日本人は英語が苦手とよく言われるが、なぜなのか。認知科学者の今井むつみ氏が、日本人の英作文に特徴的な「I think(アイ・シンク)の嵐」を糸口に探る。AIを活用した新しい英語学習法を提案する新刊『 アブダクション英語学習法 認知科学者がAI時代に伝えたい独学の技法 』(日経BP)から、抜粋してお届けする。連載第4回。

 「自分の考えや思っていることを英語で書く」というタイプの課題が出ると、日本人はすぐ「I think(アイ・シンク)の嵐」になります。

 これは、「思う」の産出語彙として、thinkしか持たない人が多いからです。

 日本語の「思う」に当たる英単語は多くあります。例えば、「know(ノウ)」「believe(ビリーブ)」「see(シー)」 などがそうです。

・ I know she is lying.
    彼女は噓をついていると思う
・ I believe he will succeed.
    彼は成功すると思う
・ I don’t see this plan working.
    この計画がうまくいくとは 思えない。

 knowもbelieveもseeも、誰もが知っているような基本的な英単語です。高校生ももちろん、これらの英単語は「知っている」と言うでしょう。

 しかし、「思う」の訳語として、これらの単語がすぐに出てくる人は多くありません。なぜかというと、「know=知っている」「believe=信じる」「see=見る」という、英語と日本語が一対一になった知識としてインプットされているからです。

「思う」に使えるそのほかの英単語

 knowくらい基本的な英単語ですらなかなか出てこないのですから、まして「insist(インシスト)」や「be afraid(ビー・アフレイド)」「expect(エクスペクト)」「predict( プレディクト)」などを頭に浮かべるというのは、かなりハードルが高いでしょう。

・ He insists that he is right.
    彼は自分が 正しいと 思っている。
・ I’m afraid he won’t come.
    彼は来ないと 思う
・ I expect she will be late.
    彼女は遅れると 思う
・ I predict that he will win the election.
    彼は選挙に勝つと 思う

 これらの単語やフレーズを知識として「知っている」という人は多いはずです。例えば「insist=強く主張する」「be afraid=不安に思う」「expect=予期する」「predict=予測する」というように。

 聞いたら意味はわかるし、文のなかにあれば読むことはできる。でも、「文脈によってはthinkの代わりに使える、使うべきときがある」という意識はないのです。

 一方で、すべての「思う」に「know」を使えるわけではありませんし、「think」もすべての「思う」に使えるわけでもありません。

(写真:Kana Design Image/stock.adobe.com)
(写真:Kana Design Image/stock.adobe.com)

(次回に続く)

日経ビジネス電子版 2026年4月2日付の記事を転載]

なぜ、日本人の英語は「I think」ばかり? 英語力を伸ばすのは丸暗記でなく、「推論力=アブダクション力」です。10万部突破の『英語独習法』を著した認知科学者の今井むつみ氏が、AIを活用した新しい英語学習法を提案します。英語を学びながら、仕事にも人生にも役立つ「独学の技法と奥義」を身につけ、AI活用にも熟達できる、唯一無二の学習バイブルです。

今井むつみ(著)/日経BP/1980円(税込み)