その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は友村晋さんの『 わが子に教える AI時代に必要な7つの能力 』です。巻頭言と「はじめに」をお届けします。

扉は最初から開いてるのに、あなたはずっと鍵を探してるのね。
(映画『ザ・ホワイトタイガー』より)

若者が犯す最大の過ちは、高齢者の言うことに耳を傾けること
(オープンAI CEO サム・アルトマン)

丸暗記や既存のスキルを教える現代の教育は、破滅的なまでに時代遅れになる
(歴史学者 ユヴァル・ノア・ハラリ)

現在小学校に入学する子どもたちの65%が、今はまだ存在しない職業に就く
(ニューヨーク市立大学 大学院センター 教授 キャシー・デビッドソン)

日本の仕事の49%がテクノロジーで代替される
(野村総合研究所、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授、
同カール・ベネディクト・フレイ博士の共同研究)

終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた
(トヨタ自動車 会長 豊田章男)

今世紀半ばまでに人間とロボットの結婚は合法になる
(人工知能学者 デイビッド・レビー)

ガンは治せる時代に「必ず」なる
(ノーベル生理学・医学賞を受賞した坂口志文)

将来、人間が車を運転することはかなり珍しいことになる
(テスラ CEO イーロン・マスク)

 いかがですか? これらの未来を読んで、目まいがしましたか? それともワクワクしましたか? あるいは怖くなりましたか? それとも、この著者はSF映画の見すぎだ、と思いましたか?
 いえいえ、そんなことはありません。各言葉に発言者が添えられているように、これらの言葉は僕がテキトーに語っているのではなく、世界的なAI研究者やAIビジネスの最前線にいる権威ある人たちが予言していることなんです。中には既に実現していることもありますね。
 僕たちは今、人類4度目の産業革命の真っ只中にいます。しかもこの革命は、過去3度の産業革命とは違い、僕たち人間の仕事が失われていくという点で全く異質で、世界を大きく変えようとしているんです。
 そして、この来たるべき変革の時代に備えて、世界では教育の現場も大きく変わりつつあります。
 例えば世界大学ランキングで常に上位にいるイギリスのケンブリッジ大学の入試問題の一例をご覧ください。

 あなたは自分を利口だと思いますか?(法学部)
 自分の腎臓を売ってもいいのでしょうか?(医学部)
 どうしたら建築で犯罪を減らせますか?(建築学科)
 貪欲は善ですか? 悪ですか?(経済学部)
 火星人に「人間」を説明してください。(医学部)

 出所『オックスフォード&ケンブリッジ大学 世界一「考えさせられる」入試問題』(河出書房新社)

 これらの問題に共通していることが何かわかりますか? そうです。「正解」がないんです。ケンブリッジのような海外の一流大学でなく、日本の大学の入学試験でも小論文のような形で正解のない問題が問われます。生成AIが急速に発展する世の中では、「正解を知っている」「知識がある」人の価値が今より下がっていきます。その結果、これまでの日本の学校教育が行ってきた、「正解」を教える教育の価値が暴落していくと僕は予想しています。

 そのようなことを既に予想し、先回りしている海外の最先端の教育現場では、先生はもはや「先生」ではなく「ファシリテーター」になっています。
 以前うちの子が通っていたインターナショナルスクールで体育の授業を見学したときのことです。生徒たちは体育館の中央に集まり、体操服を着たまま、ノートパソコンを囲んで何やら議論していました。僕は気になって、「これはどんな体育の授業ですか?」と先生に聞きました。すると先生は「コロナ禍で運動不足になっているから、どの筋肉がなまったのか生徒に議論させ、その筋肉を鍛えるためにどんな体育の授業をしたらいいか考えて、実際にやらせているんだよ」と答えました。僕は驚いて「先生は何をするんですか?」とまた質問すると、「もちろん、ちゃんと議論して、授業を組み立てているか最後の発表を聞いてアドバイスする役目だよ」と答えました。
 そして実際に、学期末の成績表で、運動が大得意(スポーツテスト7種目ですべて1位)な長男の体育の成績が4段階評価で上から2番目だったことがありました。成績表にはすべて理由が書いてあるのですが、そこにはなんと「運動神経は良いけど、頭を使って考えている量が少ない」とはっきり書いてありました。たとえ体育の授業であっても、ここまで求められるんだと、とても驚きました。

 そして偏差値がいくつだ、どこの大学を卒業した、などという過去の学歴スペックを話題にする教育者もいませんでした。
 今あなたがこの本を手に取ったということは、あなたはきっと「これからのAI社会では、旧来の子育てのスタイルや教育観ではまずいのでは?」と思っているんだと思います。
 どうかその直感を信じてください! そして勇気を持って本書をこのまま読み進めてください。本書を読み終える頃には、今はモヤモヤしている子育て方針や教育観に、必ず一筋の光が見えてくるはずです。

