「またか」「何度言っても直らない」「今日も部下のミスの尻拭いで残業。自分でやったほうが早かった……」。周囲の“いつものミス”にため息をつくことはありませんか? また、他人だけでなく自分のミスにうんざりすることもあるでしょう。そんな時に使えるのが「失敗マップ」という新ツールです。失敗マップを使って、どうミスを防ぎ、どう改善につなげるのか。その具体的な方法や事例を紹介している『 失敗マップのすすめ 』(飯野謙次著)より抜粋・再構成してご紹介します。今回は「部下のミスを防ぐ失敗マップ活用術」をお届けします。

何度も寝坊する部下をさりげなく指導したい

 自分の失敗の防ぎ方は十分ご理解いただけたでしょうか。また、日々の失敗を防ぐだけでなく、長期視点で見た際に、どう作業を改善していけばよいかという点についてもお話ししてきました。

 あとは、失敗マップを使って、どのように周囲の人のミスを防ぐのか、周囲の人に働きかけるのかという点がみなさんの関心事ではないでしょうか。周囲のミスを防ぐには、一緒に失敗マップを使ってみるのが一番です。とはいえ、何でもない日にいきなり「失敗マップを使って一緒にミスを減らそう」と声をかけるとあやしさ満点です。

 そこで、失敗マップを使うシチュエーションを想定し、提案から活用のシナリオを考えてみました。ぜひ、こちらを参考に失敗マップを活用して、自分だけでなく周囲の人のミスも減らしてみてください。

シチュエーションの詳細

●あなたは「上司」
●入社してまだ半年の新卒1年目の部下Aと初めての中間面談を行う
●部下Aは毎日ではないが、時折寝坊することがあり、ついにこの間、お客様との大事な商談を寝過ごした(なお、部下にとってこれが7回目の商談だった)
●この商談はあなたの部下の1人である部下Bが取り仕切っているもので、部下Aは部下Bに同行していた
●そのほかにも、部下Aはよく社用スマホを自宅に忘れている
●この中間面談において、社会人生活に慣れてきたかどうかのヒアリングを行うと同時に、これまであったミスについても改善できるよう指導したいとあなたは思っている

想定される会話

あなた:お疲れ様。じゃあ、中間面談を始めましょうか。面談は今回が初めてですよね?

部下A:はい、そうです。よろしくお願いします。

あなた:まず趣旨を説明しておくと、この面談では会社に慣れてきたかと、悩み事がないかを聞きたいと思っています。気楽に教えてくださいね。

部下A:はい。

あなた:では、まず会社での生活について聞いていこうかな。入社して半年が経ちましたが、どうですか? 慣れましたか?

部下A:慣れたと言えたらよいのですが、なかなか断言できる感じではなくて……。先日ご迷惑をおかけしたばかりの件ですが、どうにも夜に寝つけず、寝坊をしてしまうことが多々あって……。自分でも困ってるんですけど、どうしたらいいのかわからなくて。

あなた:起きてしまったことは仕方がないので、気に病む必要はないですよ。次からそういうことがないように気を付けていただければよいので。ただ、今も寝坊してしまうことがあるんですね?

部下A:はい。

あなた:学生時代からこういうことが?

部下A:たまにありました。緊張すると夜眠れなくなるので……。

あなた:じゃあ、今も緊張しているということでしょうか?

部下A:だと思います。

あなた:確かに、前回の寝坊も商談前でしたね。緊張していたのかもしれませんね。でも、なんで緊張したんでしょうか? いや、前回の商談が初めてだったわけではないし、なぜだろうと思ってね。

部下A:おっしゃる通り、商談自体は初めてではなかったのですが、その日は私が初めてお客様の前でプレゼンすることになっていて。だけど、資料の作成が遅すぎて、先輩に資料を見てもらう時間があまりなくて、それで……。

あなた:なるほど。そういうことだったんですね。話を聞いていると寝坊するのにはいろいろ要因がありそうですね。そこでなんですが、よかったら、ちょっとこの失敗マップというものを使って一緒に寝坊対策を見ていきませんか? これで失敗とその対策が可視化されると、不安も和らいで夜眠れるようになるかもしれないなと思いまして。

部下A:よくわからないですが、不安が解消されるならぜひ。

あなた:じゃあ、やってみましょうか。

失敗マップで部下Aの問題を洗い出す

(失敗マップの使い方の説明を終える)

あなた:まず商談の頻度ですが、今は週に1回程度ですよね?

部下A:はい。先輩のBさんに同行させていただいているので、2人作業に当てはまると思います。ということは、第3エリアに私の失敗はプロットされましたね。

あなた:そうですね。失敗マップが載っているこの本(飯野謙次著『失敗マップのすすめ』)を見てみましょう。第2章の第3エリアのTipsを見ると、コミュニケーションミスについて言及があります。さっき、先輩に見てもらう時間がなくて資料が不十分だったって話がありましたね?

部下A:そうお話ししました。

あなた:ということは、資料が不十分なことで初めての商談がより気がかりになって、夜眠れなくなった可能性が考えられますね。

部下A:確かに。

あなた:今、商談前にBさんと何か打ち合わせをすることはありますか?

部下A:あったり、なかったりです……。

あなた:それはBさんに言いづらいとかそういうことですか?

部下A:はい……。いつもBさんは忙しそうなので、声をかけづらくて。

あなた:そういうことでしたか。では、商談の2日前にはBさんと必ず打ち合わせをする時間を設けるようにしましょう。Bさんには私からそのように伝えておきます。習慣化させれば言いづらいということもなくなるし、資料を見てもらっていないという不安もなくなるでしょう?

部下A:ありがとうございます! あの、これってほかのミスにも使えますか? 例えば、よく寝坊とセットで社用スマホを忘れてしまうんですけど、それもどうにかしたくて……。

あなた:もちろん。せっかくだから、それもここでやってみましょうか。えーまず……。

まとめ

このように、一緒にマップを描きながらだと、上司であるあなたが何をすべきかが明確化されるうえ、部下Aの先輩にあたる部下Bとのコミュニケーション不足をさりげなく指摘することが可能です。その結果、この件に限らないチームのミスを防ぐための布石を打つことができるでしょう。
紙とペンで失敗マップを作り、部下の指導に役立てることも可能(写真:Kana Design Image/stock.adobe.com)
紙とペンで失敗マップを作り、部下の指導に役立てることも可能(写真:Kana Design Image/stock.adobe.com)
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メールやチャットの送信ミス、名前間違い、すっぽかし、ダブルブッキング、忘れ物や紛失物、重大事故や大ケガ…の撲滅は仕組み化が10割!! 仕組み化に使える「失敗マップ」をスタンフォード大学工学博士で、失敗学会副会長の著者が紹介します。2つの質問に答えるだけでミスしない・させないを実現しませんか?

飯野謙次著/日経BP/1980円(税込み)