その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は長谷川正人さんの『 世界トップ企業の決算書 グローバルブランドの強さに迫る 』です。「イントロダクション」をお届けします。

【イントロダクション】

 私は長年、野村総合研究所で経営コンサルティングに携わり、現在はビジネスパーソンから大学(院)生まで幅広く経営分析手法や財務諸表の読み方を教えています。昨今は、NISA(少額投資非課税制度)などの影響もあるのでしょうか、海外企業の業績が気になるが、言語の壁もあり、どのように情報を収集し、それを読み解けばよいのかわからないという声もよく耳にします。
 そこで、自分なりに海外企業の財務分析をわかりやすく伝える方法を模索するべく、欧米各社の財務諸表に以前にも増して、くまなく目を通すようになって改めて気づいたことがあります。
 それは「世界トップ企業」の「ケタ違いのすごさ」です。
 ここでいう「世界トップ企業」とは世界中、文字通りグローバルベースで多くのユーザーに支持され、その結果として、大きな売上高と時価総額を誇る巨大企業群のことです。
 日本でもアップル(Apple Inc.)、エヌビディア(NVIDIA Corporation)をはじめとするGAFAM/Magnificent7など代表的な米テック企業の経営動向や業績には多くの人が関心を持ち、関連ニュースは大きく報じられますが、世界トップ企業はGAFAM/ Magnificent7だけではありません。
 そこでまず本書を手に取られた読者の皆さんにお伝えしたいのは次の2点です。

1 米国にはGAFAM以外にも「すごい企業」があること
 米国ではネットフリックス(Netflix, Inc.)、P&G(The Procter & Gamble Company)、ナイキ(Nike, Inc.)、ウォルト・ディズニー(The Walt Disney Company)、マクドナルド(McDonald’s Corporation)などGAFAM/ Magnificent7以外にも「すごい企業」が多数あります。

2 欧州にも「すごい企業」がたくさんあること
 LVMH(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton SE:モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)、エルメス(Hermès International SCA)などのラグジュアリーブランドは欧州の独壇場です。他にもネスレ(NestléS.A.)、INDITEX(Industria de Diseño Textil, S.A.= ZARA:ザラ)、アディダス(adidas AG)などが挙げられます。

 本書では基本的な財務データをていねいに読み解くことで、すごい企業のすごさに迫ってみたいと考えています。そこで数ある「世界トップ企業」から18社を選びました。売上高や時価総額の大きさはもちろんですが、いずれも日本でもビジネスを展開しており、日本人にもなじみのある企業ばかりです。
 これら「世界トップ企業」18社とライバル関係にある「日本トップ企業」6社との比較分析を行っていきます。
 9つの業種で全24社を取り上げます。

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 これから第1部において業種ごとに、2社ないし3社の比較分析を行い、第2部において世界トップ企業と日本トップ企業9業種24社の比較分析から何が見えてくるのか、についてまとめていきます。
 その前にこの「イントロダクション」では、24社の全体像をまず確認していただきたいと考えています。そのため、24社にトヨタ自動車(以下、トヨタ)を含めた25社について、縦軸に売上高、横軸に時価総額をプロットした散布図グラフを作成しました。
 次の「25社の売上高×時価総額散布図グラフ」をご覧ください。時価総額と為替は2025年12月末時点、売上高はそれまでに発表された1年間通期のデータです。
 トヨタは本書では直接の比較対象ではありませんが、日本で売上高・時価総額ともに最大最強の企業であるため参考として入れています。

ケタ違いに大きい5 社と小粒な日本トップ企業

 25社のうちアップル、マイクロソフト(Microsoft Corporation)、エヌビディア、テスラ(Tesla, Inc.)、トヨタの5社以外の20社はグラフの左下に集中しています。25社の中でもこれら5社はケタ違いに存在感が大きいことを一目でご理解いただけると思います。
 しかしこのグラフでは大半の20社が左下に集中して区別が難しいため、先の5社を除いた20社について縦軸、横軸の目盛りを小さくした別の散布図「20社の売上高×時価総額散布図グラフ」も用意しました。そちらのグラフでは残る20社の相互の位置づけもわかりやすくなっています。
 このグラフでは20社中6社が日本企業ですが、ソニーグループ(以下、ソニーG)とファーストリテイリングを除く4社(花王、味の素、アシックス、ゼンショー)は依然として左下に集中しています。

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 これら2つのグラフから、世界トップ企業と日本トップ企業には売上高、時価総額どちらで見ても大きな差があることが理解できます。
 味の素や花王は日本人の日常生活に深く根差した身近な大企業であり、日本では一般に優良企業とみなされていますが、世界トップ企業であるネスレやP&Gと横並び比較をすると、ここまでの差があるのかということに気づかされます。

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世界トップ企業の経営指標を一覧に

 次の3枚の表は24社にトヨタを加えた25社の主要経営指標を業種ごとにまとめたものです。
 第1部の業種ごとの2~3社比較のパートでも、冒頭に同じ表を掲載していますが、ここでは24社+トヨタの主要経営指標の一覧で、各社の数値のおおまかな違いをご確認ください。

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ネトフリもLVMHも時価総額でトヨタを上回る

 トヨタは日本最大の売上高(48兆円)と時価総額(53兆円)を持つ企業ですが、本書で取り上げる世界トップ企業18社のうち、以下の6社は時価総額でトヨタを上回っています。
 エヌビディア、アップル、マイクロソフト、テスラ、ネットフリックス、LVMH(時価総額の多い順に記載)。
 これら6社のうち前半の米テック企業4社は、トヨタより時価総額が大きいと聞いても、まあそうだろうと受け止める人も多いと思いますが、後半の2社、つまりネットフリックスとLVMHも日本最大のトヨタを上回る時価総額があることに驚かれる読者もいるのではないでしょうか。
 これらに次ぐP&G(52兆円)は、トヨタと同規模で、ネスレ、エルメスの両社(約40兆円)はトヨタの75%程度の時価総額に相当します。

 各社の業績一覧にざっと目を通していただいたところで、次の第1部では、1~9章まで9つの業種で2ないし3社を財務分析の観点で比較します。その際に「1:規模(売上高)」「2:成長性」「3:収益性」「4:セグメント情報」「5:バランスシート」「6:キャッシュフロー」「7:時価総額」という「7つの比較項目」で分析します。
 では、世界トップ企業と日本トップ企業の違いを個別に見ていきましょう。

2026年3月 長谷川 正人

【目次】

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