その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は別所栄吾さんの『 「5秒でわかる、30秒で引き込む」伝え方の新技術 「情報の非対称性」で話す・書く・見せるが変わる! 』です。
【はじめに】
私は、誰かの説明を聞いてわかりやすいと感じたことがほとんどありません。多くの人は、結論や要約から説明してくれません。また、内容がしっかりしているなら聞き手は理解してくれるはずだと考えたり、聞き手に専門的な知識がないから理解できないのだと思い込んだりする傾向があります。そこで本書では、短時間で正確に情報を伝えるための技術を紹介します。
わかりやすく説明するためには、情報の非対称性を意識する必要があります。聞き手と自分が持っている情報の違いを認識することで、その隔たりを明確に把握できます。そして、その隔たりを効果的に埋めるには、結論から話して、必要最小限の情報で要点を伝えることが最適です。ここで簡単な演習を通して情報の非対称性への理解を深めていただきます。
演習:市役所までの道案内
現在、あなたと聞き手は地図の左下にある駅前にいると仮定します。聞き手から「市役所へ行くには、どうすればよいですか」と尋ねられた場面を想定してください。地図を見ながら説明の内容を考えてください。
[演習]
聞き手 市役所へ行くには、どのようにすればよいですか?
あなた 地図を見ながら、心の中でその道順を説明してみてください。
[解説]
うまく説明できましたか。おそらく、ほとんどの人が結論から伝えることはできていなかったはずです。さらに、不要な情報も説明していたり、わかりにくい目印を使って説明したりしていた可能性もあります。
[悪い例]
『市役所は、まずこの道をまっすぐ進んで川を渡ってください。途中に映画館やスーパーがあります。そのまま進むと、4つめの信号の角に消防署があります。その交差点を右に曲がってください。花屋を過ぎ、さらに進むと、法務局がある交差点の先に、そば屋やクリーニング店が並んでいる通りに出ます。その突き当たりを左に曲がると、その先の右側に市役所が見えます』
多くの人は、結論から述べずに、目印となる建物や施設をこれから見える順に説明して道案内をしたのではありませんか? しかし、このとき目印が多いほど、かえって聞き手を混乱させてしまいます。これは情報の非対称性に起因する典型的な誤った説明方法です。自分だけが持っている情報に知らぬ間に振り回されて、知っている情報をすべて順に説明する方が聞き手にとって好ましいと誤解しているのです。
[妥当解]
『市役所は、突き当たりを2回曲がれば着きます(結論)。最初の突き当たりは右。同じくらい歩くとまた突き当たるので2回目は左。左に曲がると、市役所は目の前です。』
本書は、情報の非対称性をキーワードに据えて、効率的に自分の考えを伝えるための理論とテクニックを学びます。情報の非対称性とは、話し手と聞き手の間に存在する知識、経験、前提情報のズレを指します。例えば、ある専門分野に詳しい人が、その分野の内容を初心者に説明する場面では、何が共有されていて何が共有されていないのかが明確でない状態が生じます。
このギャップを抱えたまま説明を始めると、聞き手は「何を言っているのかわからない」と感じます。話し手は「これくらい当然わかるはずだ」と思い込んでしまいます。
本書ではさらに、AIに任せきれない理由も明らかにします。そのうえで、AIを使いこなすためのノウハウを説明します。本書を活用して、AIの弱みを補い、わかりやすい説明ができる付加価値人材になってください。
別所栄吾
【目次】