【はじめに】フューチャリストが子育て本を書いた理由

 はじめまして。自己紹介が遅れました。僕は、フューチャリスト(未来予測士)というちょっと変わった肩書でユーチューバー、作家、そして企業や学校の顧問をしている友村晋(ともむらしん)といいます。本書の話をする前にまずは皆さんにお礼を言わせてください。前著『2030 未来のビジネススキル19』(日経BP)ではビジネスパーソンが将来AIに仕事を奪われないために身に付けるべき19+αのスキルを書きましたが、おかげさまで好評いただき、中国や台湾でも翻訳版が販売され、上海で初めての海外講演まで実現しました。普段僕のユーチューブを見たり、本を買ってくれたりした皆さんのおかげです。本当にありがとうございました!
 さて、本書の話に戻ります。この本はいわゆる子育て本ですが、最初に皆さんにお断りしておきたいことがあります。
 僕は子育ての専門家ではありません。そして現在、まだ12歳、9歳、5歳の3児の子育て中の父親ですから、皆さんの中には子育ての先輩も多くおられると思います。
 そんな僕が、なぜ、子育て本を書いたのでしょうか。
 僕のユーチューブ『2030年の未来予測』で「2050年 未来の子育て」というシリーズ動画を公開したところ、累計で220万回以上再生され、コメントも僕の通常の動画の4倍以上も書き込まれるという大きな反響を頂いたんですね。つまり、子どもの教育に関するコンテンツに断トツの反響があったんです。
 これらの動画は、これからの激動の社会で、恐らく学校では教わる機会がないけど、絶対に今のうちに子どもたちに教えておかないと子どもたちが大変な目に遭ってしまう!という危機感にかられて公開した動画だったんです。実際に書き込まれたコメントの多くが「もっと早く知りたかった」「この話を知っていたら、全く違う子育てをしていた」「もう子どもが成人しちゃったので、孫に生かしたい」という類いの内容でした。
 また、このような情報発信の活動を認めてもらえたのか、最近は小中高大学などの教育現場にお招きいただく機会が増えました。そこでは、子どもたちや保護者の方々、教育関係者の方々の前で講演や研修をしています。

 さらに講演にとどまらず僕の地元の広島県呉市にある星の杜(もり)広島中学校・高等学校ではAI・DX推進ディレクターという立場で教育現場に携わらせてもらっています。
 このように教育関係のお仕事をする機会も増えてきたので、このたび、最新のAI情報を加味しながら、子育てについての僕の考えを書籍にまとめることにしたんです。

◆鍵を握っているのは家庭教育

 2022年11月にChatGPTが登場して瞬く間に世界中に普及し、ビジネスの世界が大きく変わりました。特に僕自身が属しているIT業界は最も大きな変化を余儀なくされました。
 例えば、アマゾンでは3万人の解雇、マイクロソフトでは1万5000人の解雇、メタでは全社員の7%の解雇が発表されました。しかも、これらの企業は決して経営難で大量解雇を行うのではありません。むしろ業績は絶好調なくらいです。
 それでも、AIで人間の仕事を代替できるようになったから、多くの社員を雇っておく必要がなくなってきたんです。

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 驚きませんか? ビジネスの最先端を行くIT企業では、既にこんなことが現実として起こり始めているんです。
 そしてこの現象は今後、IT業界にとどまらず、あらゆる業界のあらゆる業種で起こり始めます。
 ところが、こんな大きな地殻変動が起きているのに、何も変わっていない界隈(かいわい)があるんです。それは、日本の教育現場です。
 本書の冒頭にこんなセリフを置きました。

 ─最初から扉は開いているのに、あなたはずっと鍵を探しているのね。

 これは、僕が大好きなインド映画『ザ・ホワイトタイガー』のワンシーンで語られるセリフです。
 主人公が新しい世界に飛び込む勇気を持てずに言い訳をしているときに、ある女性がこのセリフを口にするんですね。
 この状況、今の日本の教育界に当てはまると思いませんか?
 社会で大きな変革が起きているときに、教育現場も文部科学省も扉を開けて新しい教育の世界に行かなければならない、150年前に出来上がった今の教育システムを根本から変えなければならない、ということにはなんとなく気付いていると思うんですね。
 しかし世界の変革の速度が速すぎるし、今の教育現場のどこから手を付けていいのかわからなくなっているんじゃないでしょうか。それで扉を開けるのが怖くて鍵を探しているふりをしている、というのが現状ではないでしょうか。教育指導要領が約10年に1度しか改訂されないことから、それは明らかです。

