日本人は英語が苦手とよく言われるが、本当なのか。なぜなのか。認知科学者の今井むつみ氏が、AIを活用した新しい英語学習法を提案する新刊『 アブダクション英語学習法 認知科学者がAI時代に伝えたい独学の技法 』(日経BP)から、一部抜粋してお届けする。その第5回。
「思う」という日本語の訳語として使える英語はいろいろあって、例えば「know」も「思う」になる。そんなことを前回(「日本人の英語は「I think の嵐」 代替策となる意外な英単語とは?」)説明しました。
だからといって、すべての「思う」に「know」を使えるわけではありませんし、「think」もすべての「思う」に使えるわけではないのです。
日本人の英語学習の大きな問題のひとつに、「think=思う」のように、英語と日本語を一対一で対応させようとするクセがあります。「どんな文脈でも『思う』にはthinkが使える」という無意識の思いこみは、非常に根強いものがあります。
「know」と似ているようで全然違う「find out」
例えば、「知る」と訳される英語には、knowのほかに「find out(ファインド・アウト)」があります。日本語に訳せば同じ「知る」ですが、英語ではそれぞれ違った文脈で使われます。同じ「知る」でも、knowを使うべき文脈もあれば、knowを使うべきでない文脈もあり、find outがふさわしい文脈があるのです。
試しに、次の2つの文を比べて、knowとfind outの違いを考えてみてください。
- He knows it is true.
- 彼は真実を知っている。
- He found out it is true.
- 彼は真実を知った。
knowとfind outの違いは、どこにあるのでしょうか。
そうです。最初の文のknowは「知っている」という「状態(ステータス)」を指しています。それに対し、次の文の「found out(find outの過去形)」は、過去のある瞬間に「知った」という「動作(アクション)」を指します。
このように、この2つの英語は使われる状況がまったく違います。
けれど、英作文をすると、どちらもknowで表現してしまうということが、よく起こります。アクションとしての「知る(ようになる)」にknowを使うと、非常におかしな英語になります。
こういうことが起こるのは、「日本語で似たことばに訳されるなら、英語でも同じように使える」という無意識の思いこみがあるからです。日本語と英語が、ある意味、ごっちゃになっているのです。
「誤り」にも、いろいろな種類がある
高校の先生に尋ねてみると、次のような単語の意味の違いについて、よく生徒から質問を受けるそうです。いずれも「日本語で似たことばに訳されるけれど、英語で同じように使えない」ものです。
- fault/mistake
- いずれも「誤り」などと訳される
- tend to/apt to
- いずれも「〜する傾向がある」などと訳される
- preserve/conserve
- いずれも「保存する」などと訳される
- environment/circumstance
- いずれも「環境」「状況」などと訳される
ずいぶん上級のことばたちですが、大学入試を受けるには、覚えている必要があるのでしょう。みなさんは、それぞれの違いがわかるでしょうか。興味のある方はぜひ、ご自身で調べてみてください。私がお勧めしたい調べ方を、新刊『 アブダクション英語学習法 』で紹介しました。
日本人の英語には、さまざまな問題がありますが、その根幹にあるものは、高校生も大人も、中学生も共通です。

(次回に続く)
[日経ビジネス電子版 2026年4月3日付の記事を転載]
今井むつみ(著)/日経BP/1980円(税込み)
