株や投資信託などの金融商品で得た利益にかかる税金がゼロになるNISA(少額投資非課税制度)が大改正され、2024年1月から非課税投資枠が大幅に拡大し、投資期間が無期限になって使いやすくなりました。ファイナンシャルプランナーでCFP[R]の國松典子さんに、新NISAの活用法を聞きました。「今すぐ投資を始める人と、なかなか行動しない人の差は将来的に大きくなる」と警告します。日経ムック『新NISA 商品選び完全ガイド』から抜粋。
ご飯と味噌汁のように積み立てる
私は、旧NISAと同様に、新NISAもしっかり使っていこうと考えています。投資信託協会の発表を見ると、私が旧NISAで投資してきたファンドは、新NISAの成長投資枠でも投資できるようです。それらの積立投資を、成長投資枠とつみたて投資枠の両方で行う予定です。
具体的な投資対象は、信託報酬が低いインデックスファンドの米国S&P500指数に連動するタイプ(*1)と、同じく全世界株指数に連動するタイプ(*2)です。この2本は純資産総額がずっと増加傾向にあり、前者は2兆6000億円超、後者は1兆5000億円超に達しています(2023年10月末時点)。そうした規模のメリットが、信託報酬を0.1%未満に引き下げられる理由になっていると考えられます。
私が利用している金融機関では、米国の個別株を積み立てることも可能なので、ファンド積み立てと並行して、成長投資枠では米国の個別株も積み立てようと思っています。また、旧NISAでは、個人的に注目しているインド株に投資するインデックス型ファンド(*3)も積み立てています。こちらも新NISAで積立投資を続けていくつもりです。
当社に相談に来られる方には普段、投資を食事に例えて説明しています。私たちにとってお米のご飯とみそ汁は、おいしさを追求するというよりも、身体に必要な栄養を毎日しっかりとるためのものではないでしょうか。投資もそれと同じで、ご飯とみそ汁に相当するベース資産を、淡々と積み立てていくことが重要です。
新NISAのつみたて投資枠の対象となっているファンドには、長期の積立投資に適した低コストのインデックスファンドがそろっています。お米の銘柄や味噌の種類にも好みがあるように、自分に合ったファンドを見つけてベースとなる資産を築いていきましょう。
*2:『eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)』
*3:『iFreeNEXT インド株インデックス』
日常的な節約こそお金をためる原資に
積立投資による資産形成は、ある程度の時間をかける必要があるので、とにかく早めにスタートすることが肝心です。そうはいっても普段の生活だけで精いっぱいで、投資に回すだけのお金の余裕がないという人もいるでしょう。そんな人は、次の2つの理論について考えてみてほしいと思います。
ひとつは「ラテマネー」という、米国で広まった経済理論です。毎日500円のラテ代(コーヒー代)が、1カ月で1万円になるとします(500円×週5日×4週間)。この1万円をラテ代に使わずに毎月積立投資していくと、例えば30年間で年率5%のリターンが得られた場合、投資元本の360万円が30年後には832万円まで増加します。つまり日常的にできる節約こそが、実はお金をためるための原資になるのです。
もうひとつは、同じ金額であっても人は心の持ち方次第でお金に異なる価値をつけるという、行動経済学における「心の会計理論」です。一生懸命に働いて得たお金は、誰でも大事に使おうと思います。一方で年末調整や確定申告での還付金(保険料控除や住宅ローン減税など)といった、いわゆる臨時収入的なお金は、どうしても無駄遣いしがちです(図表1)。そういうお金こそしっかりためていくと、いずれ数百万円の単位になることを意識してほしいのです。
毎月100円からでも1000円からでも、今すぐ投資を始める人と、なかなか行動しない人の差は将来的に大きくなります。普段からお金を上手にやりくりして、とにかく早いうちに、今できる範囲で投資を始めることが大切です。資産を築くための仕組みがつくられたのですから、活用しない手はありません。
取り崩し運用を実践する
iDeCo(個人型確定拠出年金)と新NISAの使い分けでいうと、iDeCoの活用を考えるのは、資金に余裕がある高所得層以外の方は40代以降でいいと考えます。今では晩婚・晩産化も進んでおり、30代~40代の人で、60歳までお金を拘束してもいいという人はなかなかいません。所得控除も大きいとは思いますが、それでお金が拘束されてしまって、人生設計が絵に描いた餅になってしまうぐらいなら、流動性の高いところで投資した方がいいでしょう。
40代以降にiDeCoをスタートしても、20年ぐらいは運用期間が取れるので、それまでは新NISAを優先して、いつでもお金を引き出せる形で運用することをお勧めします。
出口戦略を考えるにあたっては、その前提となる今後の運用成果について、大まかに計算しておく必要があります。例えば、今55歳の私の場合は、これから10年程度は新NISAで積み立て投資を継続します。1800万円の枠を使い切ろうと思っているため、毎月の積立額は15万円です。投資対象は株式ファンドなので、年率の想定利回りは5%に設定します。
これらの条件で積立投資シミュレーションを行うと、10年後の65歳時には、投資元本の1800万円が約2300万円に増える計算です。この65歳時から運用の出口戦略として、私はいわゆる「取り崩し運用」を行う予定です。公的年金に上乗せして、毎月の取り崩し額も10万円とします。継続する運用部分の想定利回りを5%に設定して取り崩しシミュレーションを行うと、資産寿命が50年たっても尽きないことが分かります(図表2)。
一般的には運用のすべてを一括でやめるイメージが強いかもしれませんが、資産の一部を毎月取り崩しながら、残りの資産でずっと運用を継続していけば、結局は資産を減らさずに済むのです。
取材・文/白浜一世(エディト)
株や投資信託で得た利益にかかる税金がゼロになるNISAが大改正され、大幅に使いやすくなりました。第一線のFP、アナリストらが、NISAで注目の投信、株、ETFを多数紹介します。巻頭対談には日向坂46の佐々木久美さんが登場。
日本経済新聞出版編/日本経済新聞出版/1320円(税込み)