 僕も3人の子どもたちを育てている親なので、子どもがものすごい速度で成長していくのを日々間近で目にしています。だから、もはや、日本の教育界がのんびりと10年かけて変わることを指をくわえて待っているわけにはいきません。
 そんな焦燥感から、「だったらどうすればいいのか?」と考え続けてきました。
 僕の出した結論は、「家庭教育しかない! 親が教えるしかない!」です。つまり、親である僕たちが、子どもたちにどんな背中を見せてあげられるのか。そしてどんな環境を用意してあげて、何をどんなふうに教えてあげられるのか。それが子どもたちの人生を大きく、そう、とてつもなく大きく左右すると思うんです。

◆AIが普及した時代を生きていくのに必要な7つの能力

 そこで本書では、学校では教わらないけれども、親が子どもに教えるべき未来の能力を7つ挙げました。
 未来でどんな社会が待っていようとも、僕がユーチューブで常に主張しているように、「好き」「得意」「社会から求められている」の3つの輪が重なったところで仕事をする人たちが増えればいいなと思っています。

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 これからAIはどんどん進化していきますが、本書の7つの能力を身に付けた大人になっていれば、そう簡単にはAIに仕事を奪われることはありません。だから、本書に書かれている能力を親であるあなたがお子さんに教えてあげられるかどうかで、お子さんの将来は大きく変わります。「大好きな理想の仕事をして、満足な収入も得られている。大人って楽しいじゃん。人生って楽しいじゃん!」となるのか、それとも「ああ、生きていくのってしんどい。生活のためにやりたくもない仕事をしている。こんな生活をこれからいったい何年続けていけばいいんだろうか。子どもの頃に戻りたい……」となるのか。その分かれ目は、親御さんの教育方針の持ち方次第なんですね。
 ちなみに、本書では生成AIを上手に使いこなすスキルが大切、ということは書いていません。それはもはや、パソコンが使えることと同じぐらい社会人として当たり前のスキルになっていくので本書でわざわざ言うことではありません。
 この本では、大切な7つの能力について、
 ①能力名
 ②能力の定義
 ③その能力がなぜこれからのAI社会で必須なのか
 ④その能力の家庭での教え方と注意点
 をそれぞれ解説していきます。この7つの能力は、できるだけ常識に凝り固まっていない子どもであるほど、身に付けやすいです。社会に出てから必須の能力であるにもかかわらず、大人になってからでは常識が邪魔をして簡単ではありません。子どもの頃だからこそ身に付けやすい能力です。

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 それぞれの能力は、子どもの成長に合わせて身に付けてほしい順番に並べています。まずはAIに依存しないための能力2つ、次にAI時代を生き抜くための能力3つ、最後に、AI社会で幸せに生きるための能力2つ、これで合計7つです。ぜひ能力1番目の「ファクト眼(がん)」から、身に付けさせてあげてください。そしてAI社会では必須の7つを挙げているので「7個のうちこの3つだけ!」などと思わず、すべて習得できるよう家庭で教育してほしいです。
 また、各章の終わりにあるコラムでは能力とは別に、世の中の教育に関する動向について解説していますので、こちらもぜひお読みください。

 さらに前作同様に、本書を購入していただいた方への特典として、シークレット動画を用意しました! 巻末の黒いページの袋とじをはさみで開封して、中にあるQRコードからご覧くださいね。
 ちなみに今回のシークレット動画では、子どもの成績が爆上がりするマル秘テクニックを紹介しています。本書では子どものたちの将来のために学校の勉強とは切り離された能力を紹介していますが、そうはいっても目の前の成績もおろそかにはできませんよね。やっぱり取れるならテストで高得点を取った方がいいに決まっているし、受験でも成功させてあげたいですからね。
 ところで本書では、海外の例として主にアメリカでの例を多用しています。これは、僕自身がアメリカで暮らした経験があることが影響しているからです。
 ですから、決してなんでもかんでもアメリカが正しいとかアメリカに学べばいいと思っているわけではないんです。

 何より、様々な国で取材した経験から、やっぱり日本が一番住みやすいし日本の文化や伝統、技術は世界中に誇れるものだと僕は確信しています。
 だからこそ、この国を停滞させないためにも、子どもたちに明るい未来を築いてほしいからこそ、アメリカでもなんでも、いいと思うところだけ学んでしまおうと思っているんです。
 あ、「はじめに」が随分と長くなってしまいました。僕はユーチューブでもいつも話しすぎるところがあるので、それが本の執筆にも影響を与えてしまっているようです。
 それでは最初の能力「ファクト眼」からいってみましょう!


【目次】

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