その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は臼田正彦さんの『 成長株・バリュー株投資のきほん(日経文庫) 』です。

【はじめに】

 本書を手に取っていただいたということは、個別株投資にご興味がおありかと思います。ひょっとすると、既にインデックス型投信の積み立てなどは経験済みで、それだけでは物足りなくなった状況かもしれません。
 実際、個別株投資は正しく行えば、インデックス積み立てよりも大きな利益を期待できる投資法です。購入後に株価が何倍にも値上がりするケースは珍しくなく、「テンバガー(10倍になる株)」という言葉もあります。その上、投資しているうちにビジネスや経済の仕組みに詳しくなれるという副産物もあるため、資産運用の中でも非常に意義があると個人的に考えています。
 一方で、インデックス投資と比べれば危険があるのも事実です。株価が何倍にもなる可能性がある一方で、何分の1以下に値下がりしてしまうリスクも存在します。買うべき銘柄(株式投資では1社のことを「1銘柄」と呼ぶ習慣があります)の選び方を正しく知らずに、例えばSNSの「この銘柄は絶対成長する!」という書き込みだけを参考に安易に手を出すのは禁物です。

 本書はマネー誌『日経マネー』(日経BP、毎月21日頃発売)の取材を通じて積み重ねてきた、個別株投資、その中でも「銘柄選び」についての知見をまとめたものです。
 「成長株」と「割安株(バリュー株)」をテーマに選んだ理由は、この2つを理解すれば個別株への長期投資の王道的な知識がほぼ網羅できることと、この2つはセットで学んでこそ身につくからです。「成長株と割安株は同じ」だとする序章の部分を読んでいただければ、その意図はご理解いただけるかと思います。

 おおむね投資を始めたばかりの人でも読めるレベル感を重視しましたが、ただ株式投資の基本用語を解説するだけでなく、できる限り実践的内容を心掛けました。
 投資する個別株を選ぶというのは、常に「総合判断」です。何か一つの基準を取り上げて、「この基準で見て○○なら、その株は買い!」と単純に言えるものではありません。分かりやすさだけを重視して単純化したノウハウを提示するのは、読者の大事なお金を左右する投資の解説本としては害悪でもあります。
 結果として本書は、「パラパラとめくってみて、どこでも好きなページから始める」という読み方には向かない本になっているかもしれません。どのページの内容もそれ単体ではノウハウとして不十分で、他のページの内容と合わせて総合判断することで最大限に生きます。文中では「(○ページも参照)」という誘導を多用して、別のページの知識とのリンクを示しています(書き手としては、ゲラ確認の手間が増す行為なのですが……)。できれば、序章から通読していただいた方が、筆者が意図したノウハウの全体像が分かると思います。

 実践的な内容を目指したため、そのために必要なら専門的な内容も扱いました。しかし内容が高度であっても、専門用語を説明なしで使うことは極力避けてあるので、通読いただければ初心者でも理解できる内容かと思います。数式も、単純な四則演算以上のものは使っていません。例えば第3章では、投資のプロも使う理論株価の求め方「DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法」を、数式をほぼ全く使わずに解説することに挑んでいます。
 既に株式投資の経験がある人にとっても、知識同士をリンクさせて腑に落ちるための助けになるものが書けたと思っています。ぜひお手に取っていただけると幸いです。

【目次】

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