「お金」「投資」と聞くと、「難しそう」「危なそう」といった印象を持つ人もいるのではないでしょうか。でも、「お金」や「投資」はギャンブルじゃないんですよね。お金は「ロジック」なので、まずは会社や事業の先行きを読み解くために会計を勉強しておく必要があります。

 また、お金は「数字」でもあるんだということを認識するのは大切です。お金を数値的に捉えられないと、投資では勝機を見いだせません。人間は基本的に損をしそうな案件には手を出しませんが、リスクを取って果敢に攻めた人は、大きな財産を築く可能性があります。でも、ちゃんとお金のことを勉強していないと、そのリスクを取っていいものなのかどうかも判断することができません。

 そして、お金は「感情」でもあります。お金のロジックと人間心理を理解した人にほほえみます。今回は、そんなお金のロジックと人間心理をマスターすることができる、一度は読んでおくべき「お金」の本を紹介します。特に若い時期に読んでおくと、一生役に立つ知識が身に付くと思いますよ。

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1. 『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん』 ロバート・キヨサキ著、白根 美保子訳、筑摩書房

 大ベストセラーとなった『金持ち父さん 貧乏父さん』の改訂版です。「お金持ちになるにはたくさん稼ぐ必要がある」「資産と負債の違いとは」「持ち家は資産ではない」など、お金に対する考え方について教えてくれます。「お金の本なら、まずはこれ」という基本の1冊。

 ロバート・キヨサキさんの本は『 金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント 』がイチオシですが、こちらもお金の入門書として最適です。

 お金について学ぼうとしても最初はよく分からないし、何より面倒ですよね。そんなときにはまず「自分の欲を高める」のが一番です。例えば、社会人になって最初のボーナスが出たら、その2割ぐらいで親に何か買ってあげて、残りは全額、株に投資してもいい。そうすると、得をするにしろ、損をするにしろ、翌日から株価や新聞をチェックする熱量が違ってきますよね。世の中の動きに目を光らせていたほうが、優秀なビジネスパーソンになれると思います。

 「お金のことを勉強しなくては」というビギナーの方にはまずこの本をおすすめします。「本当のお金持ちとは何か」を知って、自分の欲を刺激しましょう。

2. 『私の財産告白』 本多静六著、実業之日本社

 日比谷公園や明治神宮の森などをつくり、「日本の公園の父」と呼ばれた本多静六の自伝。天引き貯金と投資で億万長者となり、定年の際には全額を寄付したという伝説の人物です。「お金とは何か」を考えるうえで、私が絶対に読んだほうがいいと思う1冊です。

 本多静六は林学者ですが、給料の4分の1を天引き貯金し、そのお金を株式や山林に投資して億万長者となりました。最初は鉄道株に投資して1億円の利益を出し、その後さらに秩父の山林に投資して100億円もの大金を手に入れます。

 なぜ、当時は見向きもされていなかった秩父の山林に投資できたかというと、山林の専門家だったために、山林の価値が理解できたからです。投資ではそうした他人と違う目線や理論が必要なのだと気づかされます。

 しかも、莫大な財産を築き、自分が東大を定年退官するときには、ほとんどを寄付するという潔さ。「人生と財産」について考えさせられます。

3. 『財務3表一体分析法』 國貞克則著、朝日新聞出版

『財務3表一体分析法』
紙の書籍は在庫切れ・重版未定ですが、kindle版で読むことができます

 著者の國貞克則さんの本は、会計の基本や財務3表の読み解き方を説明した『財務3表一体理解法』もおすすめなのですが、こちらは、会計の基礎を「理解」した後に、さらに「分析」するためのノウハウが書かれています。

 「さあ、投資を始めよう」というときに、財務諸表を読み解く知識は必須だと思います。多くの人は「売上」と「利益」に注目すると思いますが、さらに上のレベルで考えるなら、「資産」にも着目しなければいけません。

 では、財務諸表のどこを見ればいいのか。この本を読むと分かります。また、貸借対照表などを軸に、日産とホンダ、ソフトバンクとNTTドコモなどを比較していて読み応えがあるのも特長です。

4. 『投資で一番大切な20の教え』 ハワード・マークス著、貫井佳子訳、日本経済新聞出版

 あのウォーレン・バフェットが絶賛し、バークシャー・ハサウェイの株主総会でも配ったという本です。市場の見方やリスクの取り方など、著者のハワード・マークスの投資哲学が語られています。

 この本の鍵は、ハワードの言う「二次的思考」です。例えば、「これは良い企業だから株を買おう」というのは一次的思考。一方、「これは良い企業だ(中略)ただ、実際にはそうではない。この株は過大評価されていて割高だから売ろう」というのが二次的思考です。

