その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は佐野創太さんの『 70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法 』です。
【はじめに】
頑張ることに違和感を覚えたとき、何が起こっているのか?
私の1日は朝6時に始まります。
自分で起きるよりも、5歳の息子に起こされることのほうが増えてきました。
やっとのことで布団から起き上がると、息子はエンジン全開で部屋の中なのにサッカーボールを壁にぶつけたりして遊んでいます。
そんな状態を落ち着かせつつ(落ち着かないことがほとんどですが)、絵本を読み聞かせしながら一緒に朝食を食べます。といっても、読み聞かせしながらなので、私は子どもが食べ終わって着替えをしている10分の間に流し込みます。その後、登園するまでの40分ほどで一緒にお勉強や運動遊びをします。
このように、慌ただしく1日が動き出します。
10年前、27歳のときは、こんな朝を過ごす自分が1ミリも想像できませんでした。
新卒で飛び込んだ人材サービス業界では、朝から晩まで働き、仕事に全力を注ぐ、いわゆる「マッチョな働き方」が生活の中心でした。
朝礼、会議、訪問、資料作成、数字の管理、飲み会、納会での出し物練習……など、やることは無限にありました。
大変だったけれど、毎日仕事だけに集中できる、今思うとぜいたくな日々でした。
しかし28歳のある日、母に介護が必要になり、正社員として働けなくなって、母のケアに専念することになりました。
そのときのこれまで感じたことのない感情は、今でも鮮明に覚えています。
「お金どうすんの?」という恐怖。
「今頑張らないと社会から見捨てられる」という不安。
「頑張って立てていた計画が真っ白になる」という徒労感。
「働き盛りの今、頑張れない自分は終わりなのか」という焦り。
そんなモヤモヤが何度も頭をよぎりました。
そして、母の介護中心の毎日に慣れ、独立して仕事もぼちぼちと再開したころ、ふと仕事一色だったときの自分を思い出して、「自分は弱くなってしまった」と感じました。
でも、それから、結婚や子どもの誕生を経験して気づいたのは、私が失ったのは、能力ややる気ではなく、「常に100%であるべき」を前提にした働き方だということ。
同時に、「100%で走り続ける設計の働き方は、家族・健康・自分……といった守りたいものとは両立しにくい」とも思い至りました。
問題は自分自身ではなく、働き方の設計。働き方の設計さえ工夫すれば、「仕事と生活、どっちをとるか!」という2択で悩まずに済む。
そこで、仕事も生活も充実させるために「続けられる設計の働き方」を考え、それに「70%で働く」という名前をつけました。
1500人以上のキャリア相談を担当してわかったこと
私の抱えていた悩みは、決して自分だけのものではありませんでした。
これまで、1500人以上のキャリアや転職の相談を担当してきて、多くの方が同じような迷いや悩みを抱えていることを実感しました。
「人生で大事にしたいことも増えてきた。でも、仕事も大切にしたい」
「この働き方を、この先も続けていけるだろうか」
「仕事中心の生活を送っていたら、趣味や好きだったことが思い出せなくなった」
「将来を明るく考えられない」
「若いころと同じようには働けない」
どれも、まじめに働いてきた人ほど抱えやすい悩みです。
そして、仕事中心の生活を送ってきた人ほど、こう思うことに罪悪感を抱いたり、「自分が弱くなったのでは」と感じたりしてしまうかもしれません。
また印象的だったのは、誰も「怠けたい」とは言っていないことです。
本音は、「もっとラクをしたい」「やめたい」でもなく、「このままの働き方で、続きますかね?」に集約されていました。
これに気づいたとき、多くの人が無理なく、そして楽しく働き続けるために、「70%で働く」という考え方を求めていると思いました。
今の働き方や頑張り方に違和感を抱いたときは、自分に合った働き方を探し始めたサインです。
