同じ指示を受けても、すぐに期待を超えるアウトプットを出せる人もいれば、手戻りや修正指示ばかりで進まなくなってしまう人もいます。その差はどこにあるのでしょうか? 実はこの差を生み出している要因はセンスや能力ではないと、ITコンサルタントの江村出氏は指摘します。どうしたら、爆速で質の高いアウトプットが出せるのか、そのコツを新刊『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)から紹介します。2回目は、指示の意図を読むためのコミュニケーションについて。
「指示通り」というゴールが難しい理由
苦労して必死でアウトプットを出したのに、
「求められているものと違うよ」
「うーん、そういうことじゃないんだけど……」
と言われたことはありませんか?
例えば、「現場のユーザのために手順をつくってほしい」と上司に言われ、1週間かけて一つひとつの作業を明らかにする細かい手順を作成したのに、本当に求められていたのは作業の流れを示すフローのようなもので、1日でできる簡単なものだった、というようなケースです。
どちらも同じ「手順」といえるものですが、アウトプットはまったく別物です。厳しい言い方になりますが、ゴールを捉え違えていればあなたの成果はゼロであり、かけた時間も労力も無駄だったと言わざるをえません。
こうした、「ゴールの捉え違いによる成果ゼロ」は、実はさほど珍しいことではありません。
私の感覚値でいえば、上司の指示に「はい、わかりました」とだけ言って作業に取りかかった場合、期待へのミート率は30%くらいです。10の作業をして、方向性が合っているのが3つ、というのは仕事としては「ほとんど外している」といっても過言ではありません。どんな熟達者でも、ただ与えられた指示だけで、質問せずに取り組めば、期待通りの成果は挙げられないものなのです。
「曖昧な指示が悪い」と思っている人が見落としているポイント
では、ゴールの捉え違いが起こってしまったのは、上司の指示が悪かったのでしょうか?
先ほどの「現場のユーザのために手順をつくってほしい」という例で考えれば、たしかに指示がザックリしていたことは事実です。しかし、すべての仕事において上司が一から十まで懇切丁寧に段取りやアウトプットのイメージまで教えてくれることはありません。
上司の指示が曖昧であるならば、自分で必要な情報を集め、状況を見て、期待値を探りながらアウトプットを出すことが求められます。そのためにも、まずは指示を受けた瞬間に上司から情報を引き出しましょう。 指示を受けたときにはすかさず、具体的に何をすればよいか、アウトプットのイメージがどのようなものかを掘り下げて聞くのです。
「どれくらいの記載レベルがいいか」
「どの範囲か」
「誰が使うのか」
「文字だけでなく画像つきがいいか」
「例外パターンも書いておくべきか」
「エクセルかワードか」……
など、気になることをガンガン聞いていきます。
あまり細かいことまで聞きすぎると「自分で考えろ」と言われるかもしれませんが、期待を外して何時間分もの作業が無駄になるよりはマシではないでしょうか。
このようなやりとりによって、期待とのミート率は70%くらいまで引き上げることができるはずです。
期待に100%ミートさせることはできるのか?
では、期待に100%ミートさせるためにはどうしたらいいでしょうか?
