オランダのほとんどの小学校は宿題が出ない。それでも読み書き能力はフィンランドや日本と並んで世界トップ3に入る。移住したママたちが驚いたオランダ流すごい子育て法について、新刊『オランダ人のシンプルですごい子育て』(リナ・マエ・アコスタ、ミッシェル・ハッチソン著/吉見・ホフストラ・真紀子訳)から一部抜粋して紹介する。
モンテソーリ、ドルトン、イエナプラン教育のいずれの学校を選択しても、子どもに宿題は出ない。そしておそらく、オランダのどの小学校でも宿題はほとんど出ないはずだ。宿題は小さな子どもにとって時間の無駄で、学習能力を深めるにはほとんど役に立ないという多くの調査結果を目にする。オランダでは、楽しく遊ぶことが良い成績を取ることよりもずっと大切だと考えられており、これがイギリス、アメリカとのもっとも大きな違いだろう。
イギリスの小さな街に住む義理の妹によると、彼女の娘たちの小学校では毎晩子どもと一緒に音読の練習をやることと、スペリングの宿題をやることを約束させる契約書に、親が署名しなければならないらしい。親が子どもを上手にサポートできるよう、先生たちが数学をどうやって教えているのかについて、親にコーチングするクラスまで行われているのよと、義理の妹は付け加えた。
彼女はどの家庭でもそうであるように、フルタイムで仕事をし、そのうえ娘たちを課外活動に連れていかなければならない。日常の大変なスケジュールに追い打ちをかけるように、毎晩子どもたちと座り、宿題を一緒にする時間を見つけなければならないのだ。
オックスフォードで哲学者として活躍しているロマン・クルナリック氏の話を聞いた。ちなみにクルナリック氏は、数年前に私がフリーランスで仕事をしようと決めるきっかけとなった「How to Find Fulfilling Work」(未訳:充実を感じる仕事の見つけ方、2012年)という本を書いた人だ。クルナリック氏の専門分野は「他人の気持ち・感情を理解しようとするメカニズム」だ。
「ここ最近、イギリス政府は、社交性、感情学習を学校プログラムから減らし、その代わりに子どもに読み書きや算数に力を入れて教えるという致命的な間違いを犯した」と、クルナリック氏は話してくれた。私は彼にイギリスの学校が良くなるためにはどうするべきなのか聞いた。
詰め込み教育で学力が下がったイギリス
「この問題を解決するには、子どもに他人の気持ち・感情を理解させようとする思いやりの心を教えることです。それは、子どもの感情の発育と人と関わる能力を育てるためにとても大事なことなのです。カナダで始まり、今では世界中の75万人の子どもたちが受けているとも言われる『共感教育』という学校教育プログラムは、ただ思いやりの心を教えるだけではなく、お互いに協力する姿勢が育まれ、その結果いじめが減り、一般的な学力も上がったという結果が証明されています」
最新のOECD(経済協力開発機構)の調査によれば、イギリスは伝統主義的な読み書き計算に力を入れているにもかかわらず、16~19歳の年齢の子どもの先進国世界ランキングでは、識字能力は下から34番目、計算能力に関しては最下位から2番目という結果だった。同じOECDの調査で、オランダは、フィンランドと日本に並んでトップ3に入っていた。
また『タイムズ』の報告書では、「あるレポートによると、先進国の中でも、読み書きのできないイギリスの若者の数が一番多く、数学に至っては危機的な状態である」と述べられている。オランダの新聞は、その報告書を愉快そうに「これは『不条理のジョーク』のようだ。なぜなら学校で学んでいるオランダ人の方が、英語を話すイギリス人よりもよっぽど英語のことをよくわかっているのだから」と書きたてた。
リナ・マエ・アコスタ、ミッシェル・ハッチソン著/吉見・ホフストラ・真紀子訳/日本経済新聞出版/990円(税込み)