これまで疑わなかった「全力前提」に、心が小さくブレーキをかけている。
その違和感は、立ち止まりではなく、調整の始まりです。
仕事を大切にしながら、心身や大切なものも消耗させない。
「70%で働く」は、そのバランスを取り戻すための具体的な方法です。
また、手を抜くことでも、あきらめることでもありません。
いざというときのために、100%にギアを上げる余力は残しておく。
でも普段は、無理なく、自分のリズムで働いている。
その結果、「今日の感じなら、明日も行けそうだ」と感じられる。
この「続けられる感覚」を意識的につくることです。
それは、単にマイナスをゼロに戻すことではありません。
「今日も楽しかったな」と思える日が、静かに積み重なっていく感覚です。
3年後や5年後の未来は、正直わからない。
年末に来年はどうなっているかさえ見通せないこともあります。
でも、昨日も今日も悪くなかった。
今週末にも、楽しみな予定がある。
そんな日々が、無理なく続いていく。
これが「70%で働く」というスタイルであり、働き方の技術です。
働き方は、100か0かの2択ではない
現代の働き方は、「常に全力」であることを前提に設計されています。
業務は増え続け、成果はより厳しく問われる。
評価基準も絶えず更新されます。
分業化も進み、自分の役割が会社の中でどのような意味を持つのか見えにくくなり、成果を上げても、すぐに次の目標が提示される……。
そうした状況で、「もっと頑張らねば」という意識が積み上がりやすくなっています。
また、無意識のうちに「前提」とする仕事の価値観も、働き方に影響しています。
「部下」「部署」「戦略」など、日常的に使う言葉の多くは、もともと軍事用語を起源としていて、「戦う」「勝ち抜く」という発想が自然と前提になっています。
そのため、私たちは強さを求める方向へ引き寄せられやすく、成果を出し続けることや強くあることが当然とされがちです。
こうした構造では、あっという間に自分を見失い、集団のルールに飲み込まれます。
だからこそ、一度立ち止まり、「今の働き方は自分に合っているか?」と問い直すことが大切なのです。
「強い働き方を続ける」か「その働き方から完全に降りる」か、この2択だけではなく、「自分のリズムで、長く続ける」という選択肢はないのか。
本書では、こんな疑問や違和感を「70%で働く」という方法で解決していきます。
がむしゃらな働き方を見直し、自分らしさと自分のペースを大切にしながら働き続けるための考え方や具体策をお伝えします。
本書は、「70%で働く方法」を、3つのテーマに沿って整理しています。
第1章の「『もっと頑張らなきゃ』と焦っているのは、自分だけかもしれない」は、マインド編です。
まず自分の働き方の現状チェックから始めます。ここで「70%で働くってこういうことか」とイメージが湧きます。
「もっと頑張らなきゃ」と焦るような気持ちや不安がほぐれ、「やってみよう」という、私たちが持つ前向きな力を思い出せます。
第2章の「私は、会社に合わせすぎているのかもしれない」は、実践編です。
ここでは、「優先順位を見直す」「(働き方の)主導権を取り戻す」「自分時間を取り戻す」をテーマに、70%で働くために必要な思考や習慣をお伝えします。
仕事の量やペースに振り回されず、自分のリズムで効率よく働くコツが身につきます。
第3章の「疲れがとれないのは、悩みすぎて消耗しているからかもしれない」では、70%の働き方が途切れないようになる思考法をお伝えします。
具体的には、悩みすぎて心身を消耗しないための考え方や、感情や習慣を整える方法を解説します。
悩みが整理され、気持ちをいつでも切り替えられる。そんな自分が続きます。
「頑張る」と「頑張らされている」は違います。
「働いている」と「働かされている」も違います。
自分から「頑張り」、前向きに「働いている」。この働き方が「長く続けられる働き方」です。「70%で働く」をキーワードに、頑張り方と働き方を一緒に再設計していきましょう。
「退職学®(resignology)」の研究家 佐野創太(さのそうた)
【目次】









