NISAやiDeCoなど、投資に関する単語を耳にすることや老後の資産形成やライフイベントの備えのために投資を促されることも多くなりました。でも、世間で話題になっているから、漠然とした将来不安があるからという理由で投資をしていても長続きはしません。重要なのは、「何に」「どのように」投資をするかであり、自分だけの軸を持つことです。『私たちはどう投資をするか?』(八田潤一郎著/日経BP)から、これからを生きる人の投資との向き合い方を紹介します。第3回は長期投資が続く3つの要素について。

あなたの投資に足りていないのは?

 私たちが長く投資をするうえで、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。

 一喜一憂せずに長期投資を続けるために、必要な3要素があります。それは、「安心 満足 楽しい」で、この3つを満たすのが理想の投資です。

 安心感というのは金融商品に手触り感を持てることがカギになります。手触り感の“素”は、自分の投資の目的や軸、哲学にフィットしていて、その商品に対する理解度が高いということです。自分にとって身近でわかりやすい商品であれば、安心感につながります。手触り感は人それぞれですし、金融商品で考えると愛用品のメーカー(株式・債券)、手元における資産(貴金属)などで手触り感を自分でつくりだすこともできます。

 また顔の見えるファンドマネージャーをはじめ、信頼できる専門家やインフルエンサーがいたら、その人の考えを参考にしたり、運用を託すのも、安心感につながる一つの方法だと思います。

 次の満足感のカギになるのが、自分なりの投資の目的や軸を金融商品の運用を通じて、達成できているかです。自分の目標に向けて進める投資というのは、聞くだけでも満足感がありますが、実績としての運用パフォーマンスも大切になります。

 漠然とした老後不安がある場合は、投資による平均リターンを計算することで「不安解消の見える化」ができ、それも満足感につながると思います。

(写真:azukichi/stock.adobe.com)
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 闇雲にパフォーマンスが高くても、リスクとリターンは表裏一体でしたから、満足感の高い投資とは言えません。また、投資の目的がお金を増やすだけではないとしたら、運用パフォーマンスだけで満足感が測れるものでもありません。愛用している家電やスマホ、アパレル、美容系のメーカー、よく利用する施設の運営会社などへ投資する応援投資なら、その企業の株主の一人となれた満足感もあるでしょう。知的好奇心を満たすなど精神的な満足感も大切にしたいところです。

 そして、楽しさ。精神的な満足感にも通ずるものですが、楽しいから、もっと知ろうと思えて興味や視野が広がり、自然と学びが深まります。投資を通じて自分が成長する楽しさも味わえ、利益以外の目的で投資を続けられると、それが回り回って自己資産などの拡大にもつながっていきます。楽しくなければ、続かないのは当然のことですね。

 自分の投資を模索中の人は、安心感、満足感、楽しさの3要素で何が足りないのかを考えると欠けている部分がわかると思います。どれを重視するかは人によると思いますし、3つを均等にしてバランスを取ろうとする必要はありません。どれかが大きめでも問題ないでしょう。4つ目、5つ目の要素が加わってもOK。要するに、ただ「たくさん儲ける」ことだけを考えるのではなく、それ以外の要素に目を向けられれば、長続きする投資になるのです。

小学生で投資を始めた私の「楽しさ」

 私自身が株式投資を始めた当初、面白さを感じていたのは、「仮説」を立てて、株価の値動きで「検証」しつつ答え合わせをする推理ゲームのような感覚でした。経験を積み、様々な金融商品に挑戦するようになると、ただの推理から連想ゲームのような面白さになった感覚もあります。

 例えば、風が吹けば回り回って桶屋が儲かるということわざのように、コロナ禍には木材価格が上がりました。これは、コロナ禍で経済を支えるために、日銀が政策金利を下げたところ、住宅ローン金利も下がったからです。家を買うためのお金が安い金利で借りられると、住宅購入を検討する人が増えて、住宅の需要とあわせて木造建築に使う材木の需要が高まり、(供給が増えない場合)木材の価格が上がったのです。

 一見、関係なさそうに見えても、経済は網目のように広がっていますから、意外なつながりがある。世界を俯瞰(ふかん)できることやニュースを自分ごと化できると、今までは見えなかった関係性を感じたり、視野が広がる経験ができます。ニュースの内容もいつの間にか気にかけている自分がいるはずです。

投資が生み出す「つながり」というリターン

 私が所属している学生投資連合(Union of Student Investment Clubs:USIC)が発足したのは2008年で、ちょうどリーマン・ショック前後でした。今でこそ政府や金融業界関連の公的な活動をしたり、全国規模のイベントも行っていますが、当時は小さな団体でした。

 お金の話は相手を選びますよね。月々の収入はもちろん、預貯金の話もしづらいものです。金融投資に関しても興味がある人か、経験がある人としかなかなか話せません。若者に限定すると、投資をしている人自体が少ないため、難しさは余計高まります。だからこそ、みんなで思う存分投資の話をしよう、というのが団体設立のコンセプトの一つです。

 金融投資は自己責任で行うのが鉄則ですが、それでも他の人の考え方ややり方と比べながら、自分の投資の目的や軸、哲学を確立していくのは効率的です。自分と相手の性格や好みを比べて、これはちょっと自分に合わないな、自分ならこうするな、というふうに具体的なイメージができるからです。

USICの活動風景(写真:著者提供)
USICの活動風景(写真:著者提供)
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 実際、団体メンバーの投資目的、軸、哲学はバラバラです。みんなそれぞれのスタイルを持っていますが、共通していることが一つあります。

 それは、投資を通じて社会とつながることに喜びを感じている点です。経済の授業で習ったことが机上で終わらず、すぐに投資に活かせる実践的な知識になるわけです。そのリアリティーが経済を自分ごとにするきっかけになり、もっと何かを知りたい、学びたい、と自然と思うようになります。

 思うに、人間は社会的な生き物ですから、社会との接点が明確になったり、社会の一員であるという実感を得られると、自分の存在意義が増して喜びを得られるのではないでしょうか。

 金融投資をしなければ、私たちは社会に対して労働者と消費者という関わり方しかできません。もちろん、年金を通じて運用はしていますが、手触り感はありませんし、手触り感がないと、社会との接点は意識しにくいものです。同時に投資の喜びも得られにくくなります。やはり自ら積極的に投資する側に回ることでこそ、得られる経験や価値があると思います。

 投資の楽しみ方にも色々な種類がありますし、おのおの自分なりの楽しみ方を見つけるのが長期投資の醍醐味です。

いまを諦めることなく、楽しみながら投資を続けられないのか? 若手投資家の著者が、等身大の視点で考え続けた問いをまとめた本書は、①投資時間の長さと、②投資を楽しむ視点を軸にしています。「若者代表」としての政府への提言が話題になった大学生投資家、初の著書!

八田潤一郎/日経BP/1760円(税込み)