 投資で勝つには、他人と違う行動をする、つまり「逆張り」が必要ですが、それだけでは勝てないと説いているのも本書ならでは。市場というのは世間のコンセンサスですから、そのコンセンサスと実態に相違はないのか、自分の意見とどう違うのかを見極める必要もあります。

 これから投資を始める人は、ぜひこの「二次的思考」を意識して身に付けてほしいと思います。

5. 『JUST KEEP BUYING』 ニック・マジューリ著、児島修訳、ダイヤモンド社

 著者は、全米屈指のデータサイエンティストで、パーソナルファイナンスの人気ブロガーのニック・マジューリ。データをもとに「収入の2割貯金」「賃貸VS持ち家」といった従来のお金の常識に疑問を呈し、新事実を解き明かしています。

 本書のタイトル「JUST KEEP BUYING(買い続けろ)」こそ、投資の正解です。この本を読むと、なぜ買い続ける必要があるかも分かります。

 また、著者のデータサイエンティストとしての視点から「賃貸と持ち家はどちらが正解か」「収入が増えたときはどのぐらいまで使っていいのか」「ぜいたくな買い物をするときは、その同額を投資せよ」といった具体的な指針も示しています。日々の生活にも役立つ1冊と言えるでしょう。

6. 『教養としての投資』 奥野一成著、ダイヤモンド社

 著者は、農林中金バリューインベストメンツCIO(最高投資責任者)の奥野一成さん。投資成績を上げ続ける奥野さんが、投資に必要な考え方、指標の見方、銘柄選定の視点などについて解説しています。以前の記事 「一生モノの「お金の知識、稼ぐ力」が身に付くビジネス書11冊」 でも、「投資本の中で一番おすすめ」と紹介しましたね。

 この本で僕が感銘を受けたのは、「不可逆的なものは何かを考えて、投資をしよう」という部分です。例えば、近年なら新型コロナウイルスが流行し、リモートワークが定着しました。この流れ、もう元には戻らないですよね。そうした不可逆的なもの、つまり「長期潮流」に対して投資をすると成績を上げられる──というのが、奥野さんの持論です。

 ほかにも「高い参入障壁」「高い付加価値」のある企業は「構造的に強靱(きょうじん)」であるため、投資に値するとも書かれていて、その視点がとても勉強になります。

7. 『転換の時代を生き抜く 投資の教科書』 後藤達也著、日経BP

 元日経新聞の記者で、Xのフォロワーが65万人、YouTubeのチャンネル登録者数が27万人という支持を誇る後藤達也さんの投資入門書。「こんな簡単なところから?」と思うほど初歩的な内容から始まりますが、損益計算書、貸借対照表、株式市場の読み解き方などまで学べる良書です。

 約300ページで「株でだまされない」ための投資の基礎知識がしっかり身に付きます。景気判断の指標である米雇用統計、CPI(消費者物価指数)、PCE(個人消費支出)などを活用する視点も解説されているので、今のうちに勉強しておけば一生使えます。

 今は空前の株ブームですが、勝っても負けても、この時期に投資を体験し、本書を読んでおけば、ビジネスに大切な部分が身に付き、その後のキャリアや投資スタイルにも影響が出てくるでしょう。キャリアの早いうちに本書に出合った若者は、とても幸福だと思います。

8. 『わが投資術』 清原達郎著、講談社

 個人資産800億円超。会社員でありながら、長者番付1位となった清原達郎さんによる、投資の極意。咽頭がんで声帯を失い、引退を決めた著者がすべてを明かすということで期待して読みましたが、期待以上の素晴らしい内容です。

 株価に織り込まれていない投資アイデアをどう探すか、バイアスを味方にする投資法とは何か、なぜ割安小型成長株なのかが論理的に語られており、じつに切れ味鋭い論考です。

 著者が投資銘柄を見極めるために使っている「ネットキャッシュ比率」「キャッシュニュートラルPER」の解説は特に重要で、候補銘柄をこれに従って並べれば、割安な株がどれかが明らかになるに違いありません。さらに、「キャッシュニュートラルPER」ではカバーできない固定資産の価値、設備資産のスケジュール(老朽化・更新)についてもコメントがあり、実践的な内容だと思いました。

 指標だけでは見えない、経営の実態を把握するための視点がいくつも散りばめられており、じつに勉強になる投資本。文章もエッセイ風で面白いですね。

取材・文/三浦香代子 編集協力/山崎綾 構成/長野洋子(日経BOOKプラス編集部)