その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は出口汪さんの『 論理思考力をきたえる「読む技術」(日経ビジネス人文庫) 』です。
【はじめに】
読書法改革のすすめ
あなたは今まで、論理力を身に付けようと思って、本を読んできたことはあるだろうか。
改めて考えてみると、人間の知的活動は、すべて論理という約束事から成り立っている。論理力を身に付ければ、論理的に話すことができるようになるし、人の話の筋道をしっかりと理解することができるようにもなる。
そして、正確な日本語を操り、論理的な文章を書くこともできるようになり、論文や企画書、レポートなどでも、その威力を発揮することができるだろう。
文章を論理的に読む力や、論理的に考え、話し、書く力などは、あなたのコミュニケーション能力をアップさせてくれるだけでなく、発想力、想像力、表現力まで飛躍的に高めてくれる。
さらには、俗に言う「地頭」をも鍛えてくれるのである。
まさに論理力は、あらゆる場面で役に立つ、生涯の強力な武器となるものなのだ。
これほど重要な論理力を、人はどうしてもっと必死になって身に付けようとしないのか?
―つには論理力が語学や数学などと異なり、非常に目に見えにくい、あるいは数値化しにくい能力であることが原因であろう。
もう―つは、それが生まれつきの頭の良さだと誤認していることから生じている。
つまり、論理力はその人の生まれつきの気質によるもので、努力をすれば多少の改善は可能だが、所詮、そんなに変わるわけはないと諦めてしまっているのである。これは大きな誤解である。
実は、論理力は誰でも身に付けられるものなのである。
では、論理力をどうやって養成するのか?
世に様々な方法が公開されている。その多くは、大学での知の成果、たとえば形式論理学などをビジネスパーソン向けに紹介したものである。
だが、それらの方法が実際どれだけ有効なのか、はなはだ疑わしい。
と言うのも、大抵は机上の論理であって、現実にそういったビジネス書を読んで、論理思考が身に付いたという例はあまり聞いたことがないからだ。
なぜなのか?
その理由は明らかで、論理思考とは日々日常的な訓練によってしか養成されないからである。1冊のビジネス書によって、急に頭が論理的になるはずがない。
たった一つ方法がある。
ロジカル・リーディング――それこそが、あなたの読書法を変えるのである。
まずは、あなたの読み方を変えること。センスや感覚ではなく、筆者の立てた筋道をしっかりと理解すること。
読書を通して、論理力を養成することこそが、本書の真の目的である。
次に、読書の習慣をものにすること。日々文章の論理構造を追っていけば、自然とあなたの頭脳も論理的になる。
こうした万能の論理力は、読書を通して獲得することが最も有効である。
なぜなら、日々の積み重ねでしか論理力をものにすることはできないからだ。
読書は日々の日常的な行為であって、誰でもそれを身近なものにすることができる。たとえば電車の中の数十分、寝る前の30分、そのわずかな時間を読書にあてる。
大切なことは、毎日本を読み、読書の習慣を身に付けることである。
もちろん、すでに読書の習慣をものにしている人たちも多くいるだろう。しかし、彼等の多くが論理思考を獲得しているとは限らない。
それはなぜか?
少なくとも、論理力を獲得するのに有効な読み方をしていないからである。
多くの情報を刹那的に獲得する読み方、作品に情感を委ねて、その時々の気分を解放する読み方、それらは間違った読み方ではないが、少なくとも論理思考を獲得するための読み方ではない。いわば、ザルで水をすくう読み方なのである。
今、私が提案したいのは、論理力を飛躍的に高め、ビジネスパーソンを成功に導くための読書法、ロジカル・リーディングなのである。
では、ロジカル・リーディングとは何か?
筆者の立てた筋道をあるがまま追うことで、論理力を身に付ける読書方法である。
論理とは物事の筋道のことである。文章の筋道をしっかりと読み取るから、あなたはそれを理解し、人に筋道を立てて説明することができるようになる。
あるいは、理解しているからこそ、それを記憶し、蓄積し、またいつでもそれを取り出して、活用できるようになる。
たとえば、あるまとまった文章をあなたが今読んだとしよう。それをその場で人にうまく説明することができるだろうか?
何となく文章を読み、ぼんやりと分かったような気がしている、そんな読み方では、人に筋道を立てて説明することなど不可能である。第一、自分の頭の中で整理できていないものが、どうして他人に理解できるだろうか?
何となくといった読み方から、文章の筋道を追っていく読み方への変換、これがロジカル・リーディングの基本であって、そのことであなたの頭の使い方は確実に変わっていくのである。
本は栄養素がいっぱい詰まった頭と心の食物である。若い時に栄養のある本を食べないと、貧相な大人にしか成長しない。生涯にわたって栄養失調にならないように注意したいものだ。
私は読書なしには生きている気がしないし、食べた本は確実に消化し、それによって数多くの講義をこなし、絶えず本を書いてきた。
本書によって、一人でも多くの人が読書の面白さ、その意義を再発見し、読書法を見直すきっかけになれば幸いである。
さらには、一人でも多くの人が本書をきっかけに論理力を獲得し、生を送れたなら、もっともっと幸いである。
出口 汪
【目次】






