株や投資信託などの金融商品で得た利益にかかる税金がタダになるNISA(少額投資非課税制度)が大改正され、2024年1月から非課税投資枠が大幅に拡大し、投資期間が無期限になって使いやすくなりました。ファイナンシャルジャーナリストで『 大改正でどう変わる? 新NISA 徹底活用術 』の著者、竹川美奈子さんは、金融資産全体のなかで新NISAの活用法を考えてほしいと語ります。日経ムック『新NISA 商品選び完全ガイド』から抜粋。
制度を使いこなすことが目的ではない
新NISAは、いささか話題が先行しすぎではないでしょうか。年齢にかかわらず「新NISAは使った方がいいのか、何に投資すればいいのか」といった声をよく耳にします。しかし、制度を使いこなすことが資産形成や投資の目的ではありません。運用を続けながら、長期で資産を育てていくことが大前提です。そのためにも、自分に合った新NISAの使い方を考えることが大切です。
資産形成を考えるときには5つのステップで考えていきましょう(図表参照)。新NISAを活用するときも、基本的な考え方は変わりません。第1のステップでは、自分の金融資産全体のなかで、どれぐらいの金額を投資にあてられるかを考えます。現役世代の人が毎月給料の一部で積立投資をしていくのか、あるいはある程度まとまった預貯金があり、その一部も投資に回せるのかによって、現実的な投資金額は変わってきます。
第2のステップでは、ざっくりとでもいいので資産配分を決定します。株式投資100%と預貯金の配分で行くのか、投資の部分は値動きを抑えるために債券なども組み合わせるのかという具合に、自分の投資に対するスタンスを明確化します。第3のステップではアセット・ロケーション(場所・口座)を決めます。勤め先に企業型確定拠出年金がある人の場合には、まずはその運用をしっかりと行いましょう(*)。
新NISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する場合には、第4ステップとして、口座を開設する金融機関を選択し、運用を開始します。現役世代は無理なく続けられる積立投資がおすすめですが、まとまった額の預貯金などがある人は一括投資も可。ただし、どれくらい下がる可能性があるかをイメージして無理のない範囲で始めましょう。
そして、第5ステップとして、定期的なチェックとメンテナンスを行うことが重要です。バランスシートを作成し(家計簿アプリなどでもOK)、目標どおりに金融資産が積み上がっているか、負債のある人はそれが圧縮できているかなどを定期的に検証していくわけです。
ライフステージで変更もためらわない
iDeCoや企業型確定拠出年金は60歳まで原則として引き出せないので、老後用の資金をつくるのが目的になります。一方で新NISAはいつでも解約できるので、どんな用途にも使えます。明確な投資目的がなかったとしても、長期的な資産形成を目指して積立投資を始めればいいでしょう。長期的に老後資金の一部をつくると考えてもいいし、お金が必要になったらちゅうちょせずに引き出すのもOKです。例えば投資信託の一部を解約して、住宅購入の頭金やお子さんの教育費などに使うこともできます。ただし、投資ですから数年後に必ず必要になるお金の準備には向きません。
新NISAは旧NISAと違って、投資枠を再利用することができます。お子さんの教育費として解約したとしても、翌年には投資枠が復活するので、その後に資金的な余裕が生まれたら、空いた枠で自分の老後資金の積み立てをスタートするといった使い方が可能です。すなわち新NISAは、生涯を通じて付き合っていける制度なのです。
最初に積立投資の金額や商品を決めたからといって、ガチガチに同じ投資を続けていく必要はありません。長い人生の間には転職や結婚、出産、子どもの独立など、いろいろな転機が訪れます。そのときの状況に応じて積立額を変更することもできます。投資の基本線はきっちりと決めるけれど、ライフステージに応じて柔軟に変更を加えることも、ためらわないでほしいです。
新NISAではつみたて投資枠と成長投資枠の2つを利用できます。そのうちつみたて投資枠の対象商品はインデックスファンドが大部分を占めています。資産形成の土台づくりという意味では、まずはインデックスファンドの積み立てからスタートしてもよいでしょう。投資期間が長くとれる人は、株式を中心に運用することをおすすめします。
アクティブファンドを加えてもいいですが、投資哲学や投資プロセス、中身、運用体制、運用実績などを確認して、共感・納得できる商品であることが大前提です。人気だから、直近の成績がよいから、金融機関の「推しの商品」だからという理由で投資してはいけません。
新NISAでは商品のスイッチング(預け替え)はできません(枠が空いていたら別の商品を購入することは可能)。そういう意味では投資信託は長期で保有し続けてもいいと思える商品を選ぶことが大切です。
出口について、基本は必要になったときに解約して使う、でいいと思います。ただ老後資金として使いたい場合には、NISAだけでなく、公的年金や企業年金といった他に利用している制度と合わせて考える必要があります。
50代後半になったら、60歳以降に受け取るお金を整理しましょう。例えば、60歳で仕事を辞める予定だとします。そのときに退職一時金や企業型確定拠出年金、確定給付型の企業年金など、受け取れるものがあれば、退職後にすぐ新NISAで運用する投資信託や株式などを売って引き出す必要はありません。
いつまで運用を継続するかも大切なポイントです。70歳までは運用を続けられるという場合には、55歳の人でもあと15年は運用する時間があります。新NISAの投資対象を無理にリスクの低い商品に限定する必要もないでしょう。
投資を始めるときと同様に、現金化して受け取るときも、60歳以降に受け取るお金や、自分の金融資産全体を俯瞰する視点を持つことが大切です。私の場合は、iDeCoと小規模企業共済に加入しているので、60歳以降は、それらの受け取り方と合わせて、NISAの受け取り方を検討すると思います。今後はNISA口座でも自動解約サービスなどが普及することを期待しています。
取材・文/白浜一世(エディト)
株や投資信託で得た利益にかかる税金がゼロになるNISAが大改正され、大幅に使いやすくなりました。第一線のFP、アナリストらが、NISAで注目の投信、株、ETFを多数紹介します。巻頭対談には日向坂46の佐々木久美さんが登場。
日本経済新聞出版編/日本経済新聞出版/1320円(税込み)