そのポイントは、「指示の裏」まで読み解くことです。そのときに考慮すべきは指示を出している上司ではなく、「本当に困っている人」です。
手順をつくるケースで考えると、そもそも上司の指示の背景には、現場のユーザの何かしらの困りごとがあると考えられますよね。
「新しいメンバーが増えて手順がないと教育が大変」という理由かもしれませんし、「特定の手順で社外にも影響する重大なミスが出てしまったので、次のミスを防ぎたい」ということかもしれません。
この、指示の背景となる困りごとが違えば、つくるものも変わってきます。網羅的に手順をつくるべきか、部分的な手順だけでいいのかも変わりますよね。
指示の背景、つまりおおもとにある課題への理解が、ゴールを完全に捉えきるために必要な最後のパーツなのです。
ただし、こうしたおおもとの課題といった情報は、指示者である上司でも知らないケースもあります。上司も誰かの指示を受けているということがあるからです。
もし、上司に指示の内容を掘り下げて尋ねたとしても何も出てこないと感じたら、足を動かしておおもとの課題に関わる情報を拾いにいきましょう。
指示を聞いただけでなく、「(具体的に)何をすべきか」 を明らかにし、「(背景を読み解き)何のためにすべきか」 まで深掘りする。ここまでクリアにできれば、期待を外すことはまずありません。安心して作業に取りかかりましょう。
「オウム返し」で答えの糸口をつかむ
上司から指示を受けたものの、内容をいまいち理解できず、何を質問したらいいかもわからないということもあるかと思います。この場合は 「オウム返し」をすると効果的です。要するに、相手の言葉を繰り返すのです。
私は新人の頃に、プリンシパル(執行役員)が直属の上司となって指示を受けていた時期がありました。ある日、その上司から急に言われたのが、
「DRサイトにログシッピングでデータ同期する事例を調べておいて」。
私は何を指示されているのかもさっぱりわからず、固まってしまいました。そもそもDRやログシッピングが私にとっては謎のワードでした。何について話しているのか見当もつきません。
しかし、ここで何も言わずに黙っていると、上司には理解できていると思われてしまいます。そして後日、的外れなアウトプットを出してしまい、呆(あき)れられてしまうだろうと思いました。そこで半ば苦し紛れにオウム返しで、
「……DRサイトにログシッピングで同期する……事例ですね……」
と、指示された内容をそのまま、少し自信なさそうに繰り返してみました。すると上司に、私が指示の理解に苦しんでいる様子が伝わり、
「そうそう、SQL Serverの機能を調査して、遠隔地のDRでも利用できるかを調べてくれればいいから」
と補足してくれました。ここでやっと私にもピンときて、「ログシッピングはSQL Serverというデータベースの機能としてあるもので、DRとは遠い場所にサーバがあるという意味か。ログシッピングは近距離が基本だけど、遠距離で使えるかということを調べればいいわけか」と理解することができました。
オウム返しでとにかく場をつないだことで、追加の情報をうまく引き出すことができたのです。何も聞かずにモヤモヤしたまま作業に着手する状態と比べれば、何をすればいいかが格段に明確です。これによって、手戻りなく期待にミートする確率も跳ね上がったのは言うまでもありません。
この事例では、最初の指示をさっぱり理解できなかったので、私は上司の発言をなるべくそのまま繰り返すことにしました。しかし、ある程度、指示の内容を把握できた場合には、少しアレンジして 「自分の言葉」でオウム返しをしてみましょう。
その際、あなたの理解が間違っていても問題ありません。その誤りを指摘してもらえれば、それだけで大きなプラスになるのですから。
「確認」しながら、上司から答えを引き出そう
オウム返しは相手の指示を理解するための有効な方法ですが、ときには「オウム返し」のワザを使っても指示が読み解けず、何から着手すればいいのかがさっぱりわからないというケースもあるでしょう。先ほどの例でいえば、
「DRサイトにログシッピングでデータ同期する事例を調べておいて」
と言われ、オウム返しをして、
「そうそう、SQL Serverの機能を調査して、遠隔地のDRでも利用できるかを調べてくれればいいから」
という補足を得たものの、それでも「何のことかよくわからない」という場合です。
このようなとき、多くの人はさらに質問を重ねたくなるかもしれませんが、それはあまり得策ではありません。というのも、
「DRとは何ですか?」
「ネットで調べるべきですか?」
などの質問は明らかに素人レベルだからです。
「それくらいは自分で調べてね」
と言われるのがオチでしょう。そこで使えるのが、質問はグッとこらえて「確認」するという方法です。
「DRサイトはちょっと初めて聞く用語なのですが、メインとは異なるどこかの場所にデータ保管されているということですよね?」
などと確認すると、あなたがDRについてよく知らないことを相手に知らせることができます。こうした確認を伴う質問であれば、相手も答えてくれるでしょう。
また、調べ方がわからない場合には、
「事例はネットで調べても出なさそうなので製品ベンダーに聞くべきですよね?」
などと確認すると、
「それもいいけど、〇〇さんに聞いたほうがいいよ」
と答えてくれるなどして、最良の手立てを引き出すこともできるでしょう。
ちょっと言い方を変えるだけで、相手の反応は大きく変わるものです。わからないからといって反射的に聞くのではなく、一呼吸置き、少し知恵を使って冷静に相手から情報を引き出すようにしましょう。
何かの指示を出す場合、上司はすでにある程度の答えのイメージを持っていることが多いものです。1人で悩んで悶々とするよりも、指示を受けたその場でどんどんコミュニケーションをとって、期待値を合わせていきましょう。
うまく上司を利用することができれば、あなたの仕事をより短い時間で終わらせることができるはずです。
江村出著/日経BP/1870円(税込み)


