その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は北村俊雄さんの『 東大名誉教授が教える 死なない生き方 科学でひもとくアンチエイジングと健康寿命 』です。

【はじめに】

 日本人の平均寿命は、1984年に世界一の座を獲得してから、40年以上にわたり男女ともに、おおむね世界一を維持しており、現在約85歳である。このように世界的に長命である日本人は、長生きして幸せを享受しているのだろうか? 65歳以上の人口が30%近くに達したこの超高齢社会において、高齢者が楽しく元気で充実した生活を送ることは、個々の人にとってはもちろんのこと、社会的にも重要である。

 本書を手に取ってくださった方は、歳をとっても健康に楽しく充実した生活をしたいと考えていらっしゃると思う。そんな人たちの未来への希望に少しでも役立つように、健康元気を増進する方法について、科学的根拠に基づいて述べてみたい。同時に、老化を中心とした生命科学の最新の研究成果についても、私の現在の研究テーマも含めて分かりやすく解説する。

 私は東京大学医学部を卒業後、内科・血液内科の医師として大学病院で医師として働く傍ら研究を始め、32歳の時に渡米した。8年間のカリフォルニアでの研究生活を経て帰国したのは30年近く前のことだ。帰国後も医師として働いていたが、基本的には研究中心の生活で、研究歴は40年以上となった。最初は細胞生物・分子生物学の基礎的研究が中心だったが、20年前にそれまでの基礎研究の経験を土台として、白血病などの血液疾患の研究を開始した。

 現在、私の研究テーマの中心は、高齢者に多い「クローン性造血」である。クローン性造血については3章で解説するが、一言で言えば、健康な高齢者において、白血病の遺伝子変異を1つだけ持つ血液細胞が増えることだ。そして、この白血病関連の遺伝子変異を持つ血液細胞が存在すると、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞や糖尿病など高齢者に多い生活習慣病が増え、平均余命が短くなることが注目されている。

 10年前にこの研究を始めたことにより、白血病の研究が中心だった私の研究が老化研究に少しシフトした。最近は抗加齢医学会、骨代謝学会、骨免疫学会、循環器学会など、今まで参加したことがなかった学会で講演する機会が増えた。そのおかげで、知り合いが増え、視野も広がった。他分野との交流は科学においても重要である。そんなことをしているうちに私自身も古希が近づく高齢者となったが、知力と体力が続くなら、あと20年は研究を続けたいと考えている。

 第1章では老化を防ぐ未来医療の可能性について、そして第2章では老化にまつわる意外な話を紹介する。第3章では私の最近の研究テーマを中心に老化と病気の関係について解説し、老化による病気の発症を予防する方法についても言及する。

 第4章以降に、本書のメインテーマである高齢者が元気に楽しく暮らすための健康寿命を延ばす方法についてまとめた。第4章では健康寿命100年につながる生活習慣とその習慣をつける方法、第5章では健康寿命100年に役立ちそうな食事、薬、サプリメントの紹介、第6章では知力・記憶力と睡眠の関係について述べる。健康的に元気を増進する方法だけ分かればいいという読者には、主に第4章以降を読んでいただければいい構成とした。

 本書を執筆するにあたっては、論文や公開情報・統計を参照する以外に、老化研究、脳研究、骨研究の第一人者や整形外科医、循環器内科医、腎臓内科医、精神科医と相談もした。高齢者と今後高齢を迎える人が、楽しく元気で充実した生活を送ることに少しでも役に立つことを願っている。


【目次】

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