異動や昇進が多いこの季節、新しいチームやメンバーとの出会いが増えていませんか? 新しい環境で働くことは、新しい業務以上に慣れるのが大変です。身を置く状況に変化がある中でもメンバー、そして自分自身の最高の仕事を引き出すためにはマネジメントが必須です。Googleと世界的な決済スタートアップStripeを急成長させ、チームづくりを担った著者がその具体的なノウハウをまとめた『スケーリング・ピープル 人に寄り添い、チームを強くするマネジメント戦略』(クレア・ヒューズ・ジョンソン著、二木夢子訳、日経BP)から、「メンバーと自分に寄り添う」マネジメント術を紹介します。3回目は、「社内のプロセスを見直す方法」について。

ダメなプロセスと優れたプロセスのちがい

 プロセスは、現代のビジネス環境では避けられがちな話題になっている。人々のスピードを落とし、やる気をそぐものとして知られている。実のところ、本書の第2章を“確立と計画”という名前にしたのは“あなたのプロセス”という名前だと一部の読者が抵抗するかもしれないと考えたからだ。

 わたしは、自社がプロセス、ミーティング、チェックイン、最新情報にまみれるのを心配する創業者から、よく相談を受けている。無理もないが、多くのマネジャーはプロセスの増やしすぎに慎重だ。それに、ミーティングが多すぎると生産性の足を大きく引っ張る場合がある。

 しかし、物事の進め方の指針となってくれるプロセスを持つのは、本質的に悪ではない。ダメなプロセスは肥大化を起こすが、優れたプロセスは明確化に役立ち、業務遂行のスピードアップにつながる。

 プロセスに関する個人的な考えをいくつか共有しよう。

必要ないところに、なぜかプロセスが存在している

 明確なオーナーと意思決定者のいない環境では、わたしが防衛的プロセスまたは言い訳プロセスと呼ぶ現象が起こる。

 この手のプロセスは、何かがうまくいかなかったときに発生しがちだ。今後の再発を避けるための明確な責任者を定義する代わりに、プロセスを作成してしまう。

 Google時代に、新たな機能や製品の承認のために導入した“ビットフリップ”制度の対象者が、約3人から20人以上に膨れ上がったことがあった。最初は法務部門がレビューを要望したことから始まったが、あちこちの部門が近い将来のローンチを公式に知らせてほしいと要望して膨れ上がった。やがてプロダクトマネジャーから当然の苦情が上がり、オーナーシップとアカウンタビリティを明確にすることによって、ビットフリップ制度の対象者は片手で足りるくらいの人数に戻った。

 たとえば、プロダクトマネジャーは、ローンチの影響を受ける法務などの各部門に相談するタスクを割り当てられるようになった。相談して得られたアドバイスに基づいてローンチの準備ができているかどうかを判断するのはプロダクトマネジャーの仕事、というわけだ。慎重な検討を必要とするローンチを防衛的に阻止するのは、法務部門の責任ではなくなった。

 優れたプロセスは、意識合わせを強固にし、スピードとベストプラクティス準拠を同時に実現するような、負担の軽いチェックを導入する。これにより、最も優れたやり方をいちいち模索する必要がなくなる。一方、防衛的プロセスは、ある意思決定のオーナーが誰であるかについて合意がないために存在するプロセスで、必然的にスピードダウンにつながる。

不要になったプロセスの廃止前に考えるべきこと

 誰しも経験があるだろう。参加者が、必要な資料の締め切りを無視する。ミーティングで自分のPC を広げるようになり、業務の最新状況を報告しなくなる。結束が弱まり、「それにしても全体像はどうなっているんだ」「責任者はいるのか」といったことをそれぞれが主張し始める。

 ミーティングと同様に、プロセスも陳腐化、形骸化することがある。もともと悪いプロセスではなかったが、目的を終え、見直しの時期が来たのかもしれない。あるいは、そもそも防衛的なプロセスで、全員が守りに入ってしまうような混乱の原因がわかったため、役目を終えるべきものなのかもしれない。

 一方で、あまりに早くプロセスを変更するのも良くない。マネジャーは、十分に効果を発揮できるだけの長さがありながら、問題のあるプロセスがチームにまとわりついて生産性を落とすほど長すぎないくらいの、期間の絶妙なバランスを追い求めることになる。だいたい6カ月ごとにプロセスの見直しを実施しよう。それ以上の頻度だと運営が不安定になり、それ以下の頻度だとチームがプロセスに主体的に関わらず、手癖で処理するようになってしまう。

 人は、さまざまなプロセスで試行錯誤するのを恐れる傾向がある。プロにふさわしくない、あるいは優柔不断に映るのではないかと、心配になるからだ。でも、チームにとってどんなプロセスが一番うまくいくかは、やってみないとわからない。わたしは、システムやプロセスの試行錯誤を大いに勧めている。ただし、プロセスについて試行錯誤する場合は、次のような点に気をつけたい。
 ・お試しの期間を明記する
 ・うまくいっているかどうかをチェックするタイミングを決める
 ・プロセスを続けるか見直すかの評価条件を設定する

(写真:Song_about_summer/stock.adobe.com)
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 ミーティングは、情報の共有、議論、意思決定、チームの絆の形成など、チームをうまく運営するために必要な多くの作業を実施するための便利なツールだ。でも、チームの好みや、やり遂げようとしている業務によっては、ミーティングなしで仕事をする方法はたくさんある。

 ミーティングを見直す方法のひとつは、文書で最新情報を伝えたり、プロジェクトトラッカーに書き込んでもらったりすることで、このミーティングの目標を達成できないだろうか、と自分に問いかけることだ。優れたプロセスは、ミーティングの数を増やすのではなく、減らすべきだ。

プロセス見直しのサインがすでにでているかも

 次の黄色信号に注意しよう。オペレーティング・システム(業務運営のしくみ)やケイデンス(リズム)の見直しが必要なサインかもしれない。

 ・仕事のゴール、タイムライン、またはアカウンタビリティを負うオーナーが不明確。言い換えると、どのチームがいつ何をやっているのかを把握できていない
 ・何もかも進行が遅すぎるように思える
 ・問題の報告は上がってくるが、解決策の提案は上がってこない
 ・業務の状況について、簡単な情報が見つからない
 ・プロジェクトの意思決定者が誰で、会社やチームの優先事項が何なのかを、誰も説明できない
 ・重要な情報を出すように、あるいはミーティングに参加するように言われると、参加や出席をしなくなる人がいる
 ・どの最新情報やミーティングが重要なのか不明で、トラッカーの更新や自分が企画したミーティングへの出席すら気が進まない

 効率的なリズムで稼働するしっかりしたオペレーティング・システムは、実行に不可欠で、優れたマネジメントの土台を築く。それは、あなたの会社づくりとマネジメントの基礎となる。

会社の成長や変化の速度に合わせて、チームやメンバー、そして自分もレベルアップするにはどうしたらいいのでしょうか? 成長期のGoogleや世界的な決済スタートアップStripeの創業期に人材・チームづくりで活躍したカリスマが自身の実体験をひもときながら、具体的なノウハウを紹介します。各章にはすぐに実践できる演習・テンプレートが付いています。

クレア・ヒューズ・ジョンソン著、二木夢子訳/日経BP/2750円(税込み)