型EV向けにマンガンリッチの角型電池を開発
VWのEV挫折、LFP電池の台頭見誤る 50ドル以下で三元系の半値
Cybertruck分解で見えたTeslaの大胆設計、座席を電池に固定
現代自動車グループ、韓国メーカー3社と電池の安全技術強化で協力
EV電池なぜ燃える? 業界歴35年の専門家にぶつける10の疑問 【前編】
EV電池発火10の疑問、TeslaのEVトラック消火に19万リットルの水 【後編】
Chapter 2:全固体電池と次世代電池
トヨタ向け全固体電池材料は千葉で 出光が「実用化へ大きな一歩」
中国参入で「暴風」吹き荒れる全固体電池 出光、量産まであと5合
EV向け全固体電池は2026年登場か 米国、中国勢が日本を猛追
日産、GT-R生産終了 次期R36は全固体電池のPHEVか
「超急速充電」の課題は太いケーブル、全固体電池も開発進む
パナソニックHDの電池戦略 27年度に金属リチウム負極電池
VW出資の国軒、LMFP電池量産へ 三元系置き換えに260Wh/kg達成
CATLが6月に量産出荷 EV向けナトリウムイオン電池
小型全固体電池がいよいよ離陸へ コイン電池代替も視野
Chapter 3:再生可能エネルギーと定置用蓄電池
太陽電池シールが都市を覆う
第1部:導入可能量 屋根と壁の太陽光パネル 国内電力消費量の1.7倍を発電
第2部:次世代太陽電池 ペロブスカイト太陽電池 薄型軽量では日本メーカーに勝機
大阪・関西万博でもペロブスカイト太陽電池が競演
第3部:結晶Si太陽電池 結晶Siも薄型軽量に参戦 国内でも屋根や壁に導入例続々
第4部:有機薄膜太陽電池 有機薄膜も変換効率20%超え 耐久性ではペロブスカイトを上回る
第5部:CIGS系太陽電池 よみがえった軽いカルコパイライト太陽電池 26年に日本で本格量産
第6部:施工方法 太陽光パネルがシール化施工にも技術革新が続々
主力電源「蓄電所」
第1部:世界動向 世界で蓄電所が増殖中 既に米国加州では主力電源
第2部:蓄電システム 止まらない価格の低下 テスラはEV並みの量を生産へ
第3部:国内動向 国内蓄電所の投資額は1兆円超え 300GWh市場は既に満席か
飯田市で「マイクログリッド」、太陽光と蓄電池で構築
関電、蓄電池事業を強化、30年代初頭に1GW目指す
蓄電池は商談の解像度が大幅アップ、「BATTERY JAPAN 2025」リポート
長期脱炭素電源オークション、リチウムイオン電池の募集量激減へ
レドックスフロー電池に革新、脱バナジウムで価格1/3 系統用蓄電池に
ホンダなど、FCV用燃料電池を再利用した 定置用電源の実証を開始
Chapter 4:グリーン水素と燃料電池
希少金属を使わない水電解システム 東北大などが開発、水素製造コスト低減
日本もエネルギー資源国になる? 地下に生成し続ける天然水素の可能性
東芝ESSがCO2電解装置 COを高効率生産、27年度実用化
京都大などがセラミックスに水素吸蔵、格子欠陥の規則性が貯蔵量に影響
年間100トンのグリーン水素を製造、住友ゴムが白河工場に導入
双日と商船三井ら、メタン分解水素製造技術の Hycamiteに出資
ステランティスがFCV撤退、30年までに普及せず 「水素はニッチ」
FCVの火を消すな
Part1:普及へ2つのキーワード 中国はFCVでも主導権を握るのか
Part2:トヨタ・ホンダの新型FC 「ディーゼル置き換え」へ新フェーズ
Part3:トヨタ水素トップインタビュー 中国は「非常にロジカル」
Part4:ホンダが挑むコスト低減策 「ポン付け」が普及の足掛かりへ
Part5:現代自の戦略から読み解く バリューチェーン全体で向き合う
FCVで突出する中国、新型電池で攻勢へ
トヨタ水素トップが語る燃料電池の未来、商用車特化で「新フェーズへ」
