宿題なし、テストもほとんどなし、運動会も人と競争しない。それでもオランダ人の子どもも大人も世界的にトップクラスの学力を持つ。子どもも大人も先生もイライラしないオランダ人の子育てについて、新刊『オランダ人のシンプルですごい子育て』(リナ・マエ・アコスタ、ミッシェル・ハッチソン著/吉見・ホフストラ・真紀子訳)から一部抜粋して紹介する。

 誤解のないように説明しておくが、オランダの小学校でも年に2回、おもに読み書きと計算を重視した公式試験を子どもは受けなければいけない。でもその試験は必要悪と見なされ、あまり口に出して話されることがない。したがってこの試験結果を先生が子どもに見せることはなく、親にも成績表として配布されることはない。親は年に2回行われる先生との面談で、結果をちらっと見せてもらうだけである。

 子どもが11歳あるいは12歳になって、どの中学校に進学するかを決めるとき、初めてその試験結果が役に立つ。とはいっても、この試験に合計点数はなく、子どもの試験結果が編さんされたり、比較されたりすることも決してない。オランダではクラスの成績優秀者になることはまさに不可能なのだ。

 おもしろいことに「人と競争をしない」という態度は、学校生活において勉強以外でも見られる。先日、息子が学校で初めての運動会に参加して家に帰ってきたので、私はとくに考えもせずに、競技レースで勝ったのかどうかと聞いた。すると息子はとても困った顔をしたので、徒競走はなかったの? と聞いた。

 すると息子は、走る競技はやったけれど、遅れていた友だちを待って手を取り合って一緒にゴールしたというのだ。この運動会は明らかに勝つことを重視していないようで、実際、勝ち負けはなく、メダルもトロフィーもチーム競技もなかった。

 子どもたちはただ、グループで運動場へ行き、いくつかの競技や課題をした。そこには、走ったりジャンプしたりそのほかの陸上競技と並んで、空気圧式のバルーン滑り台や城型トランポリンや木製の9本のピンを倒すゲームのスキットルもあった。それは、ハードルにつまずくと友だちに笑われ、文字通り人生のつまずきを示すかのような運動会とはまるで違うものだった。

競争しなくても、オランダ人は子どもも大人も高い能力

 OECD(経済協力開発機構)が2015年に発行した「Howʼs Life」において、OECDメンバーの国々の幸福度を計った調査結果が掲載された。それによるとオランダの子どもは「学校での学業において一番ストレスが少ない」という結果だった。その一方で、当然ながらアイルランド・アメリカ・カナダ・イギリスなどの英語圏の子どもは一番プレッシャーを感じていた。

 「学校が好きかどうか」という項目でも、オランダの点数がとても高かった。この調査におけるあらゆる要素を組み合わせたとき、オランダの子どもが学校で感じる幸福度に関しては明らかに勝ち組だった。オランダの教育システムには職業教育の学校も含まれているため、ほとんどの子どもが19歳まで学校に在籍し、それよりも早く学校を卒業するのは一握りの子どもたちだけだ。

 興味深いことに、OECDによって読解・数学・科学において世界的に調査されるPISA(OECD生徒国際学習到達度調査)では、スペインとトルコに上位を譲ったものの、オランダがとても高い点数を取っていることが認められている。ちなみにイギリスは26位、アメリカは36位という結果だった。この結果を見ただけでも、オランダの教育システムが、幼児期に英才教育や競争をさせなくても、きちんと学力をつけることができることを証明している。

 また最近のOECD調査報告では、オランダの教育システムはかなり高い質にあると結論づけられている。この調査報告によると、「オランダ教育の成功の背景にあるのは、学校パフォーマンスの質と実践重視の教育方式を組み合わせたこと、そして、子どもの想像力を高めるための実用的な取り組みである」という。

 また16~65歳の大人部門でのPISA統計によると、計算・読み書き能力において、韓国・フィンランドに次いでオランダの点数が高いという結果が出ており、オランダでは学校を卒業した後も、教育において高いレベルを維持しているようだ。

(写真:Maresol/stock.adobe.com)
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