その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は渡辺順子さんの 『「家飲み」で身につける 語れるワイン』 です。

【はじめに】

 2020年、新型コロナウィルスの感染拡大により人々の生活様式は大きく変化しました。ステイホームを余儀なくされた我々は、外出外食を自粛して自炊を始め、「家飲み」の機会を増やすことになりました。

 それまで、外食でソムリエにワイン選びを任せていた人も、食事と合うワインを自分で選び、ワインに合うおつまみを作り、また家飲みグッズを揃えたりと、今までと違うワインの楽しみ方をする機会が増えたと思います。

 今回、世界的に増加しているワインの家飲みブームに便乗させていただき、『「家飲み」で身につける 語れるワイン』の執筆を始めました。

 本書では、お手軽な「家飲み」ワインを中心に紹介しつつ、読者の方のワインの世界が広がるよう、その歴史や日本人にそれほど知られていないマイナーなワイン産地、話題となる超高級なワインのエピソードなど、様々な角度からワインを捉え、解説を行いました。

 本書を読みながら、家でワインを飲みながら、その時代や産地へまるでタイムスリップしたかのような深くて広いワインの世界にお連れしたいと思います。

 私ごとですが、2020年秋、まだコロナの影響を大きく受けていたニューヨークへ移住しました。

 その後、感染者数が減少した21年に、ニューヨークにて本書の執筆活動を開始しました。執筆中は気分転換を兼ねてよくメトロポリタン美術館へ訪れ、ワイン関連の芸術品を鑑賞したり、館内で執筆を行うこともありました。

 メトロポリタン美術館の古代ギリシャの「アンフォラ」(本文p32~)や中世時代の宗教とワイン関連の展示品は圧巻です。

 紀元前、すでに大量に作られていた実物のアンフォラの数々を見るたびに、大小さまざまな壺を作る技術やデザインの素晴らしさにも驚きますが、同時に古代の人々にとってワインがとても重要な役割を果たしていたことをあらためて実感しました。

 紀元前、「偶然」から生まれたワインが人々の食生活を大きく変えました。ワインは発酵により多くの栄養素を生みアルコールにより保存可能な飲料となり大変重宝されました。まさに偶然から生まれためぐみの産物です。

 ワインという飲み物は、世界史のなかで人類の生命を助け、文明や思想、そして文化形成に大きな影響を与えた重要な存在です。

 このようなワインの壮大なスケールを感じながら『「家飲み」で身につける 語れるワイン』を楽しんでいただければ幸いです。

2022年2月 渡辺順子



【目次】

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