内容紹介
世界各国で自然の損失を食いとめ、再興していこうとするネイチャーポジティブという世界的合意に向けて様々な取り組みが進んでいます。そのような中、英国のイングランドでは2024年に住宅開発などの開発行為を行う場合、開発後には従前よりも生物多様性を10%以上高める制度を開始した。世界中から注目が集まる「生物多様性ネットゲイン」です。開発地で生物多様性を高められない場合には、他の土地(オフサイト)の生物多様性ユニットを購入することになります。そのため、生物多様性が劣化した集約農業の農地、特に生産性が芳しくない農地の自然環境を再生するビジネスが成立してきているのです。例えば、住宅を開発すれば高まる生物多様性、大型ドローンが生み出す大農場の野花咲く草原、絶滅したビーバーがつくりだす池沼と湿地とアグロフォレストリー、かつての泥炭地の再湿潤化が生み出すカーボンクレジット、窒素やリンなどの栄養塩を低減する草原管理、小さな自然工法の組み合わせによる自然洪水管理など、様々である。それは、日本との社会的背景や自然環境の違いなどを差し引いても、日本のネイチャーポジティブやグリーンインフラを考えていくにとても示唆に富んでいました。
日本では放棄農地が増えており、生物多様性が豊かな自然環境に再生する方法が求められている。筆者は営農が困難で放棄された農地の土地のポテンシャルを読み解き、湿潤か乾燥しているかどうか、人為的な働きかけがどの程度できるかどうか、社会的条件として何を考慮すべきかを考え合わせ、生物多様性が豊かな10タイプのハビタットに自然再生する手法を開発してきてます。
本書籍では2025年に英国の自然再生の現場を7つ回り、生産性が低い農地を自然に還す取り組みを、ビジネスと絡めて先駆けて実践している事例を写真と図、現地インタビューなどを交えて紹介しながら、日本でのネイチャーポジティブの在り方を提案する。さらに、日本のネイチャーポジティブのキードライバーとなりうると考えている放棄農地の自然再生の手法についても紹介します。
<目次>
第1章 ネイチャーポジティブへの転換
1-1 ネイチャーポジティブへの想い
1-2 環境の保全・改善を超えて
第2章 生物多様性ネットゲインとは
2-1 生物多様性ネットゲインの仕組み
2-2 生物多様性ネットゲインの現状評価
第3章 イングランドの生物多様性ネットゲインの探求の旅
3-1 住宅の開発で高まる生物多様性(キングスブルックの住宅地開発)
3-2 失われた野花が咲く草原を再生して収益化する(ウェンドリング・ベック・プロジェクト)
3-3 ネットゲインで成長する民間のハビタット・プロバイダー(エンバイロメント・バンク)
3-4 絶滅したビーバーが造り出す湿地帯(スペインズ・ホール農場)
3-5 泥炭地の再湿潤化が生み出すカーボンクレジット(ハイ・フェン・ワイルドランド)3-6 流域住民の協力と信頼を紡ぎ合わせた自然洪水管理(ストラウド・バレイ)
3-7 自然再生に向けて牧草地の栄養塩を低減する(ワイルド・コブハム)
第4章 生物多様性ネットゲインから 日本のネイチャーポジティブを考える
4-1 英国の生物多様性ネットゲインから日本が学べること
4-2 ネイチャーポジティブのマーケット形成に向けて
4-3 様々な組み合わせによるマーケット形成
第5章 放棄農地を自然に還す
5-1 放棄農地を自然に還す事例を追い求めて
5-2 放棄農地を自然再生する手法を開発する
5-3 放棄農地の多面的価値の発現と社会実装
