その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はパトリック・ボー(著)、藤村奈緒美、神奈川夏子(訳)の『 マジカル博物館ツアー 不思議で珍しい、世界の個性派ミュージアム100 』です。

【はじめに】

 博物館は私のお気に入りの場所だと言ってよい。初めて訪れる街では、到着すると真っ先に、どんな博物館があるか探す。その中のどこかで、すばらしいもの、興味を引かれるもの、珍しいものに出会えるかもしれないからだ。

 もちろん、私だって世間並みに、立派な展示室や目もくらむようなコレクションを誇る大規模な博物館は好きだ。だが、それよりもずっと好きなのは、ガイドブックで必見スポットとして紹介されることはあまりなさそうな、ちょっと変わった博物館なのだ。

 たとえば、バルセロナの「霊柩馬車博物館」(p64)やウィーンの「地球儀博物館」(p96)のように、思いもよらなかったコレクションを収めたニッチな博物館。ロンドンの「ビクター・ウィンド珍品博物館」(p116)や、イタリアのアレッツォにある「テアトルム・ムンディ」(p10)のように、熱心な個人コレクターが収集したものを展示する「驚異の部屋」の現代版。さらに、ザグレブの「失恋博物館」(p114)やギリシャのカリテアにある「触れる博物館」(p138)など、意外なコンセプトの博物館や美術館。

 そのような博物館だけを扱った本があってもいいはずだ。ルーブル美術館でも大英博物館でもなく、鳥取市の「砂の美術館」(p66)やブダペストの「ピンボール博物館」(p126)が掲載されている本。イタリアのポッサーニョにある「アントニオ・カノーバ彫塑館」(p164)やニューヨークの「モルガン・ライブラリー&ミュージアム」(p24)のような、建物がすばらしいのにあまり知られていない博物館や美術館を紹介する本。今ご覧いただいているこの本は、まさにそのような1冊だ。

 だが、読者の方々が「博物館疲労」になってしまうのは避けたい。博物館疲労とは、1つの展覧会で同じような展示品を何百点も見たせいで精神的に消耗した状態になることだ。そこで本書では、カテゴリーによる分類よりも驚きを優先した。そのため、おもちゃのコレクションで楽しい気持ちになってから、ページをめくるとメキシコの恐ろしいミイラが目に飛び込んでくる、ということもあるかもしれない。

 なぜなら、博物館は世界の姿をなぞったものであり、その美しさ、珍しさ、そしてときには設立した人のひねくれた面も含めて、世界のすべてを映し出しているからだ。本書ではそんな豊かさを捉えようと努めた。それではチケットをご用意ください。ガイドツアーの始まりです!

*主に15~18世紀のヨーロッパでつくられた、王侯貴族や学者が収集した珍しい雑多な品々を陳列した部屋

【目次】

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