内容紹介

人類史を変える者の誕生は
偶然か、必然か。
ジャレド・ダイアモンド博士、最新作!
ヒトラー、ジョブズ、マスク……時代を揺るがす指導者の条件を
『銃・病原菌・鉄』著者が壮大なスケールで解き明かす。

・ヒトラーが事故死すれば、アウシュビッツは避けられたか?
・チンギス・ハンが大帝国を築いたのは、戦略の天才だったからなのか?
・ユダヤ教の一宗派に過ぎなかったキリスト教は、なぜ世界宗教になれたか?
・ジョブズ、マスク、ベゾスがいなければ、あの製品は存在しなかったか?


歴史を変えるリーダーには特別な資質があるのだろうか。
生まれ落ちた「場所」と「時代」が幸運だっただけなのだろうか。
どんなときに、たった1人の人間が人類史を動かせるのだろうか。

大ベストセラー『銃・病原菌・鉄』でヨーロッパが世界を征服した条件を示したダイアモンド博士が企業、宗教、スポーツ、歴史の4分野で人類の謎を壮大なスケールで解き明かす。

* * *

1930年3月13日、アドルフ・ヒトラーの乗った乗用車が交差点に進入したとき、巨大なトラックが右手から突っ込んできた。そのまま進めば乗用車の右側に衝突する。ヒトラーはまさに右側、助手席に座っていた。

トラックは乗用車に衝突し、その勢いで交差点の反対側まで押していったが、車体と乗客を押しつぶす直前に止まった。ヒトラーと他の2人の乗客はケガをしたものの、死人は出なかった。「みんな、生きてるか!」とヒトラーは叫んだ。

危うく難を逃れた3年後、ドイツ首相に就任し、やがて数千万人の命を奪う第二次世界大戦とホロコーストという未曾有の惨禍を引き起こすことになる。

あのときトラックが乗用車を押しつぶし、ヒトラーが死んでいたら、数千万人の死は避けられたのだろうか。

邪悪極まりないヒトラーさえいなければ、歴史の流れは変わっていたと考える人は多い。一方、第一次世界大戦を終結させたベルサイユ条約でドイツに課された厳しい条件と、1923年のハイパーインフレによるドイツ中産階級の崩壊によって、第二次世界大戦が勃発するのは不可避だったと見る人も多い。ホロコーストの原動力となった反ユダヤ主義はヒトラーが台頭するずっと以前からドイツにはびこっていたのも事実だ。ヒトラーによって歴史は変わったと証明することはできるのか。

「リーダーで歴史は変わるのか」。第二次世界大戦とホロコーストにまつわるこの問いは、人間の営みのさまざまな分野にも当てはまる。

歴史学者は3つの答えをめぐり、長年論争を続けてきた。最も極端な答えが「偉人史観」と呼ばれるもので(「偉人」という表現の妥当性はともかく)、19世紀のイギリスの歴史家トーマス・カーライルが提唱した。人類史はオリバー・クロムウェル、フリードリヒ大王、ナポレオンといった傑出した英雄的リーダーが左右するという考えだ。カーライルの主張は「世界史は偉人伝に過ぎない」という一文に凝縮されている。

その対極にある答えは、リーダーは状況に制約され、物事の結果にほとんど影響をおよぼさないという主張だ。ロシアの作家レフ・トルストイが『戦争と平和』で示したもので、戦地から遠く離れた場所に陣取る将軍たちが命令を出すが、戦闘結果は制御不能なさまざまな事柄に左右される様子が描かれている。トルストイはリーダーたちを「歴史の奴隷」と呼んだ。「彼らの一つひとつの行動は(中略)永遠の昔から宿命づけられている」と。

フリードリヒ・エンゲルスはこう主張する。「ナポレオンがいなかったら、別の誰かがその役割を務めていただろう。歴史上、何者かが必要となったときには常にうってつけの人物が見つかったという事実がそれを証明している。カエサルしかり、アウグスティヌス、クロムウェルしかり」

その中間となる答えは「リーダーで歴史は変わるのか」という単純な問いを否定し、またそれに対する普遍的答えがあるという前提も否定する。そうではなく、リーダー個人が結果に影響を与えることもあれば、与えないこともあると考える。

だから真に問うべきなのは「どのような状況でリーダーによって結果に差が出る可能性は最も高くなるのか」だ。

■推薦
「いま私たちに必要なのは、私利私欲を追求するカリスマ的ペテン師ではなく、未来へのビジョンと優れた倫理観を備えたリーダーである。だが、リーダーはどこから生まれ、どのように、そしていつ重要な存在となるのか。環境、個人の才能、決意、戦略が、世界を変える可能性を持つリーダーをどのように生み出すのか。ジャレド・ダイアモンドによる博識にして魅力的、かつ刺激的な1冊」
――ダロン・アセモグル(ノーベル経済学賞受賞者)

「ジャレド・ダイアモンドは、社会科学最大の難問の一つである『リーダーはいつ歴史や社会を動かすのか』という問いに、豊富な事例とケーススタディをもとに斬新な答えを提示している。ダイアモンドの本に共通することだが、本書もまた、世界を見るあなたの目を一変させるだろう」
――ジェームズ・A・ロビンソン(ノーベル経済学賞受賞者)

「激動の時代を生きる私たちは、危機に直面する社会を導く『傑出した人物』の出現を期待する。だが、リーダーは本当に重要なのだろうか。もし重要だとすれば、何がリーダーの成功を左右するのか。必読の1冊である」
――ピーター・ターチン(複雑系科学者)

目次


プロローグ リーダーシップ考──ハムレットとチンギス・ハン

第1部 政界のリーダーたち
第1章 アフリカのシェークスピア──セレツェ・カーマ
第2章 『沈黙の春』の強烈なメッセージ
第3章 最高・最悪のリーダー二二選──伝記的手法の限界
第4章 自然実験
第5章 大統領を撃て!(先に癌で死ななければ)

第2部 ビジネス界のリーダーたち
第6章 ザクロとコンピュータ
第7章 CEOの義父が亡くなったら経営に影響するか

第3部 スポーツ界のリーダーたち
第8章 スポーツの監督は人生の手本
第9章 スポーツの監督をクビにするのが博ばく打ち である理由

第4部 宗教界のリーダーたち
第10章 宗教が成功する要因──カリスマ教祖以外に必要なもの
第11章 なぜキリスト教は世界で最も影響力のある宗教になったのか

エピローグ 新たな現象への新たなアプローチ